原油高騰を生み出した投機資金の暴走、あるいは投機を野放しにする資本主義が、安心して暮らすことのできる社会との対立を鮮明にしている。
問題の解決をもとめる国々が、経済大国にも途上国にもあるが、日本の政府は投機主体の利益を守る姿勢をとっているとのこと。
まったくため息の出る政治である。
主張 市場大混乱 暴走する投機マネーの規制を(しんぶん赤旗、1月6日)
二〇〇八年は、ニューヨークの原油先物市場が史上最高値を記録し、その影響もあって株価が急落するなど市場の大混乱で幕を開けました。
原油市場は五年間で三倍以上に高騰する異常過熱が続いています。背景には需給逼迫(ひっぱく)への懸念など構造的なエネルギー問題や、イラク侵略の泥沼化で中東産油国の情勢がかつてなく不安定になっていることなど、複雑な事情がからんでいます。
とりわけ重大なのは、原油市場の複雑な背景に付け込んで巨額の投機資金が流れ込み、価格を大幅につり上げていることです。
背を向ける日本政府
アメリカの低所得層向け住宅ローン(サブプライムローン)の破たんが、先進国の金融市場を揺るがせています。このローンをもとにした金融商品が「最先端」の証券に仕立て上げられ、欧米や日本などの金融機関に拡散していたからです。
金融市場からあふれ出した投機資金は、原油市場だけでなく穀物市場にも流入し、食料品にまで値上げの波が押し寄せて生活を直撃しています。巨額の投機資金が食料とエネルギーという人間の生存基盤さえ左右するような社会は、まともな社会ではありません。投機マネーの暴走を抑えることは、くらしを守り、経済を安定させるための国際的な緊急課題となっています。
ところが日本政府は、投機規制を求める国際世論の広がりに背を向けています。昨年六月のドイツ・ハイリゲンダムサミット(主要国首脳会議)でも、ドイツの提起で投機規制が議題に上りました。事前の財務相会合で、ドイツは投機資金を運用するヘッジファンド(国際投機集団)の資産や取引履歴の開示強化などの直接的な規制を求めましたが、日本が米英とともに反対し、実現しなかった経緯があります。
ドイツのミュンテフェリング前副首相は、投機ファンドを「イナゴのように企業を襲い、食い尽くして去っていく」と厳しく批判し、監視・規制を要求しています。ドイツ労働総同盟は、せめて投機ファンドへの税制優遇をやめ、上場企業並みに会計を公表させるよう求めています。
フランスでもロカール元首相らが欧州レベルで投機ファンドへの規制を強化するよう訴えています。
昨年十月、ワシントンで開かれた途上国二十四カ国グループの閣僚会合は、サブプライム問題の途上国への影響は限定的だと指摘し、IMF(国際通貨基金)に先進国経済を監視するよう迫りました。
投機資金の規制が国際的な大問題になっているにもかかわらず、自民党政治はアメリカに追随し、国際世論に対する逆流となっています。国内では、「経済活性化」の名目で投機マネーを呼び込み、カジノ経済に拍車をかけています。
一刻も放置できない
アメリカや日本政府が規制に抵抗しているのは、大手金融機関の収入の大きな部分をヘッジファンドビジネスが占めているからです。
福田内閣は投機規制の強化に反対する理由として、投機ファンドが参加することで成り立つ取引もあるなどと市場への「資金供給機能」をあげています。しかし、ヘッジファンド資金は一九九九年から五倍に拡大し、一・六兆ドルとも一・八兆ドル(約二百兆円)ともいわれる巨大な規模に膨張しています。原油市場や穀物市場での暴走は限度を大きく超え、一刻も放置することはできません。
日本政府の姿勢を根本的に転換するよう求めます。
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