尼崎はダブルスコアでの大勝となったが,沖縄は惜敗。
残念なことだ。
前回につづき「平和か経済か」ではなく「平和も経済も」が,県民の主要な選択基準となった。
とはいえ,世論調査にあるように,仲井真氏当選は県民による新基地移設受け入れの意思表示ではない。
他方,糸数氏落選には,基地に依存しない経済再建策の充実と政策の浸透に時間が不足したといえるのだろうか。
捲土重来を期待したい。
「仲井真氏が初当選 糸数氏に3万7318票差」(琉球新聞,11月20日)
「任期満了に伴う第十回県知事選挙は19日投票が行われ、即日開票の結果、無所属・新人の前県商工会議所連合会会長・仲井真弘多氏(67)=自民、公明推薦=が34万7303票を獲得、無所属・新人の前参院議員・糸数慶子氏(59)=社民、社大、共産、民主、自由連合、国民新党、新党日本推薦、そうぞう支持=に3万7318票の差をつけて初当選した。「稲嶺県政継承」をうたい、経済振興に重点を置いた訴えが功を奏した。仲井真氏は米軍普天間飛行場の移設措置協議会に参加する意向を示しており、同飛行場移設をめぐる政府との調整が今後の焦点となる。
復帰後、保革両陣営がほぼ交互に知事を出してきた中、保守勢力が2人続けて知事を輩出するのは初めて。
仲井真氏は経済界や自民、公明の組織力をフルに発揮し、大票田の那覇市など無党派・浮動票の多い都市部の集票に成功。郡部を含む県全域でも満遍なく得票し、事実上の一騎打ちを展開した糸数氏を下した。
糸数氏は基地問題を抱える本島中部などで強みを見せたが、選挙戦の出遅れや人選のしこりが響き、保守陣営が先に票を固めた都市部で票を伸ばせなかった。
選挙戦で仲井真氏は「失業率を全国平均並みにする」と公約。返還跡地への大規模国家プロジェクト導入や沖縄振興特別措置法の延長などをうたい、「産業を大発展させ、その経済力で福祉や教育なども充実させる」と訴えた。県内の完全失業率が全国平均の倍近い7―8%で推移する中、経済発展を前面に据えた訴えが浸透した。
糸数氏は「新基地建設は許さない」と普天間飛行場の国外移設を唱え、観光を軸にした経済振興や医療・福祉の充実を訴えたが、主張を浸透させきれなかった。
投票率は64・54%と過去最低だった前回の57・22%は上回ったものの、同じ一騎打ちだった8年前よりは12ポイント下回った。
同知事選には琉球独立党・新人の会社代表・屋良朝助氏(54)も立候補した。」
「社説=沖縄知事選 基地負担軽減の弾みに」(信濃毎日新聞,11月20日)
「基地の島、沖縄が背負う重荷をまざまざと示す県知事選挙だった。事実上の一騎打ちは、自民、公明両党が推す新人の仲井真弘多氏が野党推薦の新人、糸数慶子氏を辛うじて制した。
公約の第一に経済・雇用対策を掲げた仲井真氏を、県民は選んだ。沖縄は失業率が高いまま推移し、9月も7・8%と全国平均の2倍近い。低迷する地場経済の改善に期待をこめたと受け取れる。
といって基地問題が軽視されたわけではない。最大の争点は沖縄中部の米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設だった。在日米軍再編をめぐる柱の一つである。
日米両政府は既に、北部のキャンプ・シュワブ(名護市)沿岸部への移設で合意済みだ。2本の滑走路をV字形に造る案を提示した。これに対しては両氏とも反対である。そのことが争点としての位置づけを、ややぼかしたのは否めない。
半面、普天間飛行場をどうすべきか、の方針では明白な違いがあった。糸数氏は即時閉鎖・返還を求め、国外に移設すべきだと主張した。仲井真氏は県外移設がベストとしながらも、「県内移設もやむを得ない」と柔軟姿勢を打ち出した。
この違いが有権者の選択にどう影響したか、は測りにくい。ただ共同通信社の事前の世論調査では、日米政府の移設案に反対が58・4%と、賛成の20・3%を大きく上回った。それを考えると、選挙結果が賛成の意思表示とは到底いえない。
在日米軍再編の行方を左右する、といわれた選挙である。与党推薦候補が勝利したことで、安倍政権は一息ついた格好だ。
しかし、地元の頭越しの合意にはもともと批判が強い。かねて願ってきた基地負担の軽減も、経済振興も、どちらも実現を-というのが今回の民意と考えるべきだ。
それだけに新知事の前途は険しい。キャンプ・シュワブ沿岸部への普天間移設案にどう臨むか、難しい判断になる。世論と政府の板挟みになることは容易に想像される。
駐留する海兵隊のグアム移転やほかの基地返還ともからむ問題だ。米側はこうした負担軽減策を普天間の移設とセットにしている。新たな基地建設の受け入れを迫られるとすれば、大変なジレンマだ。
県民の合意をどう導きだすか、それに沿って政府、米側とどう渡り合うか。新知事の双肩にかかる。
1972年の本土復帰から34年になるのに、基地問題はいまだに解決できていない。県民と協力して負担軽減を着実に進める責任を、日本政府も負っている。」
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