訪米を前に,安倍首相があわてて「慰安婦」問題での謝罪のポーズをとっている。
とはいえ,「慰安婦として存在しなければならなかった状況について,われわれは責任がある」という,あいかわらずのもってまわった曖昧さ。
「狭義の強制性」発言についても,撤回された様子はない。
ニューズ・ウィークからは「心の底から保守派」「修正主義者」と呼ばれ,「国内の保守派の支持基盤と外交的スタンスとの矛盾」も指摘されているようだが,その「外交的スタンス」には当然拉致問題がふくまれるだろう。
他国の拉致には腹を立て,自国の拉致には頰かむり。そんなご都合主義は通りませんよ,ということである。
過去の訪米を,安倍氏が「参勤交代」と表現したのは,日米関係の実態を表して面白い。
慰安婦問題で「責任」明言 首相、訪米控え米誌に 世論沈静化狙う(北海道新聞,4月21日)
安倍晋三首相は二十六日からの訪米を前に米ウォール・ストリート・ジャーナル紙とニューズウィーク誌のインタビューに答え、従軍慰安婦問題について「当時の慰安婦の方々に心から同情するし、日本の首相として大変申し訳ない」とあらためて謝罪した。その上で「歴史に常に謙虚でなければならない。慰安婦として存在しなければならなかった状況について、われわれは責任があると考えている」と述べ、同問題では初めて日本側の「責任」に言及した。
慰安婦をめぐっては、米下院が日本政府への謝罪要求決議を審議中。首相はこれまで、慰安婦問題を謝罪した一九九三年の河野洋平官房長官談話を政権として継承する考えを表明する一方、三月初めに国会答弁などで、仲介業者などが慰安婦になるよう強制した「広義」の強制性は認めつつも、軍が直接に連行した「狭義」の強制性については「証明されていない」と主張し、米国内で反発を招いていた。
今回の発言は、旧日本軍の関与については依然あいまいにしたものの、「責任」に言及したことで、訪米を前に米国世論の沈静化を狙ったものと思われる。
また、首相は、「日米同盟はかけがえのない同盟である。訪米を機にさらに信頼関係を深め、さらに揺るぎないもの、より幅広く奥深いものにしていきたい」と述べ、二十七日のブッシュ大統領との日米首脳会談で一層の同盟強化を確認する考えを示した。
北朝鮮が、六カ国協議で合意した核放棄に向けた初期段階措置を履行しないことについて「もし北朝鮮が約束を実行しないのであればどうするか、日米でよく話をしなければならないし、大統領とも今後の北朝鮮政策について突っ込んだ話をしたい」と述べ、核、拉致問題などでの日米連携について活発に意見交換する意向を示した。
“歴史問題が弱点に” 米誌紙 安倍首相訪米前に論評(しんぶん赤旗,4月23日)
【ワシントン=山崎伸治】二十六日からの安倍晋三首相の初訪米を前に、米誌『ニューズウィーク』電子版は二十一日、安倍氏が「従軍慰安婦」問題など歴史認識をめぐって、国内の保守派の支持基盤と外交的スタンスとの矛盾に直面していると報じました。
同誌は、安倍氏が「心の底から保守派」で「(歴史)修正主義者」であるため、「歴史問題では多くの前任者よりも弱点を抱えている」と分析。「民主主義の価値」を標ぼうする外交を追求すればするほど、日本の過去の歴史が問われることになると指摘しています。
同誌電子版は、十七日に実施した安倍氏のインタビューの抜粋も紹介しています。
経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルは二十一・二十二日付で、安倍氏にインタビューしたメアリー・キッセル論説委員の署名記事を掲載。「(首相官邸)広報部は明らかに今回のインタビューを心配していた」が、背景には「従軍慰安婦」問題があったと指摘。外務省が一週間にわたり毎日電話をよこし、「六点だけでよいから」と質問を事前に用意させようとし、接待攻勢までかけるなど、神経をとがらせていたことを紹介しています。
参院選は憲法改正など争点、内閣改造は考えず=安倍首相(世界日報,4月23日)
【東京 23日 ロイター】 安倍晋三首相は23日午後、官邸内で内閣記者会のインタビューに応じ、7月に予定されている参院選の争点について改革加速や新成長戦略、憲法改正などを国民に訴えていく考えを示すとともに、参院選前の内閣改造は考えていないと語った。
福島、沖縄の両選挙区で22日に投開票が行われた参院補選は、与野党が1勝1敗となった。この点について安倍首相は「福島は残念な結果となった。沖縄は、私も2度選挙区入りし、必勝体制で臨んだ。勝ったことはよかった」と感想を語った。
両補選は、もともと野党系議員の知事選出馬に伴うものだっただけに「参院の議席構成上は前進」と評価しながらも「敗因・勝因をそれぞれ分析し、次の選挙に備えなければならない」と7月の参院選に向けて気を引き締めた。
参院選の争点について安倍首相は「美しい国づくりとその方向性。改革の加速、力強く成長していく新成長戦略、安心できる社会保障制度の構築、再チャレンジ可能な社会について国民に求める選挙にしたい」と述べるとともに、「憲法改正は政治的なエネルギーが必要。エネルギーを持ち続けるためにも国民に私の考えを訴えていきたい」と強調した。
参院選の勝敗ラインに関しては「基本的に全ての選挙区での勝利をめざす」と具体的な目標議席数への言及を避け、参院選前の内閣改造については「全く考えていない」と否定した。
26、27日の訪米に際しては、ブッシュ大統領との会談で「同盟関係はかけがえのないもの。より深く、広い同盟にしていきたい、との話をしたい」と述べた。
首脳会談では、対北朝鮮政策についても協議を行うが、安倍首相は「拉致問題解決のための日米連携の必要性について話したい」とし、米による北朝鮮のテロ支援国家の指定解除について「解除にあたっては、拉致問題について、十分に配慮してもらいたいと当然申し上げる」と語った。
また、訪米時期が遅いとの指摘があることについては「日米同盟関係は成熟してきている。かつての参勤交代のような、新しい政権ができて、すぐに訪米するという時代ではない」と強調。
17日の米メディアとのインタビューにおいて、従軍慰安婦問題での日本の責任に言及したことに関しては「責任という言葉は、河野(洋平官房長官)談話(当時)の中にもある。歴代の総理が元慰安婦の方々に出した手紙の中にも書かれている。私も同じ立場ということだ」と述べた。
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