経済同友会は、いつものように、より踏み込んだ見解を率直に示している。
まずは、「財政健全化の道筋を示すことなく、子育て・教育、年金・医療などの歳出拡大を図ることには、大きな不安を抱かざるを得ない」とする民主政権への牽制である。
財界は、「財政健全化」については、消費税増税をふくむ税・財政・福祉の一体的改革を求めてきたのだから、その線から、民主も外れるなよ、ということである。
とりわけ、消費税増税を4年間先延ばしするという民主の政策には、強い批判意識があるのだろう。「歳入改革」「税制の一体改革」という言葉が繰り返される。
もうひとつ、自民党大敗の要因に「説明不足のまま構造改革路線の変更を重ねたことなどに対する国民からの厳しい批判」をあげるあたりは、なんとも図々しい。
世界同時不況への転落以後も、財界は「不退転の決意」での「構造改革の推進」を求めてきたが(今年度の経団連総会決議など)、ここでもその方向は変わっていない。
これは、自民・公明政治の転換をもとめた国民の意志をあからさまに軽視し、敵視するものと言っていい。政治の主人公はオレだ、ということである。
ただし、強弁だけではやはり不安が残るらしい。二大政党制の実現に向けた「自民党の再生」が期待されている。
そうして2つの政党に、カネ(献金)をてこにして、「財界いいなり」を競わせることこそ、財界による政治支配を一層深める最短の道だというわけである。
だが、国民は従来型自民・公明政治への拒絶の意志を明確にしている。これまでと同じ形の財界いいなり政治の継承は、もはや誰にとっても不可能である。
長く献金を受け取っている民主にしても、従来型政治からの一定の転換なしに、国民の支持を長く得つづけることは、すでにできない。
そこで、この一定の転換を、景気回復、国民生活改善の方向へどこまで拡張してゆくことができるのか、そこが、今後の政治改革に問われることとなっていく。
傲慢を隠さない財界へのしっぺ返しの入口は、労働者派遣法の改正、後期高齢者医療制度や障害者自立支援法の応益負担の撤廃など、すでに民主にも一定の合意がある、財界の求めに反した諸政策の実現である。
そうした改革の一歩一歩が、政治改革への国民の自信と見識を豊かにし、より大きな国民生活本位の改革を可能にしていくことになる。
政局は、明らかに前向きに開かれており、問題は、その可能性をつかみとろうとする意欲と能力の水準となる。
さらに柔軟に、もっと創造的に、自らの発意で行動することのできる自立した改革者の成長と育成が切実に求められる局面といえる。
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衆議院総選挙の結果を受けて
2009年08月30日
社団法人 経済同友会
代表幹事 桜井 正光
http://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/comment/2009/090830a.html
1. 有権者は歴史的変革を求めた。民主党が自由民主党以外の政党として、戦後初めて単独過半数の議席を獲得し、政権交代を実現した。わが国の議会制民主主義にとって、まさに歴史的な政権選択選挙となった。
2. 民主党は、マニフェストでは「国民の生活が第一」と掲げ、国民にとって受け入れられ易い政策を羅列しているが、新政権を担うこととなった今、中長期的に見たわが国の重要課題について具体的な方向を示し、責任をもった取り組みが求められる。
特に、わが国の財政は、国・地方の長期債務残高で対GDP比 154.8%(2008年度末)、国の債務残高の対税収比で1800%を超え、第2次世界大戦末期のレベルに匹敵するほど、極めて危機的な状況であり、財政健全化の道筋を示すことなく、子育て・教育、年金・医療などの歳出拡大を図ることには、大きな不安を抱かざるを得ない。
3. 責任ある政権政党として、民主党は速やかに中長期的な財政再建の道筋を示し、(1)財政再建に向けた歳出・歳入一体改革、(2)税収拡大を目指すための経済成長戦略、(3)歳出削減を目指すための規制改革や行政改革、(4)国民負担の規模を推量るための社会保障制度と税制の一体改革、などマクロ経済政策運営に取り組まれることを期待する。
また、その実行にはなによりも政治的リーダーシップの発揮が不可欠である。早急に「5原則・5策」を具体化した「政権移行プラン」を策定し、政権基盤を確立するとともに、先ずは2010年度予算編成作業に遅滞なく着手していただきたい。
4. なお、今回の自由民主党の歴史的大敗の要因は、2005年衆議院総選挙で約300議席を獲得したにもかかわらず、相次いで総理大臣が短期間で交代した政権運営や、説明不足のまま構造改革路線の変更を重ねたことなどに対する国民からの厳しい批判であったと思う。
しかし、今後も政権交代可能な二大政党による、緊張感のある健全な議会制民主主義を根付かせていくためには、選挙結果の自己総括を出発点とする、自民党の再生が不可欠である。新しい時代をリードする政党として、再出発していただきたい。
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