景気はゆるやかに回復しているが、底堅さには不安。
特に、頼みのアメリカ景気に不安がある。
「三角合併」解禁については、外国企業による買収攻勢に不安を感じる。
こんなところが東京・産経両紙のアンケートに共通したところのようである。
雇用の回復も伝えられているが、これは正規・非正規の比率を明らかにしてもらわねば。
6割「緩やかに景気回復」 主要217社アンケート(東京新聞、5月2日)
東京新聞は1日、全国の主要企業217社を対象とした景気アンケート(4月中旬に実施)の結果をまとめた。6割以上の企業は依然、景気の現状を「緩やかに回復」と判断。ただ減速の兆候や横ばいを感じる企業も3割を超え、底堅さの中にやや不安が頭をもたげる企業心理が、浮き彫りとなった。1日に解禁した三角合併による外国企業の買収攻勢については、3割が「脅威」と感じている実態も明らかになった。
本年度の景気見通しについては、76・9%が「緩やかに拡大」と回答。前回(昨年12月実施)から12ポイント以上増えており、好調な業績を背景に、年内は景気拡大局面が続くとの見方が大勢を占めた。
2007年度の実質経済成長率では、予想の中心が前回は「2・0%未満1・5%以上」だったが、今回は「2・5%未満2・0%以上」に上方修正された。さらに「3%未満2・5%以上」との強気予想も4・2%と少ないながら、前回より2ポイント以上増加した。
先行きへの懸念材料としては、全体の4分の3以上が「米国経済の先行き」と回答。企業間に漂う不安の主な原因が、経済指標ごとに明暗が交錯する米景気であることが浮かび上がった。
一方、「株価の急落」はわずか3・8%で、2月の世界同時株安は、ほとんど企業心理に影響を与えていないことも判明した。
格差問題では、「問題だ」と認識する企業が製造業の46・5%に対し、非製造業では57・6%と6割近くに達した。これは格差拡大による個人消費の一層の鈍化傾向を、サービス産業の多くが心配している実態を反映したとみられる。
「買収脅威」3割超 外資「増える」が5割(産経新聞、5月4日)
産経新聞が主要企業120社を対象に実施したアンケートで、買収の脅威を感じている企業が3割を超えることが明らかになった。1日に解禁された三角合併によって、外国企業の日本企業買収が増えると考えている企業が半数に達することも分かった。米金融大手シティグループが国内証券3位の日興コーディアルグループを傘下に収めるなど企業買収は拡大する一方。日本企業は常に買収の脅威を感じながら経営する時代に入ったといえる。
アンケートは、主要業種の大手企業120社を対象に、4月下旬に実施した。
「買収の脅威を感じることがあるか」との質問に対し、「ない」は62社(51.7%)、29社(24.2%)が「ある」と回答した。ただ、「その他」の回答のなかに、「潜在的リスクは感じる」「可能性はゼロではない」などと指摘した企業が9社あり、合わせて38社(31.7%)が買収の脅威を意識している。
三角合併で外国企業による日本企業の買収が増えるとみている企業は56社(46.7%)にのぼった。「その他」のなかにも「増える可能性はある」「きっかけにはなる」など可能性に言及した企業が4社あり、これを加えれば半数の企業が、三角合併で外国企業による買収の脅威が増すとみている。
買収の脅威に対抗するため、買収防衛策をすでに導入した企業は21社(17.5%)。「今後の株主総会に導入を諮る」と「いずれ導入する予定だが、時期は未定」が合計15社(12.5%)あり、全体の30%が買収防衛策を導入、または導入する意向だ。
一方、景気の現状認識については、99社(82.5%)が「緩やかに拡大している」と回答し、「拡大している」との回答はなかった。昨年12月の前回調査では景気拡大の認識を示した企業が約9割に達しており、企業の景況判断はやや慎重になってきてきた。
また、「緩やかに拡大している」と回答した企業に、景気拡大がいつまで続くかを聞いたところ、3社が「今年前半」、28社が「年内いっぱい」とした。前回調査では、45社が「今年いっぱい」は景気拡大が続くと判断していただけに、企業の景況感は微妙に変化していることがうかがえる結果となった。
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【用語解説】三角合併
買収をしようとする会社が、自らの子会社と買収する会社(被買収企業)を合併させて傘下に収める手法で、5月1日に解禁された。被買収企業の株主に自社の株式を割り当てるため、多額の買収資金が不要になる。時価総額の大きい外国企業が日本法人を通じて日本企業を買収できるようになるため、脅威論が高まり、昨年5月に施行された新会社法では三角合併だけ導入が1年延期された。
導入進む買収防衛策 「検討」含め5割超す(産経新聞、5月4日)
産経新聞が主要企業120社を対象に実施したアンケートでは、1日に解禁された三角合併で、外国企業による買収が増えるとみる企業が半数にのぼった。企業買収の脅威は一段と増し、買収防衛策の導入を検討する企業も増えている。一方、景況感は昨年末の前回調査に比べて慎重な見方が増えており、変化の兆しもみえる。ただ、緩やかながらも景気拡大が続くとの見方は依然多く、業績の先行きにも自信がうかがえた。
「具体的」は3割
企業買収への脅威が高まるなか、買収防衛策の導入については、「以前から導入している」と回答した企業が8社、「この1年の間に導入した」の13社を合わせて21社(17.5%)にのぼった。「今後の株主総会に導入を諮る」の5社、「いずれ導入する予定だが、時期は未定」の10社を加えれば30%が買収防衛策を導入、または導入する意向だ。
「その他」とした企業でも「是非を含めて検討中」など検討している企業が26社(21.7%)ある。具体的な買収防衛策(複数回答)としては「企業価値向上」が42社、「新株予約権発行」が19社で続いた。
一方で「検討していない」とした企業も28社(23.3%)あった。「その他」のなかにも「当面、導入予定はない」「検討したが導入しない」と回答した企業が11社(9.2%)あり、3分の1の企業は買収防衛策導入に否定的だ。
業績拡大続く
国内景気の先行きにはやや慎重な見方が増えているものの、企業業績は拡大が続いている。
平成18年度の連結業績(見通し含む)は97社(80.8%)が増収、77社(64.2%)が最終増益と回答した。19年度見通しについては28社が回答を避けたが、有効回答企業の77.2%にあたる71社が増収を予測。最終利益についても63.0%の58社が増益と予想している。
日本の景気についての不安材料(複数回答)をあえて挙げてもらったところ、全体の83.3%にあたる100社が「米国経済の失速」と回答し、日本経済が米国市場に大きく依存している実態を反映した。「原油価格の高騰」が34社(28.3%)で第2位で、「素材価格の高騰」の13社(10.8%)と合わせ、コストの上昇圧力に対する不安が大きい。ほかに27社(22.5%)が挙げた「国内個人消費の低迷」や、21社(17.5%)が指摘した「中国経済の腰折れ」などが目立った。
雇用も拡大
企業業績の拡大は雇用環境でも好影響を与えている。今春闘の結果について聞いたところ、具体的な回答を寄せた85社(一部企業は複数回答)のうち、47社(55.3%)が「賃金改善を実施した」とし、賃上げの流れが産業界全体に広がったことを裏付けた。
「賃金改善、ボーナス増額とも行わなかった」という企業は16社(18.8%)にとどまり、「賃金改善は行わなかったが、ボーナスを増額した」が12社(14.1%)、「育児支援など手当てを充実した」も14社(16.5%)にのぼった。
新卒採用に関しても積極性が浮かび上がった。来春の定期採用計画について聞いたところ、「今春よりも増やす」と回答した企業は58社(48.3%)と約半数にのぼった。「今春程度」は50社(41.7%)だったが、「今春より抑制する」は5社(4.2%)だけで、来春の就職戦線も学生側に有利な「売り手市場」になりそうだ。
現在の雇用状況は適正が72社(60.0%)と、「不足」の35社(29.2%)を大きく上回るが、好調な企業業績を背景に新卒の採用増などで中核事業を一段と強化したり、団塊の世代の大量退職を補ったりといった狙いがあるとみられる。
好調な設備投資
設備投資にも積極な姿勢が出ている。具体的な回答を寄せた企業97社のうち、57社(58.8%)が前年度よりも拡大を計画している。拡大の規模では「前年度比25%未満」が31社で最も多いが、50%以上拡大するとした企業も5社あった。
これに対して、「前年度より抑制する」とした企業は16社(16.5%)、「前年度水準並み」は24社(24.7%)にとどまった。好調な設備投資が国内景気を牽引(けんいん)している側面が強いが、その傾向は今年度も続きそうだ。
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【アンケート回答企業一覧】
旭化成、アサヒビール、味の素、アステラス製薬、イオン、石川島播磨重工業、出光興産、伊藤忠商事、エーザイ、NEC、NTTコミュニケーションズ、NTTドコモ、NTT東日本、大阪ガス、花王、鹿島、川崎重工業、関西電力、キッコーマン、キヤノン、九州電力、京セラ、キリンビール、近畿日本ツーリスト、近畿日本鉄道、クボタ、KDDI、神戸製鋼所、コマツ、サッポロビール、サントリー、三洋電機、JR東海、JR西日本、JR東日本、JFEホールディングス、四国電力、資生堂、清水建設、シャープ、商船三井、新日本製鉄、新日本石油、住友化学、住友金属鉱山、住友商事、積水ハウス、セブン&アイ・ホールディングス、全日本空輸、ソニー、ソフトバンク、損害保険ジャパン、第一生命保険、ダイエー、大成建設、大日本印刷、大和証券グループ本社、大和ハウス工業、高島屋、タカラトミー、武田薬品工業、中国電力、中部電力、TDK、帝人、東京海上日動火災保険、東京ガス、東京急行電鉄、東京電力、東芝、東北電力、東レ、凸版印刷、トヨタ自動車、日興コーディアルグループ、日産自動車、日新製鋼、日本IBM、日本航空、日本製紙、日本生命保険、日本通運、日本マクドナルドホールディングス、日本郵船、野村ホールディングス、博報堂DYホールディングス、長谷工コーポレーション、阪急阪神ホールディングス、バンダイナムコホールディングス、日立製作所、ファーストリテイリング、富士通、富士フイルムホールディングス、北陸電力、北海道電力、ホンダ、松下電器産業、マツダ、マルハグループ本社、丸紅、みずほフィナンシャルグループ、三井化学、三井住友海上火災保険、三井住友銀行、三井物産、三井不動産、三越、三菱ケミカルホールディングス、三菱地所、三菱自動車、三菱重工業、三菱商事、三菱電機、三菱東京UFJ銀行、三菱マテリアル、ヤマトホールディングス、UCC上島珈琲、リクルート、リコー、ローソン(五十音順)
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