角山栄『シンデレラの時計』(平凡社ライブラリー、2003年)を読み終える。
1992年発行のものが新書の形につくりかえられた、経済史家の著作である。
副題は「マイペースのすすめ」。
機械時計とは何であり、どのように発展したものかが、ヨーロッパと日本の対比、両者のかかわりのもとに読みやすく描かれていく。
シンデレラが魔法使いと約束した時間、ガリバーが小人たちを驚かせた懐中時計の話など。
1日を24時間に区切った定時法にもとづくヨーロッパの時計を、江戸時代の日本社会は、昼を6つ、夜を6つに区切った不定時法にもとづく和時計につくりかえていく。
それぞれの時間意識、文明の相違とともに、双方の技術力の高さが見えて面白い。
人間の生活を支え、生活をつくりかえていくモノの歴史をつうじて人間社会の変化を語る「生活史」という分野にあたる。
時間活用の「マイペース」については、この本も語る労働時間をめぐる歴史の上に位置づけて欲しかった。
「時は金なり」という資本主義的な時間(社会)管理を、さらに歴史の上で相対化する視角が必要だということなのだろう。
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