年2回制度的に開催されている米中経済対話だが、日米対話とまるで異なり、独立国同士らしい話し合いが行われているようだ。
元切り上げの大きな動きが確認されなかったことに、アメリカ議会は強い苛立ちをもっている。
しかし、アメリカが圧力をかけさえすれば相手が必ず折れるという現代世界ではすでにない。
同時に、世界の市場経済ルールは、アメリカだけに決定権があるわけでもない。
アメリカ議会と政府は、大局的には、そのことについての学習の過程にあるようだ。
【ワシントン=藤井一明】23日に閉幕した閣僚級の米中戦略経済対話について、米議会から早くも厳しい声が相次いでいる。特に人民元改革に踏み込み不足を指摘する意見が目立つ。金融や航空の市場開放で一定の前進がみられた戦略対話も、米議会の対中強硬論の勢いを和らげるのには不十分だったようだ。
民主党のボーカス上院財政委員長は23日、声明を発表し、戦略対話を通じて中国の牛肉輸入の制限と人民元の過小評価の問題が「解決されなかったのは極めて残念だ」と強調した。
米中戦略経済対話、幾つかの点で合意・為替問題は進展なし(日経BP、5月24日)
[ワシントン 23日 ロイター] 2日間の日程で開かれた第2回米中戦略経済対話は23日、終了した。中国への航空便乗り入れ拡大や、米企業が中国金融セクターに参入する際の障壁緩和などでは合意したが、争点となっている人民元改革の加速については進展がなかった。
ポールソン米財務長官は対話後の会見で「具体的な成果」があったと言明。一方、中国の呉儀副首相(通商担当)は、両国間関係は「複雑」で、慎重な対応が必要だとの認識を示した。
副首相は「中米の経済・通商関係は、現在の世界で最も複雑な関係の1つだ」と指摘。「脅威や制裁に安易に訴えるかわりに、米中の直接協議や対話が求められる」と語った。
ポールソン長官には、過去最高に達している米貿易赤字の削減に向け、中国により積極的な為替改革を促すよう各方面から圧力が掛かっている。長官は、中国当局も自国の利益のためそうする必要があることを認識していると指摘した。
15人の閣僚を率いて対話に臨んだ呉儀副首相は、対話終了後、米議会に向かった。米議員らは、中国が人民元を上昇させなければ中国からの輸入に関税を課すという内容の法案を計画している。
人民元の対米ドルでの上昇率は、2005年7月の切り上げ以降6%にとどまっており、元の過小評価のため中国製品が不当に安くなっていると主張する米議員の不満を買っている。
ポールソン長官は、対話終了後の記者会見で「中国は明らかに人民元柔軟性拡大の必要性を認識しており、方針を表明している」と語った。
証券市場開放などで合意 米中対話、人民元進展せず(北海道新聞、5月24日)
【ワシントン23日共同】米国と中国が貿易不均衡是正などを話し合うためワシントンで開いた2回目の米中戦略経済対話が23日午前(日本時間同日深夜)閉幕し、双方は中国の証券市場の対外開放拡大や米中間の航空便倍増などで合意した。しかし焦点の人民元相場の弾力化では大きな進展はなく、米議会から早くも不満や失望の声が上がった。
発表によると両国は、外資系証券会社の中国市場への参入規制撤廃や業務範囲の拡大で合意。中国政府が国内株への投資を認めている適格海外機関投資家の投資枠を、100億ドルから300億ドル(約3兆6000億円)に拡大することで一致した。
米国から中国への旅客航空便を2012年までに倍増することでも合意。エネルギー分野では、温室効果ガス削減に向けた炭鉱のメタンガス利用などでの協力も確認した。次回会合は12月に北京で開催の予定。
米国のWTO提訴を批判=人民元相場、不均衡の主因でない-中国副首相(時事通信、5月25日)
【ワシントン24日時事】米中戦略経済対話のため訪米している中国の呉儀副首相は24日夜、米経済界が主催した夕食会で講演し、米国が知的財産権問題で中国を世界貿易機関(WTO)に提訴したことについて、経済問題を対話で解決するという戦略対話の精神に反し、両国関係に悪影響を与えると強く批判した。
同副首相は、今回の会合を「両国の理解が深まり成功だった」と評価する一方、「中国はまだ途上国」であり、サービス貿易などで「米国とは違いがある」と強調した。人民元相場についても、2005年7月の通貨バスケット制移行以来、対米ドルで8%以上切り上げられたと指摘、「安定的な改革を続けていく」として、米側の切り上げ加速要求を退けた。さらに「人民元相場が米貿易赤字の主因ではない」と述べ、米中貿易の不均衡には構造的な要因があるとの見方を示した。
人民元改革 進展なし 米中対話閉幕 米議会から不満噴出(読売新聞、5月25日)
【ワシントン=矢田俊彦】米中両国が経済問題を包括的に話し合う「米中戦略経済対話」の第2回会合は23日、米中間の航空便増便や中国の金融市場の開放などで合意し、閉幕した。しかし、米側が焦点としていた人民元相場の柔軟化については具体的な進展がなく、訪中70回以上の「中国通」ヘンリー・ポールソン米財務長官の手腕を見守る姿勢をとってきた米議会はしびれを切らせている。12月に北京で開かれる予定の次回会合までがひとつのヤマ場となりそうだ。
「中国の為替市場での大量で継続的な介入に強い懸念を表明する」。チャールズ・ランゲル下院歳入委員長(民主党)は、米中戦略経済対話終了後に会談した中国の呉儀副首相に対し、人民元相場に不満を表明した書簡を手渡した。マックス・ボーカス上院財政委員長(民主党)も「人民元の過小評価の問題が解決されなかったことは大いに不満だ」との声明を発表、米中対話に対し米議会から不満が噴出した。
米政府高官によると、米中対話で、中国側は先週発表した人民元と対ドル為替レートの変動幅拡大について説明した。これに対し、ポールソン長官らは「人民元相場が改革の象徴だ。スピードを加速させるべきだ」と述べたという。
米議会から批判の風を受け始めたポールソン長官は「今回の米中対話は意図的に米議会開会中に設定した」としている。呉儀副首相らを有力議員らと直接会談させることで、米議会の雰囲気を肌で感じさせる狙いもあったようだ。
一定の進歩あった 米大統領
【ワシントン=矢田俊彦】ブッシュ米大統領は24日、ホワイトハウスで記者会見し、「米中戦略経済対話」について、「一定の進歩があった」と述べ、米航空会社の中国便増便などで合意したことを評価した。一方、「対中貿易赤字(の縮小)は取り組まなければならない問題」と指摘し、その解決策の一つとして、為替相場の問題をあげ、「中国が人民元を切り上げるかどうか注視している」と述べた。
米中が戦略経済対話 貿易不均衡など協議 双方から閣僚級25人出席(しんぶん赤旗、5月24日)
【ワシントン=鎌塚由美】米中の主要な経済閣僚が両国の経済や貿易問題を協議する第二回米中戦略経済対話が二十二、二十三日、ワシントンで行われました。米側からはポールソン財務長官、中国からは経済担当の呉儀副首相を筆頭に、双方から閣僚級の二十五人が出席。二日間にわたり経済・投資、エネルギー・環境、貿易不均衡是正の三つのセッションで意見交換しました。
米側議長を務めるポールソン長官は開幕あいさつで、「中国からこれだけ多くの閣僚が米国の一都市に集まるのは、歴史的にもかつてない」と歓迎。それは「長期的な経済関係を正しく方向づけることがいかに決定的かを両国が認識している」からだと表明しました。
同時に、両国内で「保護主義や貿易とグローバル化の利点への疑念」があり、相互不信が「永続的な貿易・金融不均衡」によって増幅されていると指摘し、米国内での「反中感情」に言及して米議会などの対中懸念を示唆しました。「われわれは忍耐強くない」とも述べ、貿易摩擦解消へ中国側の速やかな行動を求めました。
これに対し中国の呉儀副首相は「建設的協力関係」を強調。「通商問題の政治化は避けなければならない」として、対中圧力をけん制しました。「両国の貿易不均衡に対処するため米国とともに効果的な措置をとる」とも語りました。
今年は、両国関係の断絶終了を確認した上海コミュニケ調印から三十五周年であることから、当時の国務長官だったキッシンジャー氏が特別講演しました。
戦略経済対話は年二回の開催予定。第一回は昨年十二月に北京で開かれました。
--------------------------------------------------------------------------------
米中戦略経済対話
米中戦略経済対話の実施は、ブッシュ米大統領と胡錦濤中国国家主席との間で合意され、昨年十二月に始まりました。
両国間の経済関係は拡大し、米国にとって中国は第三位の貿易相手国、中国にとって米国は第一位の貿易相手国となっています。
それに伴い生じている二国間の経済問題やエネルギーなど世界的な経済問題について閣僚レベルで意見交換するのが、「対話」の目的です。このような機構が両国間で設置されるのは初めてです。
対中貿易赤字は昨年、二千三百億ドル(約二十八兆円)と過去最高に達しています。昨年秋の米中間選挙を契機に、こうした状況への批判や対中経済制裁を求める声が米国で高まっています。
四月には米通商代表部(USTR)が、海賊版のDVDやCDが横行するなど知的財産権保護の法制度が不十分だとして、中国を世界貿易機関(WTO)に提訴しました。
米中経済対話 航空便倍増で合意 証券参入の障壁緩和も(しんぶん赤旗、5月25日)
【ワシントン=鎌塚由美】米中の主要な経済閣僚がワシントンで一堂に会し、両国の経済課題を協議した米中戦略経済対話が二十三日、閉幕しました。二日間の日程で、金融サービス、エネルギー・環境、貿易不均衡などを協議。民間航空分野で、両国間の航空便を倍増するほか、米国の証券会社の中国市場への参入の障壁緩和でも合意しました。
米側の議長を務めたポールソン財務長官は、閉幕にあたり発表した声明で、中国側と「緊張関係にあっても、ひんぱんな連絡と差違の解消、バランスの取れた経済関係を保つことの重要性」を確認したと述べ、「相互利益をもたらすとき、われわれの関係は最良であり、それは成長と均衡、より強力な世界経済へと導く」と語りました。
中国の呉儀副首相は、米中の経済関係は「現在の世界でもっとも複雑な関係の一つ」とし、その前向きな発展には、「ウィン・ウィン(ともに勝利する)の原則で誠実に対話と交流を行うことが必要」だと強調。米側との「対話」を通し、両国の経済関係と建設的協力関係の「全面的な促進」を、と希望しました。
「対話」の閉幕にあたり、両国は、民間航空分野での新たな取り決めに合意したと発表しました。米中間の旅客航空便数を二〇一二年までに現在の一日十便から二十三便にすることとし、貨物輸送でも障壁をほぼ完全撤廃することで合意しました。米国のピーターズ運輸長官は閉幕後の記者会見で、合意は、「戦略経済対話の重要性を示す具体的な証し」だと述べ、昨年十二月の「対話」以来の協議による成果を強調しました。
このほか、金融サービス分野では、外国証券会社の中国市場参入への障壁緩和などで合意しました。米側が求める人民元改革の加速については、具体的な進展はありませんでした。
コメント