「ポスト小泉特集:安倍政権誕生後も海外勢の日本株投資続く=カリヨン証」(朝日新聞)。
カリヨン証券は,ヨーロッパ最大(世界第5位)の金融グループ,クレディ・アルディコルの法人営業部門・投資銀行部門であるカリヨンに属する。
以下は,カリヨン証券チーフ・エコノミストの加藤進氏に対するロイターのインタビュー「海外勢は新政権をどうみるか」。
――ポスト小泉は安倍官房長官との見方が強まっているが、海外投資家は安倍政権についてどうみているか。
「海外勢は安倍氏について関心はあるがよく知らないというのが実情だ」「安倍氏は成長論者とみられているが、成長のための具体策をまだ出していないため、安倍政権を前提にストラテジーをたてるにいたっていない」
「海外勢にとって小泉改革は非常にわかりやすく、評価が高い。金融構造改革など目にみえる成果をあげ、長期安定政権を築いた」「このため、安倍氏に対しては事前に期待を高めているというよりは不確実性のほうが意識されている。ただ、小泉改革の継承者とみられているため谷垣氏や麻生氏よりは安心感がある」。
安倍氏は経済について発言したことがないとの指摘に対して,1~2回はしたことがあると答えていたが, 経済政策がないという評価は外の投資家から見ても同じということらしい。
――安倍新政権が誕生した場合のリスクは。
「憲法改正や靖国参拝問題などが国内で政治的な対決構図を招きやすい点だ。対アジア外交がうまくいかず政権が不安定になるようなら、日本経済にもリスクが出てくる」。
「海外勢は外交問題に注目しており、なかでもアジア系の投資家は靖国問題を重く受け止める傾向がある。安部氏が中国や韓国とうまくやっていけるか確信はもてないようだ。ただ、外交は日本経済のリスクのひとつではあっても、投資の尺度とは考えられていない。政治的なアジアとの対立が、日本株のアロケーションを考えるにあたってネガティブに働くわけではない。これまでも中国などで反日感情が高まった局面でも日本製品の不買運動はそう大きくはならなかった。安倍氏がアジアとの政治的な関係を解決できなくても政冷経熱の流れは変わらないだろうし、逆にいえば解決できたとしてもそれで日本株のウエートが高まることはないだろう」
外交がリスク要因ではあるが,それが日本企業の収益全体に大きく影響するのでなければ,投資の直接的な「尺度」にはならないということ。
――安倍政権が誕生した場合の海外勢の日本に対する投資スタンスをどうみるか。
「日本に対する基本的な評価は変わらない」「安倍氏には小泉政権の継承者としての安心感があり、首相交代後の補選などで国民の評価もみえてくる。海外勢が日本株のアンダーウエートに傾くことはないと考えている」
「海外勢は、日本が経済改革をなしとげ、中長期の成長経路に戻りつつあると評価している。政権交代で日本経済のマクロのフレームワークが変わる必然性はない。安倍政権後も海外勢による日本株投資は続くとみている」
裏を返すと,これは投資家たちによる「構造改革」継続への圧力ということでもある。そうしなければ株価は下がるぞと。それは当然,経営者等の心理を動かし,そこから政治に対する株価維持政策への要求も出る。
「日本株投資のうえで海外勢が意識しているリスクは外需で、米・中経済が予想以上の減速になった場合、日本が十分に対応できるかが注目されている。しかし、対米貿易構造は変化しており、輸出は資本財が増えている。今回の米景気減速局面では企業業績が比較的堅調を保つとみており設備投資が落ちにくいとみていため、対米輸出は影響を受けにくくなっている。中国にしても、成長はむしろ高すぎるため、多少スローダウンしても日本への影響が限られよう。海外勢が日本のマクロ経済に大きく疑念をもって日本株のウエートを下げることはないだろう」
とはいえ,これらの視点で抜け落ちるのは外需に左右されづらい,強い内需にささえられた日本経済をどうつくるかという問題。もっもと,投資家にとって必要なのは企業の収益であり,それが何を基盤としたものであるかはどうでもいいのだろうが。
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