自民・民主が、低所得層や中小業者、運輸業者、農漁民に対する原油高の圧迫緩和策を競っている。
「票田」へのこうした配慮なしに衆議院選挙は迎えられないというのが、7月29日以後の新しい政治の局面である。
両党に対してはこうした変化を歓迎し、政策内容の充実を求め、さらに市民の中では、より抜本的な政治の全体像の転換を求めていくことが必要となる。
いまは、はたらきかけの好機であって、政治を様子見するべき時期では決してない。
低所得者に灯油代補助 政府が原油高対策(日経新聞、12月5日)
政府は4日、福田康夫首相の指示を受け、緊急原油高対策の本格検討に入った。対策は寒冷地の低所得者に灯油代を補助したり、燃料価格の上昇で経営環境が悪化している中小・零細企業を支援するため政府系金融機関の返済を猶予する案が柱で、景気の下支えを図る。
自民党の原油高対策なども取り入れ、来週前半までに具体策をまとめる。2007年度補正予算を活用して早急に実施する構えだ。ただ、財政難に苦しむ政府にとって、大規模な資金拠出は難しく、効果が限定的な対策にとどまる可能性もある。
消費者向けの対策では、母子家庭や高齢者世帯に灯油の割引券や代金の一部を支給する北海道の「福祉灯油制度」を参考に、年収が一定以下の人を対象に国や自治体が灯油代の一部を補助する案を検討する。
原油や原材料価格上昇の影響を受ける中小・零細企業に対しては、国民生活金融公庫など政府系金融機関が、つなぎ融資や金利の減免、返済猶予を実施。政府は、各金融機関の財政基盤を強化するほか、不当な値下げ圧力など大企業による「下請けいじめ」の監視を強める。
運輸業者向けには、道路特定財源の一部を活用してトラックなどの高速道路料金の引き下げを実施。農家や漁業者の運転資金を支援する基金設立も検討する。他にも、燃料費が節約できる省エネ設備の資金を支援したり、バイオ燃料を税制面で優遇する案が出ている。
ガソリンや灯油価格の急上昇で、家計の負担は重くなっており、中小・零細企業の経営も厳しさを増している。経産省の調査では、全国の中小企業約1000社のうち約9割が原油高で「収益が圧迫された」と回答、約6割が「価格転嫁ができない」と訴えている。
民主も原油高対策・中小配慮、財源あいまい(日経新聞、12月5日)
民主党も原油高対策に動き出した。「政府は危機感が足りない」(政調幹部)との認識のもと、緊急対策プロジェクトチーム(座長・増子輝彦「次の内閣」経済産業相)を設置。4日の初会合では高速道路料金の3割引き下げや低所得者への灯油購入費補助などを柱とする原案をまとめた。5日に正式決定する。
対策づくりを急ぐのは、今年度補正予算案の編成に間に合わせたいからだ。原油高に苦しむ中小企業は民主にも重要な票田だ。
民主も原油高で対策案、緊急灯油券発行など(読売新聞、12月4日)
民主党は4日午前、「原油価格高騰に関する緊急対策プロジェクトチーム(PT)」の初会合を開き、緊急対策原案をまとめた。
高齢者世帯などに灯油を無料配布する「緊急灯油券」を国が発行することや、高速道路料金を一律30%引き下げることなどが柱だ。5日の党「次の内閣」の会合で正式決定する。来年通常国会に提出される補正予算案に盛り込むよう政府・与党との修正協議に入りたい考えだ。政府・与党も原油高騰対策をまとめることから、民主党案の一部が実現する可能性が出ている。
緊急灯油券は、北海道の自治体が高齢者などに灯油代を助成している「福祉灯油」制度がモデルだ。民主党案では、年収制限を設け、灯油を引き渡すとしている。事業者対策としては、高速道路料金の一律3割引き下げに加え、灯油やガソリンに課税される消費税相当額の還付、貸付資金の繰り延べ返済などを列挙した。
民主が原油高対策案、高速道料金3割下げ(日経新聞、12月4日)
民主党は4日午前、原油価格高騰に関する緊急対策プロジェクトチーム(座長・増子輝彦「次の内閣」経済産業相)を開き、高速道路料金の3割引き下げを柱とする対策案をまとめた。5日の「次の内閣」閣議で正式決定して、政府に2007年度補正予算に反映するよう求める。財源には07年度予算の予備費などを充てる方向だ。
対策案は当面の高速料金下げのほかに、低所得者への灯油購入費の補助や、政府系金融機関による無利子融資など中小企業の資金繰り支援を盛り込んだ。灯油購入費補助では短期間の暫定措置として、寒冷地の低所得者に月1万―2万円相当の「灯油券」配布を検討する。
民主内では原油高対策として、揮発油税など自動車関係諸税の税率を引き下げるべきだとの意見もあり、党の税制調査会などで引き続き議論する。民主党はマニフェスト(政権公約)に高速道路の無料化を明記している。料金下げは原油高の緊急対策として暫定的に実施する方向だ。
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