日本政府は東京裁判の結果を受け入れ,それによって戦後,国際社会への復帰を果たしたわけだが,その裁判に「慰安婦」連行の「強制」を示すたくさんの調書が提出されていた。
林博文氏による確認である。
これによって,安倍首相等はまた一つ追い詰められたことになるが,ここから「だから東京裁判そのものがまちがっている」という反撃は,どこまで強くなりうるものか。
もちろん,政府がそれを主張すれば,国際社会での孤立はそれより先がないほどに決定的となり,アメリカ政府による許容の範囲も大きく越えるものとなる。
3月1日の安倍発言に対する盧武鉉大統領自身の批判は,意外なことに初めてらしい。
堪忍袋の緒が切れたということか。
慰安婦強制示す調書、東京裁判に各国検察提出(朝日新聞,4月15日)
日本軍慰安婦問題をめぐり、東京裁判に提出された各国検察団の証拠資料の中から、占領支配したアジアの女性が日本軍に強制的に慰安婦にされたことを示す尋問調書などを、林博史・関東学院大教授(現代史)が確認した。17日に日本外国特派員協会で会見して公表する。裁判で証拠として採用されたもので、東大社会科学研究所図書館に所蔵されている。
東京裁判には、日本軍によるアジア各地での住民・捕虜殺害など具体的な残虐行為を立証するために膨大な証拠資料が提出された。今回、林教授が確認したのは、オランダやフランス、中国など各国の検察団が提出した調書や陳述書など。
インドネシアで、ジャワ島やモア島、カリマンタン(ボルネオ島)で女性たちが強制的に慰安婦にされたことを示す証拠資料が提出されたことが判明したほか、アジア各地で同様のケースがあった。これまで、国立国会図書館所蔵の東京裁判関係資料から尋問調書の一部が確認されていた。
オランダが提出した、ボルネオ島で海軍の情報機関にいた男性軍属に対する46年3月13日付の尋問調書。日本人と親しくしていた地元女性が日本軍に拘束され、警備隊長に平手打ちをされ、裸で立たされる状況に触れて、取調官が追及する。
彼女たちを拘束した理由について、男性軍属はこう答えた。「抑留したのは彼らを淫売(いんばい)屋に入れることができるための口実を設けるために警備隊長の命令でなされたのであります」
46年5月16日付の尋問調書では、ジャワ島の民間抑留者の収容所にいたオランダ人女性が強制的に慰安婦にされたことを証言している。
44年1月28日、インドネシア人警察官が彼女を含め計7人の女性や少女を日本軍捕虜収容所事務所に連れていき、日本人に引き渡した。さらに車で小さな収容所に運ばれた。同年2月3日に医師による健康診断を受けた際、日本人向けの「娼楼(しょうろう)(brothel)」で働かされることを知ったという。
「労働日には娼楼は日本将校のために、日曜日午後は日本下士官のために開かれ、日曜日の午前は兵卒等のために保留された。時々一般の日本人が来た。私は常に拒絶したが無駄だった」
フランスが提出したベトナム人女性の口述書の抜粋には「日本人はフランス兵と一緒に生活していた私の同国人数人に、光安に設けた慰安所(brothel)へ一緒へ行くよう強制しました」とある。
中国の「軍事委員会行政院」が46年5月27日付で作成した資料は日本軍の桂林での残虐行為に言及、「四方より女工を招致し、麗澤門外に連れ行き脅迫して、妓女(ぎじょ)として獣の如(ごと)き軍隊の淫楽(いんらく)に供した」と記す。東京裁判の判決も桂林の残虐行為に触れた中で、「工場を設立するという口実で、かれら(日本軍)は女工を募集した。こうして募集された婦女子に、日本軍隊のために醜業を強制した」と認定している。
一連の資料について林教授は「これらは各国が作成した公文書であり、判決でも強制したことが事実認定されている。サンフランシスコ平和条約で戦犯裁判を受諾した日本には、これらの文書の意味は無視できないだろう」と話している。
韓国の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領は15日、政府系機関刊行物への寄稿で安倍首相らによる「慰安婦問題」での発言について触れ、「米国など国際社会が批判を提起したのは、日本のそうした動きが人類の普遍的価値を否定するものだからだ」と指摘し、不快感を示した。
大統領は、慰安婦問題とともに靖国神社参拝や歴史教科書、竹島(韓国名・独島)領有権問題も取り上げ、「侵略の歴史を正当化するもので、沈黙してばかりではいられない」と批判した。
さらに「これまでの反省すら覆す発言は、わが国民の気持ちだけを傷つけるものではない」とも述べ、米議会で進められている慰安婦問題に対する決議案採決の動きに暗に理解を示した。
慰安婦問題で日本批判=「未来を暗くする」-韓国大統領(時事通信,4月15日)
【ソウル15日時事】韓国の通信社・聯合ニュースは15日、盧武鉉大統領が同国の英字論文誌グローバル・アジアへの特別寄稿文で、従軍慰安婦問題について「日本指導層の一部が最近、これまでの反省を覆す発言を行い、わが国の国民をいたたまれなくさせている」と批判したと報じた。
韓国政府は安倍晋三首相の「狭義の強制性はなかった」との発言を批判してきたが、盧大統領自身がこの問題で見解を示したのは初めて。
大統領は「米国など国際社会が批判するのは、日本の動きが人類の普遍的価値を否定し、未来を暗くするからだ」とし、韓国以外の国でも安倍首相発言への反発が広がっていると指摘した。
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