「改革なくして成長なし」と叫びつづけた小泉首相。
「再チャレンジ内閣」を最初からかかげずにおれなかった安倍首相。
参院選の大敗後、もはや「構造改革」より「手直し」を強調せずにおれなくなった福田首相。
「貧困と格差」の推進に対する批判は、着実な深まりを見せている。
その批判が、政治とともに財界へ、直接の本丸におよびつつあるところに、いまの局面の面白さがあるのかも知れない。
キヤノン 派遣解消へ 世論の批判に手直し 製造現場1万2000人 期間工・請負に(しんぶん赤旗、3月21日)
キヤノンは、製造現場で子会社を含めて一万二千人に及ぶ労働者派遣契約を年内に見直し、半数の六千人を期間工として直接雇用し、残りを業務請負に置き換える方針です。
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同社によると、増産などに対応するために一時的な派遣契約はありうるとしながらも、現在契約している一万二千人の派遣契約は今年中に見直すとしています。このうち、最長二年十一カ月の期間工としてキヤノンが六千人を直接雇用。六千人以外は、業務請負に切り替えます。期間工として直接雇用した労働者の中から、試験を経て正社員に採用するとしています。正社員は今年中に千人増やす計画です。
同社は、これまで労働コストを削減するために派遣・請負を多く受け入れるとの方針をとってきました。また、同社会長の御手洗冨士夫氏が会長を務める日本経団連は、規制改革要望として労働者派遣期間(三年)や直接雇用の申し入れ義務の撤廃など全面自由化を政府に求めていました。(別項)
派遣契約を見直すとしたキヤノンの今回の措置は、労働者の告発や日本共産党の国会追及など社会的な批判の高まりに追い詰められ、従来の方針の手直しを迫られたといえます。経団連会長企業が、派遣労働の拡大から転換せざるをえなかったことは、財界の規制緩和路線の破たんを示すものです。
しかし、キヤノンが派遣から切り替えるとしている期間工は「解雇つきの雇用」といわれているもの。業務請負への置き換えも新たな偽装請負を招かないかと懸念されており、直接常用雇用こそ求められています。
抜本的法改正を
派遣労働者は、不安定・低賃金で、そのうえ使い捨てのような扱いをうけています。「働く貧困」の温床となっており、労働者派遣法を抜本改正して、規制すべきだとの世論・運動が高まっています。
この問題を国会でとりあげた日本共産党の志位和夫委員長の質問(二月八日)は、インターネットなどで大きな反響をよび、世論と行政を動かしています。志位委員長は、滋賀県の長浜キヤノンである製造ライン全体が派遣労働者で占められていたことを指摘、「『常用代替にしてはならない』との原則に反している」「派遣工場ではないか」と追及。福田首相が実態調査を約束し、二月末に滋賀労働局職業安定部が長浜キヤノンに調査に入りました。
長浜キヤノンの地元、長浜市議会では、自民党の野村俊明市議が志位質問に賛同するとして、非正規雇用の問題点を指摘し、是正を求める動きに発展しています。(「赤旗」日曜版二十三日号で詳報)
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キヤノン・財界のこれまでの言い分
▼「外部要員の活用は…労働コストの面からも非常に有益であり…派遣労働者・請負労働者の活用の機会は今後さらに増してくる」 (同社の「外部要員適正管理の手引き」。06年2月作成)
▼日本経団連の規制改革要望は▽派遣禁止業務の解禁▽雇用申込義務の廃止▽派遣期間制限の撤廃―など派遣労働の全面自由化を要求。(07年6月29日)
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