靖国史観を公然と肯定するところに安倍氏の政治家として際立った特徴があり,内閣も「オール靖国」に近いものとして構成された。
それにもかかわらず,安倍氏は国会でそれを堂々と主張することができずにいる。これは,その歴史観への内外の批判がいかに強いかということの証明といえる。
政治の流れは政府の方針だけで決まりはしない。それは多くの市民・世論との力の衝突の結果としてのみ,決まっていく。
言い古された言葉だが,しかし,依然,政治の真理である。
それにしても,下の埼玉の上田県知事による「じゃまするな」発言は下劣にすぎる。
何が真実かを,正面から論じ合う勇気をもたない者の常套手段といってしまえばそれまでなのだが。
「歴史認識『政府見解』で『本音』隠し 安倍首相」(朝日新聞,10月4日)。
「安倍首相は4日まで3日間にわたった衆参両院の各党代表質問で、歴史認識を問われると決まって『特定の歴史観を語ることには謙虚でありたい』とかわし続けた。村山首相談話と河野官房長官談話についての自らの認識も示さず、『政府の立場』の説明にとどめた。自ら疑問を呈した『政府見解』を盾に持論を封印した形だが、矛盾は今後も問われそうだ」。
「『靖国神社がご指摘のような立場を有するかどうかわかりませんが、特定の歴史観の是非について政治家が語ることには謙虚であるべきだ』。首相は4日、共産党の市田忠義氏が「靖国神社が言うように先の戦争をアジア解放の正義の戦争という立場に立つのか」と問いかけると答えた」。
「同党の志位委員長は『靖国の立場と政府の立場は違うとも言わない。前の小泉内閣と比べても大きな歴史認識の後退だ』と訴える」。
「安倍氏は首相就任前の記者会見で、村山首相談話のうち『国策を誤った』など、戦争責任につながる核心部分についての自らの認識を明らかにしていなかった。代表質問でも『政府の認識』として引用しただけだ」。
「今年2月の衆院予算委で、当時官房長官だった安倍氏は『侵略戦争』の定義について『学問的に確定しているとは言えない』と述べていた」。
「従軍慰安婦問題では矛盾が際立つ。97年に『日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会』を立ち上げた直後、衆院決算委第2分科会では『河野官房長官談話の前提は崩れてきている』などと訴えていた」。
「持論を封じた首相の答弁には『手堅く、無難にやろうとしている』(片山虎之助参院自民党幹事長)との声がある。政権発足直後であることや8、9両日に中韓両国訪問を控えている事情があるとの見方だ。これに対し、野党側は『何も語らないのは、極めてひきょうな発想だ』(鳩山由紀夫民主党幹事長)と攻勢を強めている」。
「元慰安婦ら知事に要請 従軍慰安婦発言で 撤回と謝罪求める」(中日新聞,10月4日)。
「上田清司知事が六月定例県議会で『古今東西、慰安婦はいても、従軍慰安婦はいない』と発言したことを受け、自ら従軍慰安婦だったと証言している韓国籍のイ・ヨンスさん(77)と支援者が三日、県庁を訪れ、発言の撤回と謝罪を求める要請書を県秘書課に提出した」。
「イさんら十数人は面会の約束がないまま知事室を訪ねたが不在だったため、開会中の県議会議事堂へ移動。議場に入ろうとする知事を取り囲んだ際、知事が『じゃまするな』と声を荒らげるひと幕があった」。
「直後にチョゴリ姿で記者会見したイさんは『私は当事者。知事の目の前ではっきりと証言したかった』と話した」。
「要請書では、知事の発言は事実に反し、人権侵害に当たると批判。『アジア各国の被害者』への謝罪を求めている」。
「イさんによると、十四歳だった一九四三(昭和十八)年十月、韓国・大邱の自宅にいたところを旧日本軍により強制連行され、台湾の軍基地で慰安婦として従事したという」。
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