財界とアメリカ政府の支持をどうとりつけるのか。そこがポスト小泉をねらう「麻垣康三」たちの最重要課題となっている。
前回総裁選では「構造改革」への本格的な転換か,従来型の経済運営かが大きな争点とされたが,今回は「格差社会」への一定批判はあってても,「構造改革」路線の根本転換は話題になっていない。
となると彼らのあいだの最大の争点は「靖国問題/対アジア政策」となるのだろう。財界は金もうけ第一主義の立場からアジアとの融和・協調を強くもとめ,他方,アメリカにも小泉首相の靖国参拝に対する強い批判の声がある。
日本の首相とこの国の政治の基本政策を一体誰が左右しているのか。そこがクリアに見える総裁選になりそうである。
あわせて「日本はこれからどうするべきか」の大きなテーマを,大いに論ずる必要が生れそう。
まずは6月小泉首相訪米へのアメリカ内部の注文から。
「靖国参拝中止求める書簡 米下院外交委員長
【ワシントン15日共同】複数の米議会筋は15日、下院外交委員会のハイド委員長(共和党)が先月26日、ハスタート下院議長あてに、6月下旬に訪米予定の小泉純一郎首相が議会で演説を行う場合は、靖国神社に参拝しない保証を得るべきだとの見解を示した異例の書簡を送付したことを明らかにした。
首相訪米を機に、日本の首相が過去に行ったことのない上下両院合同会議での演説の可能性を検討する動きが日本政府内に一時あったことから、委員長が演説実施に参拝中止の条件を設定した格好。
アジア歴訪中のアナン国連事務総長も15日、首相の靖国参拝をめぐる日中韓の対立解消を訴えたばかり。議会実力者の参拝中止勧告は首相に対する国際圧力の高まりを示しており、今後の日米関係にも波紋を呼びそうだ。 (共同通信) - 5月16日9時49分更新」
この件について記者に問われた小泉首相は,
……午前11時30分から同50分まで、厚生労働省の辻哲夫厚労審議官、塩田幸雄政策統括官。坂篤郎官房副長官補が同席。同58分、執務室を出て、同59分から午後0時1分まで、閣議室前で報道各社のインタビュー。「米下院の外交委員長が首相が米議会で演説するには、靖国神社を参拝しないと表明する必要があるという書簡を出したが」に「米国議会の中には、違う意見もありますね。まったく違う意見もね。自由です」。同2分、首相会議室へ。同23分、執務室へ。……(時事通信) - 5月16日1時1分更新」
といった反応である。とりあえずは様子見の姿勢ということだろう。
他方,もはや去りゆく小泉首相に同調ばかりはしていられない,「麻垣康三」の「垣」さんは,日中韓関係の現状をいよいよ「異常」と評価しはじめた。
「谷垣氏が出馬意向表明 総裁選
自民党谷垣派会長の谷垣禎一財務相は15日、都内で開いた派閥パーティーで講演。9月の総裁選に関し「私も、私のグループもきちんとした責任を果たす覚悟を新たにしている」と述べ、立候補する意向を事実上表明した。「ポスト小泉」候補の1人と目されながらも、報道各社の世論調査では支持率が低迷。埋没回避を狙って、存在感をアピールした格好だ。
谷垣氏は併せて政権構想の骨子ともいえる同派の政策提言を公表。「人と社会の絆(きずな)」をキーワードに、財政再建や育児支援充実などを通して「人間の血の通った温(ぬく)もりのある社会を創(つく)る」と強調し、小泉純一郎首相の靖国神社参拝で冷え込んだ中韓両国などとの関係について「異常な関係を改める」と盛り込んだ。
総裁選をめぐる情勢は、森喜朗前首相が自派に属する安倍晋三官房長官と福田康夫元官房長官の一本化調整を断念したため、安倍、福田両氏による「二強対決」の様相を帯びつつある。谷垣派は、アジア外交の立て直しや消費税増税を含む財政再建などで独自色を発揮したい考えだが、「福田氏と政策面で重なる点が多い」(谷垣派幹部)との指摘もあり、警戒感を強めている。
=2006/05/16付 西日本新聞朝刊= (西日本新聞) - 5月16日10時1分更新」
ポスト小泉をめぐる世論調査がいくつも行なわれている。
そのどれにも「三」さんに対する「康」さんの「接近」傾向があらわれている。
「安倍氏40%、福田氏31% ポスト小泉で世論調査
共同通信社が13、14の両日に実施した全国電話世論調査によると、小泉純一郎首相の次の首相にふさわしい人は、安倍晋三官房長官が40・1%(前回4月調査51・9%)でトップを維持したものの、福田康夫元官房長官が31・4%(同22・1%)と差を20ポイント余り縮め、急接近した。9月の自民党総裁選で争点となりそうな靖国神社参拝問題では、「次の首相は参拝すべきではない」が51・8%と過半数を占め、「参拝すべきだ」(35・8%)を上回った。
中国や韓国との関係改善など小泉外交の立て直しに意欲を示す福田氏の言動が好感を持たれ、支持拡大につながったようだ。他のポスト小泉候補は、麻生太郎外相4・5%、谷垣禎一財務相2・7%、河野太郎氏1・6%と低迷、「その他の人」は1・4%だった。 (共同通信) - 5月15日17時28分更新」
さて,その「康」氏は,あとはアメリカの支持を得るばかりと渡米中。
アメリカ側にも,「康」さん歓迎の姿勢が見えるらしい。
もっとも,それはアメリカにとって「よりコントロールしやすい」ということかも知れないが。
「訪米の福田さんに異例の厚遇、相次ぐ首脳との会談
【ワシントン=五十嵐文】訪米中の福田康夫・元官房長官は11日、チェイニー副大統領、ラムズフェルド国防長官と個別に会談した。
米政府は10日のライス国務長官に続き、ホワイトハウスと国防総省の首脳が会談に応じる異例の厚遇ぶりで、「ポスト小泉」の有力候補と目される福田氏への関心の高さをうかがわせた。
会談内容の詳細については、福田氏も米側も明らかにしていない。会談に同席した加藤良三駐米大使は11日の記者会見で、米政府の厚遇について「会談の手配を私どもが(日本大使館で)行っていることはない。ハワード・ベーカー前駐日大使が友人として便宜を図った面もある」と述べた。 (読売新聞) - 5月12日11時13分更新」
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