榊原英資・吉越哲雄『榊原英資 インド巨大市場を読みとく』(東洋経済新報社、2005年)を読み終える。
91年の「新経済政策」を転機とした、インドの急速な経済成長が、IT産業を軸に、さらにインフラ整備の公共事業、医療・製薬・自動車産業、IT活用のサービス産業と、広い視野でとらえられている。
だが、それ以上におもしろかったのは、インドや中国の台頭をとらえる大局的な世界構造変化のとらえ方。
中国・インド・中東こそが長く世界史の経済繁栄の中心にあり、日本とヨーロッパ(特にイギリス)は両極の周辺として位置づけられた。
そして周辺であるがゆえに、比較的純粋な一国的発展の歴史をたどることが可能であった。とりわけ「鎖国」の日本はそうである。
周辺のイギリスから産業革命が起こるが、それはインドからの木綿輸入を大きな刺激としたものである。
そうして鍛えられたイギリス等が、逆に「東洋」への植民地支配を広げ、それが日本の資本主義への転化を促す重要な外的条件となった。
植民地支配の時代を終え、今日、再び、世界構造の中心に、中国・インド・中東が自らを位置づけようとしつつある。それは「リオリエント」の時代であると。
急変するインドとその周辺各国との関係の現状をさらに具体的に知るとともに、こうした大局的な世界的視野での歴史理解も、あわせて深めていきたいものである。
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