昨年11月の米中「建設的パートナーシップ」確認あたりから,アメリカは「東アジア共同体反対」の立場を放棄して,アメリカ資本により有利な「東アジア共同体建設」へと政策転換を行ってきた。
その上での,一手ということなのだが,どうも,当の東アジア諸国に歓迎されることはなさそうである。
「「APEC域内FTAを」米が日本などに働きかけ」(日経新聞,11月6日)。
「米国政府が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)の加盟国に対し、全21カ国・地域を網羅する自由貿易協定(FTA)の検討を始めたいと打診していることが分かった。ベトナム・ハノイで18日から開くAPEC首脳会議の首脳宣言に盛り込むよう、日本など各国に働きかけている。ただ加盟国の間には慎重論が多く、調整は難航しそうだ。
APEC加盟国・地域の人口は世界の4割、域内総生産も6割を占める。域内FTAが実現すれば北米自由貿易協定(NAFTA)や欧州連合(EU)を上回る大規模な協定となる」。
「全加盟国・地域でFTAを APEC首脳宣言案 米提唱、中国反発も 」(FujiSankei Business i. 2006/11/4)
「ベトナムのハノイで18日から開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が採択する首脳宣言の原案に、APEC加盟の全21カ国・地域で構成する自由貿易協定(FTA)の締結を目指す文言が盛り込まれたことが分かった。米国の提唱によるもので、実現すれば世界人口の4割、国内総生産(GDP)の5割超を占める巨大な自由貿易圏が誕生する。
首脳宣言の1次原案は、加盟国から寄せられた提案を基に議長国のベトナムが10月下旬に作成。各国の財界人で構成されるAPECビジネス諮問委員会(ABAC)が全加盟国・地域によるFTAを将来の課題とすべきだと提言したのを受け、米国が「ABACと同じ見解を共有する」との項目を1次原案に盛り込むよう要求した。
ただ、APECはもともと、拘束力のない緩やかな経済協力の枠組みに位置付けられている。このため、「APECをFTAで縛ることに中国などが反発するのは必至」(国際交渉筋)とみられる。
日本政府は「FTAの実現性は将来的にも乏しい」と基本的に静観の構え。ただ、一部には「首脳宣言に盛り込まれれば、頭から無視するわけにはいかない」(経済産業省幹部)との声も出ている。
APEC加盟の21カ国・地域の貿易量は世界の45%に上り、人口は26億人と欧州連合(EU)の4億6000万人、米国、カナダ、メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)の4億3000万人を大きく上回る。
◇
■東アジアEPA構想牽制
米国がAPEC加盟国のFTAを提唱したのは、日中韓と東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、ニュージーランド、インドによる16カ国の「東アジア経済連携協定(EPA)構想」などに向けた動きを「牽制(けんせい)する狙いがある」(外交筋)とみられる。
米国は、自国が除外されたEPAが締結されれば、巨大マーケットの東アジアで不利な立場に追いやられる。こうした事態を警戒して自国が加わる大きな枠組みを提唱したと受け止められている。
ただ、APEC加盟国のFTAは、農産品の扱いなどをめぐり各国の主張が激しく対立すると予想される。政府内では「東アジアEPAの議論が下火になれば、米国がAPECのFTAに積極的に取り組むこともない」(国際交渉筋)との見方が広がっている」。
最近のコメント