政府系ファンドが注目されているのは中国だけではなかったようす。
UAE、サウジなどのアラブにくわえて、ロシアなども、大型な政府系ファンドをもっているらしい。
それにしても、いまはG7の側が、これらのファンドに情報の公開を求め、市場の攪乱を抑制する側にまわろうとしている。
G7など旧来の経済大国だけでは、世界経済管理はまったく無理となっている。これもまた世界構造変化のひとつのあらわれ。
日本にも政府系ファンド立ち上げの話があるようだが、最終的にはアメリカへの追随歩調といったところであろう。
ワシントンで19日開かれる主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)の主要議題に、存在感を増している政府運営のファンドの問題が浮上してきた。油価高騰で巨額資金を得た中東産油国や、経済成長で外貨準備をため込んだ中国などが、その運用のためにファンドを設立。欧米や日本企業の大株主になる事例も続出しているからだ。
◆急拡大、情報少なく
これらファンドは、市場では「SWF(ソブリン・ウェルス・ファンド)」と呼ばれ、日本語では「政府系ファンド」「国家ファンド」などと訳される。明確な定義はないものの、株式や不動産投資などで高利回りを志向、安全な資産で運用される外貨準備とは区別されている。その急拡大に市場の関心も高いが、実態はベールに隠されたままだ。
このため、G7は今回、関係国に情報公開を求めることの是非を協議する見通しだ。海外メディアは、今回の議長国の米国のキミット財務副長官が政府系ファンド問題が「議題になる」と明言したと伝えている。
また、関係者によるとG7側は大規模な政府系ファンドを持つアラブ首長国連邦やサウジアラビア、クウェート、ロシア、中国など8カ国の当局者らを19日夜の非公式会合に招待。この問題について意見交換するとされる。
◆全体資産、推計で290兆円
2兆5000億ドル(約290兆円)――。米金融大手モルガン・スタンレーは最近、政府系ファンド全体の資産規模をそう推計し、市場を驚かせた。実際、その巨額な資金が世界経済を動かす発信源となりつつある。
1兆4336億ドル(9月末)と世界一の外貨準備を持つ中国は、そこから資本金2000億ドルを工面して9月末に国有投資会社「中国投資(CIC)」を設立。これに先立つ5月には、企業買収を手がける米投資会社ブラックストーンに30億ドルを出資する計画を発表して、米国で大きな話題となった。
日本も無関係ではない。シンガポール政府投資公社(GIC)は4月、プロ野球・福岡ソフトバンクホークスの本拠地球場を保有する企業を買収。すでに米投資ファンドへの投資実績もある。
巨大資金力を生かした果敢な「攻め」に、先進国側は戦々恐々としているのが実情だ。自国の主力企業がいきなり買収されるおそれがあるばかりか、技術流出や安全保障上の国家間の問題にさえなりかねないからだ。
9456億ドル(同)と世界2位の外貨準備を持つ日本でも実は、米国債など安全第一の運用方針を変え、政府系ファンドを設立すべきだとの声が政治家らの間に出ている。だが、財務省は損失懸念や急な為替変動への介入のため流動性を確保したいとして強く反対しており、今のところ具体的な動きにはなっていない。
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