ASEAN+3が、チェンマイ・イニシアチブの拡充をすすめている。
直接のきっかけは、サブプライムローン問題に象徴される投機マネーの跳梁に対する警戒心のようだが、より重要なのは、それが東アジア経済安定への共同利害を土台にもった行動だということである。
通貨融通800億ドルで合意・ASEANプラス3財務相会合(日経新聞、5月5日)
【マドリード=御調昌邦】日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日にスペインのマドリードで開いた財務相会合で、通貨危機の際に複数の国の間で外貨を融通しあう「通貨スワップ協定」を800億ドル(8兆円強)以上とすることで合意した。2国間で外貨を融通し合う今の仕組みを改めるとともに、融通する資金の規模を現在の実質580億ドルから大幅に拡大する。
資金の融通枠の8割を日中韓が拠出し、残りをASEANが出すことを決定。資金供給の発動条件や経済情勢などの相互監視(サーベイランス)の仕組みも議論した。(05日 02:24)
アジア金融安定化に向け前進 ASEANプラス3(産経新聞、5月5日)
東南アジア諸国連合と日中韓(ASEANプラス3)の財務相会合が4日午後(日本時間同日深夜)、スペインのマドリードで開かれ、域内での金融危機再発を防ぐため、各国が外貨準備から拠出する資金総額を実質800億ドル(約8兆4000億円)に拡大することで合意した。投機マネーの拡大で世界経済は不安定性を増しており、今回の合意をきっかけにアジアの金融安定化に向けた連携がさらに一歩前進した。
会合では「チェンマイ・イニシアチブ」(CMI)と呼ばれる外貨融通協定の強化が議論の柱となった。CMIはタイやインドネシアなどがヘッジファンドに通貨の投機売りを浴びせられ、通貨が大暴落した1997年のアジア通貨危機の反省から構築されたセーフティーネット(安全網)。現在の実質580億ドルの拠出額が拡大されたほか、資金の分担割合を日中韓の3国が8割、ASEANが2割を分担することでも一致、共同声明に盛り込まれた。
ただ、機動的な支援体制を整えるには融資条件などまだ細部の詰めが残されている。
米国の低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題をきっかけとした信用不安や原油など商品相場の高騰に象徴されるように、投資マネーは世界経済の大きな撹乱(かくらん)要因になっている。アジアの経済安定化に向け、日本に求められる役割は大きい。
共同議長を務めた額賀福志郎財務相は会合後の会見で「新たな発展の土台を作り上げることができた」と強調。中韓との間では、先進7カ国(G7)の通貨当局などで構成する金融安定化フォーラム(FSF)のアジア版を目指した「マクロ経済・金融安定化ワークショップ」を創設を提案。今秋に初会合を開くことで合意を取り付けるなど、一定の主導力を発揮した。
経済環境が変化する中、日本が思惑の異なるアジア諸国をまとめ上げるのは至難の業だ。米欧と比肩する経済圏に成長させられるかどうか、日本のリーダーシップが試される。
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