兵庫県が、財政赤字に対応する「行財政構造改革」素案をつくっている。
11年で職員3割削減など、行政サービスの解体に結びつきかねない素案である。
「三位一体」改革による地方交付税の削減など、国の政治のひどさはあるものの、むしろ兵庫県は、「構造改革」の先取りを自慢してきた経過をもつ。
雇用や税収の増加にむすびつかない企業誘致に莫大な補助金をつけるなど、先に削るべき部分は他にあるのではないか。
県内の上場企業には、過去最高益を記録している企業もあるという。それらの企業の税率はいったいどうなっている。
県歳入と歳出の構造全体を、まずは県民にわかりやすく示すべき。
新しい行革計画の素案を固めた兵庫県。歳出に対して歳入が足りない「収支不足」が毎年一千億円以上という異常な財政構造からの転換に向け、「聖域なき見直し」(井戸敏三知事)に着手した。県はこれまで財政状態を「良くはないが、悪すぎることもない」と説明していた。しかし、加速度的に悪化する事態。議会や庁内には「なぜここまで急速に悪くなったのか」と悲壮感すら漂っている。
「財団の基金いただけませんか」
財団法人「ひょうご震災記念21世紀研究機構」の理事長を務める貝原俊民前知事に、井戸知事が相談を持ちかけたのは今年一月だった。
貝原前知事は「ご自由にどうぞ」と応じたという。
県が外郭団体の基金にまで手を付けなければならない背景には、将来の借金返済に備える「県債管理基金」の積み立て不足があった。
「償還時期まで積んでおくだけなら、活用したほうがいいと判断した」。全国で公共事業が削減される中、県は震災復興を中心に建設事業への投資を進めたため、県債管理基金を取り崩した、と県幹部は説明する。積み立てておくべき額の一割しかなく、財政指標として昨年七月に新たに導入された実質公債費比率は、都道府県中ワースト3の19・6%を記録した。
対策は昨年秋に始まっていた。県には特定の課題に対応する基金が計千五十六億円あり、県債管理基金へ移し替える作業を進めた。
井戸知事はさらに外郭団体の基金までも対象にする“奥の手”に踏み込んだ。総務省でさえ「本当にできるのか」と首をかしげるアイデア。貝原前知事とのやり取りは、井戸知事の危機感の表れでもあった。
二〇〇七年度の予算案で、外郭団体の十三基金四百七十三億円も積み替えた。だが、県債管理基金の積み立て不足は五割しか埋まらなかった。
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千二百二十億円-。〇七年度予算編成で判明した巨額の収支不足に、財政課は頭を抱えた。「穴を埋めなければ予算は組めない」。苦心して積み替えた県債管理基金から、過去最大の五百億円を取り崩さざるを得なかった。
一月十三日から始まった予算案の知事査定。「いつもは『それ、やろう』と言う知事が『削れないのか』となった」と打ち明ける県幹部。「これは大変だと気付いた」と振り返る。
このころ井戸知事は「予算を削るのが仕事の財政課は、いつも『厳しい』と言う。だがもっと早く『本当に厳しい』と言ってくれないと判断が遅れるじゃないか」と漏らしていた。自他共に「財政のプロ」を任ずる知事の危機感は、じわじわと庁内に広がっていった。
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三月、県会で井戸知事は、現在の行革計画終了後も、新たな計画が必要と表明。一八年度までに、実質公債費比率を、自由に起債ができる18%未満にする方針を示した。
計画達成に必要となった前提条件は、試算をしていた財政担当者自身を驚かせた。「定員を毎年二百人、行政経費と投資的経費を毎年3%ずつカット」。十年後には職員数二千人と事業経費が四割近く削減される。今回の行革計画の大枠が固まった瞬間だった。
試算結果を公表した三月の記者会見。実現性を問われた担当者は「きつい行革になる。努力するしかない」と繰り返すばかりだった。(畑野士朗)
収益で過去最高続出 県内企業9月中間決算(神戸新聞、11月7日)
来週、発表のピークを迎える兵庫県内上場企業の二〇〇七年九月中間決算は景気拡大や海外需要で過去最高益が相次いだ三月期決算の勢いを、多くが維持するもようだ。六日までに発表した十五社からも中間ベースで最高の売上高や利益をマークする企業が続出。一方で、原油など資材価格の急騰に加え、景気の拡大ペースが鈍ったとの見方もあり、〇八年三月期予想は判断が分かれそうだ。
これまでに発表を終えた企業では、神戸製鋼所が売上高が中間決算で初の一兆円台に。川崎重工業は売上高、利益とも中間ベースで過去最高。大阪チタニウムテクノロジーズ(尼崎市)も主力のチタン素材が伸び大幅増益となった。
今後発表を控える企業では、造船需要が寄与した神戸発動機(明石市)などが業績予想を上方修正。一方、食品や原油関連の原材料高から純損益を黒字から赤字に修正した企業もある。
原材料高は下期も続き、製品の値上げを決める企業が相次いでいる。さらに原油が値上がりするとの見方もあり、価格改定をどこまで織り込むかが〇八年三月期予想ポイントの一つになりそう。
みなと銀行系シンクタンク、ひょうご経済研究所(神戸市)は「原材料高に加え、半導体や液晶の価格競争の激化で減収となる企業もある。海外事業を展開する企業は下期以降、低所得者向け住宅ローン(サブプライム)問題に揺れる米国経済や為替市場の動向も焦点になる」としている。
発表のピークは十五日で、神栄や山陽電気鉄道など十六社。(内田尚典)
県病院事業の赤字急増 累積724億円に(神戸新聞、11月8日)
兵庫県の病院事業会計が二〇〇六年度決算で六十四億円の損失を計上し、累積赤字が七百二十四億円に上ることが七日までに、分かった。五年前に百億円以上あった内部留保は十一億円まで減り、〇七年度末にも底をつく可能性が高い。一般会計からの繰入金増も期待できず、県の新行革プランの素案で病院事業の効率化が求められる中、赤字体質からの転換を迫られている。(畑野士朗)
県は県立尼崎、こども病院など十病院と災害医療センターなど二医療センターを経営。〇六年度決算では、診療報酬などの収益六百八十四億円に対し、医師の給与など経費が八百十七億円となり、医業での損失は前年度十七億円増の百三十三億円になった。
医業損失を一般会計からの繰入金などで補った結果、単年度の損失は六十四億円。前年度比で十四億円増え、累積額は七百二十四億円に達した。ただし建物などの資産が九百三十二億円あるため、民間でいう「債務超過」は免れているという。
赤字悪化の主な原因は、〇六年四月の診療報酬マイナス改定に加え、医師不足で診療する患者数が制限されたこと。一部の病院工事で、患者の受け入れが縮小したことも影響した。
一般会計からの繰入金は、病院などの建設投資などを含めて〇六年度で前年度比二十九億円増の百五十五億円に上った。また、〇二年度には百億円を超えていた内部留保は、〇六年度末で十一億円まで取り崩された。
〇七年度予算では、九億円を取り崩して二億円を残す予定だが、一般会計からの繰入金は百三十九億円に減っている。県病院局は「繰入金の増額は期待できない」とし、内部留保が底をつくことが確実視されている。
新行革プランの素案は事務職員三割削減などの経営改革を迫っており、県病院局は数値目標を含め、新しい経営の合理化策をつくる方針。
兵庫県、行政職3割減──08─18年度行革素案(日経新聞、11月6日)
兵庫県は5日、2008―18年度の11年間にわたる「行財政構造改革」素案を発表した。期間中、知事部局を中心に行政・事務職の職員を現在より3割削減するほか、出先機関である県民局の統廃合などを通じて行政コストの大幅削減をめざす。県は行革を実施しない場合、年平均1000億円超の収支不足が生じると試算。建設事業など投資的経費の大幅削減や住民負担増などにも踏み込む。ただ、行政サービス低下を招きかねない内容だけに、大きな論議を呼びそうだ。
職員削減は、知事部局の行政職員を現在の約8200人から3割に当たる2700人をカットし、5500人体制にするほか、教育委員会、警察、病院局などの事務職員(教員、警官などを除く)も3割削減する。削減数は計3400人超の見込み。退職者の不補充や業務の外部委託などで対応する。
県は「団塊の世代の大量退職があり、無理な削減ではない。サービス水準は保つ」と説明する。
知事給与も現行の10%減額から20%減額に削減幅を拡大。副知事ら特別職の給与も減額し、一般職員の給与も地域手当を見直す。全国トップクラスの初任給も引き下げる。
兵庫県が新行革プラン、11年間で職員3割減など(読売新聞、11月6日)
阪神大震災の復興事業などで3兆円超の県債残高(借金)を抱える兵庫県は5日、新たな行財政改革プランの素案を発表した。国の三位一体改革による地方交付税削減を受け、1999年度に策定した10年間の行革プランを見直した。2008年度からの11年間で、職員の3割減などで歳出を総額1兆2920億円減らす一方、徴税強化などで歳入増を図り、1兆6800億円の効果を見込む。今後、県議会の意見などを参考に、来年9月をめどに新プランを正式決定し、条例化する方針。
旧プランでは、99年度~08年度の収支不足総額を約1兆円と予想していたが、不況や交付税減で、新たに2550億円不足することが判明。自治体の財政規模に対する借金返済の割合を示す「実質公債費比率」は今年度19・6%に達し、北海道に次ぐ全国ワースト2位に転落した。
素案では、一般行政職員を約2700人削減するほか、井戸敏三知事の給料カット率を10%から20%に引き上げるなど職員給与の見直しなどで歳出を削減。投資事業は、15年度まで毎年段階的に減らして総額6160億円を圧縮し、01年に10か所に増やした出先機関の県民局も5県民局・1県民センターに再編する。
歳入は、徴税強化や未利用の県有地の売却などで改善を図り、文化復興のシンボルとして05年にオープンした県立芸術文化センター(西宮市)にある三つのホールの命名権(ネーミングライツ)も売却する。県は「15年度までに、単年度の収支不足を解消したい」としている。
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