憲法施行60周年記念式では,河野洋平衆院議長が平和憲法の意義を強調。
これに正面から対立する形で,安倍首相が国際社会への積極的(武力)貢献を強調することとなった。
その武力貢献をすすめるために,憲法「改正」とともに,現行憲法の枠内での「集団的自衛権」解釈の見直しがすすめらている。
そのために4つの具体的事例についての研究を行う有識者会議の設置は,すでにアーミテージ氏に報告されている。
公明党は,解釈見直しには注文があるようだが,なんと,現行解釈の中で,4つ事例は合法だとの立場である。
この党の内心では,すでに集団的自衛権をめぐる解釈改憲は,終了しているということである。
憲法観の違いにじみ出る 憲法60年式典で首相と議長(朝日新聞,4月25日)
衆参両院主催の「日本国憲法施行60周年記念式」が25日、東京・永田町の憲政記念館で開かれた。安倍首相と河野洋平衆院議長らがあいさつしたが、それぞれの憲法観の違いがにじみ出た。
冒頭、あいさつした河野議長は「この憲法の下で、わが国の部隊が海外において一人たりとも他国の国民の生命を奪うことはなかった。この平和の歩みは誇ってよい実績であると考える」と指摘。改憲については「幅広い視野に立ち、謙虚に歴史に学ぶ心を持ち、国家と国民の将来に責任感を持って行われることを切に望む」と語った。
一方、首相は国際社会への積極的貢献の必要性を強調。そのうえで「憲法を頂点とした行政システム、教育、経済、雇用、国と地方との関係などの基本的枠組みを時代の変化に対応させるため、改革が求められている。憲法のあり方についての議論が、国民とともに積極的に行われることを切に願う」と述べ、改憲意欲をにじませた。
集団的自衛権 4類型を検討 解釈見直し派ずらり(東京新聞,4月26日)
政府は二十五日、憲法解釈上禁じられている集団的自衛権行使の事例研究を進める有識者懇談会の設置を発表した。五月十八日に初会合を開き、今秋までに報告書をまとめる。安倍晋三首相は日米同盟強化のために、解釈見直しによって行使容認に道を開きたい考えだ。
「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」が正式名称の懇談会のメンバーは、柳井俊二前駐米大使、佐藤謙元防衛事務次官ら計十三人で、座長は柳井氏が務める。
懇談会は(1)米国を狙った第三国の弾道ミサイルを、ミサイル防衛システム(MD)で迎撃(2)公海上で自衛艦と並走中の米艦船が攻撃された場合の反撃(3)多国籍軍への後方支援(4)国連平和維持活動(PKO)で、任務遂行への妨害を排除するための武器使用-の四類型に限定して、それぞれ検討を進める。
安倍首相は懇談会設置に先立ち、内閣法制局などと水面下で協議を重ね、安全保障環境の変化に伴い、新解釈づくりに向けて議論を進めることで政府の意思統一を図った。首相は二十五日、アーミテージ元米国務副長官と首相官邸で会い、懇談会の設置を伝えたうえで「日本の安全を守り、世界の平和と安全のために日本が貢献するため、集団的自衛権の行使も含めて憲法との関係を議論していく」と述べた。
『結論ありき』の人選
政府が設置した集団的自衛権行使に関する有識者懇談会には、「国際法上、集団的自衛権は持っていても、憲法上、行使はできない」とする政府見解に批判的で、憲法解釈見直しを主張する論客が顔をそろえた。有識者のお墨付きを得た上で、限定的な行使容認に踏み切りたい安倍首相の意向を反映した「結論ありき」の方針が浮き彫りになった。
有識者十三人は、首相に近い外務省OBや防衛省OB、両省と関係の深い外交・安全保障の専門家らで固められた。
岡崎久彦元駐タイ大使は首相の外交ブレーン。首相との対談集を出版したこともあり、その中で政府見解について「単に役人が言っただけだから、首相が『行使できる』と国会答弁すればいい」と主張している。
行使に向けては、憲法改正すべきだとの論調も根強いが、佐瀬昌盛防衛大学校名誉教授は国会に参考人招致された際、現在の解釈を「欠陥」と断定。「解釈を是正せずに改憲で行使を明記すると、欠陥解釈が現行憲法下の解釈として正しかったことになる」と論じた。
財界から選ばれた葛西敬之JR東海会長も、首相と私的な勉強会を持つ。改憲には時間がかかるため、集団的自衛権行使をうたった法律を議員立法で成立させれば、結果的に政府解釈の変更は不要になるとの立場だ。坂元一哉大阪大大学院教授は「日本の領域、公海とその上空」の限定的な範囲で行使できる法制を求めている。
塩崎恭久官房長官は記者会見で「結論ありきではない。大いに議論してもらいたい」と強調したが、首相の意に沿った報告書がまとまるのは間違いない。 (政治部・岩田仲弘)
<メモ> 集団的自衛権 同盟国など自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず実力をもって阻止する権利。国連憲章51条は、自国への侵害を排除する個別的自衛権とともに主権国の「固有の権利」と規定している。日本政府は個別的自衛権の行使は認めているが、憲法9条が戦争放棄、戦力不保持を明記しているため、集団的自衛権行使は「わが国を防衛するための必要最小限度の範囲を超える」と解釈し、行使できないとしている。
集団的自衛権研究4類型、現行憲法内で大筋可能と公明党(読売新聞,4月25日)
公明党の北側幹事長は25日午前、国会内で記者会見し、政府が進める集団的自衛権に関する個別事例研究について、「相当程度、個別的自衛権の範囲内で解決できる問題が多いのではないか」と述べた。
米国に向けて発射されたミサイルをミサイル防衛(MD)システムで迎撃するなど、研究対象となる四つの類型について、現行の政府の憲法解釈の範囲内で大筋可能との考えを示したものだ。
公明党幹部が4類型の合憲性に言及したのは初めて。
ただ、北側氏は「従来の政府解釈そのものを見直しという趣旨であれば、慎重でなければならない」とも述べ、政府解釈を変更して集団的自衛権行使を容認することには慎重な姿勢を示した。
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