兵庫県の高等学校通学区域検討委員会が、
6月30日に学区再編案を公表した。
公立高校普通科の現行16学区を5学区に再編し、
全県に複数志願選抜制度を導入するなどが柱である。
この案に対する県内41市町・教育長の
評価アンケートが、「神戸新聞」9月15日付に掲載された。
その結果は、次のようになっている。
〔再編に賛成〕2名・5%
〔どちらかというと賛成〕6名・15%(以上合計20%)
〔反対〕6名・15%
〔どちらかというと反対〕7名・17%(以上合計32%)
〔どちらとも言えない〕16名・39%
〔無回答〕4名・10%(以上49%)。
各地の教育長が、県教委の提案に公然と
「反対」を述べるのは、きわめて異例のことである。
くわえて、県内19の自治体は、
この提案内容に反対する「意見書」を
議会で正式に可決している。
残念ながら、いまその19自治体のうち、
17自治体だけしか手元で確認することができないのだが、、
その17自治体を、上の回答に重ねると次のようになる。
〔再編に賛成〕2名・5%
〔どちらかというと賛成〕6名・15%
※うち2市は「反対」の意見書を可決している。
〔反対〕6名・15%
※うち1町は「反対」の意見書を可決していない。
〔どちらかというと反対〕7名・17%
※うち3町は「反対」の意見書を可決していない。
〔どちらとも言えない〕16名・39%
※うち2町は「反対」意見書を可決している。
〔無回答〕4名・10%
※3市・1町すべてが「反対」の意見書を可決している。
(最近可決された2自治体については、後日追加したい。)
つまり、一方に、議会の「反対」決議を、
そのまま表明しない/できない教育長が8人おり、
他方で、議会の「反対」決議がないにもかかわらず、
「反対」「どちらかというと反対」
を表明した教育長が4人いる。
問われたのは、教育長の個人見解であるから、
上の数字は、県教委に対する何らかの「配慮」を
ふくめたとしても意味がある。
しかし、全41市長のうち19の自治体で、
反対の「意見書」は可決されているのであり、
その比率は全自治体の46%となっている。
この他に、首長が反対を表明している自治体も
数カ所あるという。
こうした状況を前に、県知事や県行革審も、
県教委に新たな「検討」を求めている。
そうせずにおれない状況を生んだのは、
各地の切実な声である。
たとえば、姫路市議会の「要望書」は次のように述べている。
「学区の拡大は、これまで緩和に向かってきた
受験競争を再び激化させる危険性があるだけでなく、
遠方の高校への通学は、生徒や保護者に
経済的・精神的・肉体的負担を負わせることにつながります。
また、学区の拡大によって、
一部の高校に生徒の希望が集中し、
高校間格差が拡大することが予想されます。
義務教育のみならず高校も地域住民の財産であり、
地域の子どもたちの教育を保障する場でもあるため、
『地域の子は地域で育てる』
『子どもは地域社会全体で育てる』
という理念が尊重されるべきであります。」
後日、また関連情報を。
先生こんにちは。初めてコメントさせていただきます。
兵庫県教委の学区再編の動きを関心を持って見守っている者です。
記事中に、「こうした状況を前に、県知事や県行革審も、県教委に新たな検討を求めている」と書かれていますが、具体的に何か動きがあったのでしょうか。
当初の計画では、現在の中1から新制度導入となっていますが、これが遅れる可能性はあるのですか?
投稿情報: 秋晴れ | 2011/10/08 08:11
秋晴れさんこんにちは。
➀8月11日行われた但馬県民局の地域づくり懇話会で、豊岡・養父・香美の議長・副議長や、県会議員らから批判意見が相次ぎ、井戸知事は「教育委員会に私から但馬にふさわしい仕掛けを検討するように伝えたい」と述べざるを得ませんでした。
②また9月末に県の「行財政構造改革審議会」は、井戸知事に新行革プランの進捗状況についての意見を提出しましたが、そこにも学区見直しについては「県民の理解を得られるよう幅広い視野から検討すべき」という文章がふくまれています(新聞報道)。
県教委の政策に知事やその周辺から「検討」を求める意見が表明されることは異例のことです。
全体として、県民の大きな反対の前に、すくなくとも現在の県教委案をそのまま実施することはできなくなっているものと思います。
それを完全に撤回させることができるのか、あるいは細部の修正にとどまるのか、そこはこれからの世論の広まりにかかっているのでしょうね。
状況を前向きに転換することのできる条件が、切り拓かれつつあると思っています。
投稿情報: walumono | 2011/10/08 10:43
先生こんにちは。
我が家には中1の子どもがいますので、学区再編の動向を注視しておりますが、行財政構造改革審議会が知事に意見書を提出したとは知りませんでした。それは異例のことなのですね。
このたびの学区再編は50年ぶりの大規模な見直しなのですから、新しい学区については地域や保護者の意見も取り入れて検討していくべきであると思います。また、学校現場へ十分周知した上で導入されるべきです。
それにも関わらず、最初から5学区への統合ありき、26年度の実施ありきで、お手盛りの検討委員会を設置し、県教委が拙速に策を進めているのには何か理由があるのでしょうか。単に、全国的に見て兵庫県が学区統合に遅れをとっているからなのでしょうか。
新聞でも、自治体、教育関係者をはじめ、兵庫県PTAをはじめとする多くの団体、多くの保護者が県教委の学区再編の進め方を批判しておられ、2500通ものパブリックコメントも、反対意見が多いと聞きます。
このままではスムーズに新制度へ移行するとはとても思えません。混乱の中、生徒や保護者、学校現場への周知が十分になされないまま平成26年度から見切り発車するとなると、恐らく細かい点は決まりきらないままでしょうから、現場は大混乱となるでしょう。結局、しわ寄せを受けるのは子どもたちです。
県教委には、当たり前のことですが、子どもたちのことを一番に考えて施策を進めていただきたいと思います。
投稿情報: 秋晴れ | 2011/10/09 09:24
秋晴れさんへ。
今回の学区再編案に道理や必要性がないのはご指摘のとおりだと思います。いちばん迷惑するのは、子どもたちと保護者ですね。
そもそもの再編推進力は国の中にあるようです。とはいえ、具体的な決定権は自治体の側にあるわけですから、県民の取り組みがますます大切です。
高校の先生方の組合も、反対の立場でがんばっています。http://www.hyogo-kokyoso.com/data.php?mode=disp&number=0&id=2404
月末には大きな集会を開くとも聞いています。
投稿情報: walumono | 2011/10/09 12:17
こんにちは。
初めて投稿させて頂きます。
私は但馬地方の出身の大学生です。
高校入試に関しては、但馬以外の現状は知りません。しかし、但馬だけに関して言えば、現状の入試制度は早急に変えなければならないと思っています。
と言いますのは、連携校という制度により、能力のある生徒がそれに適した高校に入学できない仕組みになっているからです。
たとえば、出石中は出石高校とは連携していますが、豊岡高校とは連携しておりません。しかし、出石中の中でも、北但学区の公立高校の中で唯一の進学校である豊岡高校(進学校というほどでもないかもしれませんが、でも他の高校に比べれば差は歴然としています)に進学を希望する生徒は、少なからずいます。
しかし、定員の6%に入らなければ、みんな足切りです。定員合わせのために、能力があるにも関わらず、豊岡高校には出願さえできない生徒が山ほどいる。
にもかかわらずです。たとえば豊岡南中などは、出石高校とも豊岡高校とも連携しており、上位半分は豊岡、もう半分は出石へと進学するようになっています。つまり、それほど猛勉強をしなくても、そこそこの成績で豊岡高校に入れる。
これを不公平と言わずして、なんというのでしょう。
私は出石中から豊岡高校に入学しました。私の入学した年、出石中から豊岡高校には2人しか出願出来なかったため、3位の人は泣く泣く私立高校に進学していました。
しかし、私は豊高に入学してから、愕然とする現実を目の当たりにしました。意識の低い生徒が、一人二人ではないのです!
あの3位だった人を足切りにして、このような生徒を豊岡高校に入学させる必要があったのか。私はこの疑問を、ずっと抱いていました。
はっきり言って、現状の制度は不公平極まりない。実際、私はmixiでこのことに関する日記を書いたのですが、私の同級生はやはりこの制度に対して不満を抱いていました。このままでいいと言っている人は一人もいません。豊岡高校と連携している中学校の人さえも、おかしいと思っています。
現状維持を求めているのは、地域の声ではなく、地域の「オジサマ達」の声です。「自分の子供を豊岡高校に行かせたい」、「自分の地域にある高校の学力をこれ以上低下させたくない」、そんな当事者(生徒)不在の思惑が見え隠れしているような気がします。
入試制度について、高校生や大学生年代の人たちにはアンケートを取られていないと思います。おそらく、地域での説明会も、若者の出席者は皆無であるか、数えるほどしかいなかったでしょう。
若い年代に対してアンケートなどの調査を行えば、地域の意見は変わってくるはずです。こんな不公平な状況を、放置していていいはずがないんですから。
投稿情報: nitsuke | 2011/10/09 21:42
nitsukeさん、コメントありがとうございます。
中学生や高校生たちに、学区拡大をすすめようとする人たちが語るメリット、それに反対する人たちが語るデメリットの双方を良く伝えて、自分たちの自主的な判断をもってもらうことは必要なことですね。そして、それは地域の重要な構成員の意見として尊重されるべきだと思います。
ご意見の点については、現在の16学区を5学区に変更することで解決されうる問題なのか、またそれが受験生全体にとってメリットを大きくする改善になっていくのか、あるいはむしろ連携制度の再編によって改善が可能な問題であるのか、その点の検討も必要なように見えますね。
問題を総合的にとらえる上で、ご指摘の点は、重要な論点のひとつだと思います。ありがとうございました。
投稿情報: walumono | 2011/10/09 22:43
先生お久しぶりです。
10月26日からasahi.com(http://mytown.asahi.com/hyogo/newslist.php?d_id=2900014)
で「学区改革 私はこう考える」の連載が始まっているのをご覧になっていますか。
第1回目に検討委員会委員長の梶田氏が登場されているのですが、その中の言葉に驚いてしまいました。
梶田氏は、「5学区という案は、途中経過だと認識していただいて結構です。5年ほど先でしょうか、そう遠くない将来にもう一度、学区数と入試制度を抜本的に見直す必要があると考えています。」と述べられています。
十分な議論もせずに2014年度に5学区に統合し、そのわずか5年後には、また根本的に新しい制度(たとえば全県1区)に変えてしまうのでしょうか?
新制度導入でようやく落ち着いた頃に、また教育現場を大混乱に巻き込むことの意図がわかりません。それなら時間をかけて検討し、最初から全県1学区にすればよいのです。
委員長は、学区の再編による影響を直接的に受ける生身の子供たちがいることを本当に理解されているのでしょうか。
また、近々の全県1区を睨んで、このたびの学区再編が行われようとしていることなど、保護者の誰が予想しているでしょうか。委員長がこのタイミングで、このような発言をされるなど、通常では考えられないことです。県教委はこの発言を承知しているのでしょうか。単に梶田氏の私見ということでは通らないと思いますが。
先生はどう思われますか?
投稿情報: 秋晴れ | 2011/11/03 16:11
お教えいただいたアドレスから、連載(1)~(5)をザッと読みました。豊岡市長以外は、全県1区を当然とする立場で発言されているようですね。その点では記事のバランス自体に疑問をもちます。新聞社としての独自の現状分析はあったのでしょうか。なお全県1区の是非については、すでにそれを行っている県の「実状」をよく分析する必要があると思います。それによって「学力」にどのような変化があり、「育ち」にどのような変化があり、「地域」や「くらし」にどのような変化が起こっているかといったところですね。以上、簡単ですが。
投稿情報: walumono | 2011/11/03 16:48
お久しぶりです。
検討委員会の報告書が出ましたね。
結局、実施時期をはじめ、但馬の件以外は素案通りでしたね。
もう少し、地域やパブコメをした保護者等に対する配慮があるのかと思っていましたので、大変驚きました。実施時期については、パブコメで「時期を遅らせるべき」との意見が大半でしたが、提言には26年度から実施との文言がばっちり入っていましたね。
1月には早速実施計画も出るようですし、これで本決まりなんでしょうか。
24年度から新学習指導要領が導入されますし、中学校の先生方の事務量の増加は相当なものだと思います。
大丈夫なんでしょうか。
高校教育課もこのあたりをちゃんと把握してるのかと、大変疑問です。
投稿情報: 秋晴れ | 2011/12/03 16:18