銀行の社会的役割を経由した、国家による産業企業(環境汚染)への規制である。
レーニンの銀行論を思い起こさせる現実といえる。
他方、元高回避のための中国政府・人民銀行による元売りドル買い介入が、市場の過剰流動性を拡大し、急速な株高とバブル崩壊への可能性を高めているという。
最近の政府による対米黒字縮小への動きは、このドル保有拡大にもストップをかけるものとなるのだろうか。
日本だけではなく、中国にも過度のアメリカ市場依存からの脱却が求められているようである。
中国当局、銀行に環境汚染企業への融資引き揚げを要請(朝日新聞、7月13日)
[北京 13 日 ロイター]中国銀行業監督管理委員会(銀監会)は13日、国内の銀行に対し、国家発展改革委員会から過度の環境汚染や生産過剰を指摘されている企業から融資を引き揚げるよう要請したことを明らかにした。
銀監会は回収される可能性のある融資額や、国家発展改革委からリストアップされている企業が何社あるかなどについては明らかにしていない。
しかし、銀監会によると、エネルギー集約型で環境を汚染しているセクターについて、国内銀行による中長期の融資残高は5月末時点で1兆5000億元(約1980億ドル)。
膨らむ中国の外貨準備、株価バブルを扇動(朝日新聞、7月13日)
[東京 13日 ロイター] 6月末の中国の外貨準備高が過去最高の1兆3326億ドルになった。一国の外貨準備としては世界最大規模だ。1-6月期の増加額は2663億ドルだったので、上半期だけで昨年1年分に匹敵する増加ペースになる。
世界的な好景気を背景とした貿易黒字の拡大が人民元高圧力を生み、それを制御すべく中央銀行が大規模なドル買い/人民元売りの介入を実施したことが背景にある。</u>介入は国内で過剰流動性を生み出し、中国の株価バブルを扇動する要因となっているが、中国政府が人民元相場管理の手を緩める気配は今のところ見られない。
<介入で溢れるマネーサプライが株高を演出>
執拗に介入を重ねる中国が心配するのは、人民元高で生じるデフレと失業者の増加だ。だが、人民元の上昇を抑える介入は、中国人民銀行(中央銀行)が人民元のベースマネーを市場に放出してドルと交換することに他ならない。上半期で約2700億ドルの介入は2.04兆元(1ドル=7.57元で換算)のベースマネーの増加をもたらしている。信用乗数が一定であれば、広義のマネーサプライも、それに比例して増えることになる。
過剰流動性の流入先として注目されてきたのが中国の株式市場だ。2005年6月上旬に一時1000ポイントを下回った上海総合指数は今年5月末に4300ポイントに達し、約2年間で4.3倍になった。現在は3900ポイントレベルに下落したものの市場のセンチメントが弱気に転じたとは言いがたい。
「中国の現状は日本のバブル時と類似している。消費者物価は落ち着いているものの、アセット・インフレが起きている。中央銀行は介入を控え、人民元の上昇ペースを速めてバブル退治に政策の軸足を置くべきだ」と野村資本市場研究所・主任研究員の関志雄氏は語る。
消費者物価は4月に前年比3.0%、5月に同3.4%とハイパーインフレとは程遠い水準にある。
中国で過剰流動性問題が台頭してきたのは2002年以降だが、その後2-3年の間は溢れるマネーは不動産を中心に流入。だが、2005年半ばの非流通株改革をきっかけに、株式市場への資金流入が活発化した。
<不胎化政策の効果に限界>
過剰流動性を吸収し、介入に伴うマネー供給の拡大を相殺するために、中国人民銀行は不胎化政策を取っている。その手段として、公開市場操作で中央銀行は自ら発行する国債や中銀手形を売却して(売りオペ)流動性を吸収している。2003年4月からは、売りオペを実施する際に、人民銀行が保有する国債の玉不足を補うために、自らが中銀手形を発行するようになり、その発行量は膨らんでいる。
当初、中銀手形は3カ月物が中心だったが、徐々に長期化しており、現在は1年物が中心となっている。中国の金利体系が順イールドのため中銀の資金調達コストは高まっている。
中央銀行は入札による売りオペのほかにも、手形割り当てを実施している。手形割り当ては、利回りを市場実勢以下の水準に抑え、強制的に銀行、特に貸し出しの伸び率が高い銀行に対して手形を割り当てるものだ。
また、中国人民銀行は預金準備率を徐々に引き上げ、2006年6月の7.50%から現在は11.50%まで引き上げられた。このため金融機関は預金残高の11.5%を人民銀行に預けることが義務づけけられている。
さらに、人民銀行は5月に1年物貸出基準金利を0.18%ポイント引き上げ6.57%に、一年物預金基準金利を0.27%ポイント引き上げ3.06%とした。
こうして金融政策の組み合わせにより過剰流動性の吸収努力は続けているものの、マネーの伸び率は鈍化していない。M2の伸びは2004年に年率14.6%だったが、今年の7月には17.1%となっている。介入の規模があまりにも大きく、しかも中長期的に持続されているため、それに対応する不胎化政策が功を奏していないのが実情だ。
<非流通株改革も株高に寄与>
株価が2年で4.3倍になった要因として、介入による過剰流動性の発生、好景気、国内企業に対する企業所得税(法人税)の引き下げに加えて、2005年春からの非流通株改革がある。
これにより、例えば既に10株の流通株(一銘柄)を保有する投資家は、新たに3株を政府、政府系機関、国有企業などの大株主から無償で手に入れることができた。この3株は1999年と2001年に政府所有株放出時に株価が大幅に下落した経験をふまえ、株価下落分を事前に補填する意味合いがあった。
だが、2005年の放出時に株価は下落せず、政府保有分が減ることで「中国企業にもコーポレートガバナンスが効くようになるとの思惑から、株価はむしろ上昇気流にのった」(関氏)。この上昇気流を後押ししたのが、介入による過剰流動性の存在ということになる。
介入を完全に停止しないまでも、控えめに実施し、人民元の上昇をある程度容認するという政策オプションはあるが、今のところ選択されていない。
「年間7-8%程度の人民元の上昇を容認し、早期に為替レートを均衡水準に導けば、バブルの膨張を防ぎ、ソフトランディングを実現する可能性が高まる」と関氏は指摘する。中国がこのまま日本の轍を踏んでいくとすれば、消費者物価の安定に目を取られアセット・インフレを放置、そしてバブルが弾け、長い不況期を体験することになる。中国のバブル崩壊の世界経済へのインパクトは日本のそれとは比較にならないほど大きなものとなるだろう。
(ロイター日本語サービス 森佳子)
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