昨日(10月5日)、岡山大学でお話させてもらいました。
日本科学者会議岡山支部の例会です。
企画が終わって帰ろうとすると
「話しを1000字でまとめてね」
と言われてしまいました。
以下は、その1000字原稿です。
支部のニュースは、あまりみなさんの目に
とまらないでしょうから(失礼!)、
ここにアップしておきます。
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マルクスの学説は、彼が生きた時代――労働基準法の端緒がようやくつくられた時代で、十分な政治的権限をもつ議会がヨーロッパにもほとんどなかった時代ですが――を多くの人々の生活改善のために改革したいと願った、その強い意志を原動力につくられました。
したがって、彼の学説の理解には、彼の改革者としての精神への理解が不可欠です。
29才で『共産党宣言』を執筆し、48年のヨーロッパ革命に突入していった彼の若い人生を紹介したのは、その精神の実際にふれていただきたかったからです。
マルクスの学説は、世界観、経済理論、未来社会論、革命運動論などの主な要素が、互いに深く依存しあう特徴をもっています。
たとえば資本主義経済への探求のふかまりが、同時に、世界観や未来社会論、革命運動論にも内容の修正・充実を求めるといった関係があり、その全体をマルクスの成熟史にそってとらえることはなかなか大変です。
「東日本」大震災とこれをきっかけとした原発災害とは、日本社会にどういう復興策を実行し、エネルギー政策をどのように立て直すかという新しい課題を提起しましたが、財界団体(日本経団連、経済同友会、日本商工会議所など)やその影響を強く受けた政府の動きには、あらためてこの国が未熟で野蛮な資本主義だとの思いを深めさせられました。
財界流の復興策は、➀大資本が潤えばいまに被災者も潤うという「構造改革」路線をさらにすすめ、②被災地に大型の「開発」政策をもちこみ、③東北の農漁民から土地や漁場などの生産手段を奪う「新しい原蓄」を行うものとなっています。くわえて、④エネルギー政策については原発を「基軸」とする基本線に変化はありません。その内実は「復興」を名目とした利潤の追求に他なりません。
他方で希望が見えるのは、被災者支援や「脱原発」をもとめる動きが、インターネットを通じた意見と情報の交換を重要な手段に、これまで政治への関心が必ずしも高くないといわれた層をまきこみながら発展し、また長く袂を分かった市民運動が新たな協同に向かう兆しを見せていることです。
マルクスは資本主義発展の原動力を「資本そのもの」に見ましたが、それは、資本の本性が飽くなき剰余価値(利潤)の追求にあり、➀それが社会の生産力を多面的に発展させる一方で、②貧困・恐慌・環境破壊など種々の社会的な災厄を引き起こし、③それらの解決に向かう労働者や市民の意識と取り組みを鍛えていかずにおれないといった意味でした。
こうした3.11後の日本社会を見るとき、私はあらためて基礎的な論点でのマルクスの先駆性をいくつも確認させられる思いでいます。
同時に、そうだからこそ、マルクスが生涯を通じてその学説と行動を更新しつづけたように、現代の新しい現象への新しい分析をつうじて、私たちがマルクスの到達を批判的に更新することも強く意識すべきだと思っています。
以上、私なりの「マルクスのかじり方」でした。
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