大国による核兵器保有の独占管理体制は、すでに崩れている。
核兵器をもつ当の本人が、他人には持つなというのだから、そこには最初から説得力がなかった。
核兵器の例外のない廃絶に向けた取り組みをすすめる以外に、核兵器開発への衝動を抑える有効な手だてはもはやないのだろう。
なお、今回の対イラン政策の修正が、結果として、第3次アーミテージ報告の線に沿うことになる可能性が高いことにも留意したい。
【ワシントン=加藤秀央】米情報機関がイラン核問題の分析を修正し、「2003年秋に核兵器開発を停止していた」とする「国家情報評価(NIE)」を公表した。ブッシュ米大統領は4日、「外交解決」を目指す考えを強調した。イラク開戦前の大量破壊兵器情報を巡り批判を受けた情報機関自らがイランで判断を後退させたのを受け、対イラン武力行使は遠のいたとの見方が強まっている。
大統領は会見で「イランは過去も現在も、核兵器開発の技術を手に入れれば将来も危険な存在」と指摘し核開発の脅威は残ると明言。武力行使を排除しない現在の政策は維持すると述べたが、「国際社会は協調すべき時だ」「外交解決を目指す道のりに戻ることを望む」と繰り返し、交渉開始をイランに呼びかけた。
「イラン核兵器開発中断」米大統領なお圧力 「武力行使」は後退(MSN産経ニュース、12月5日)
【ワシントン=山本秀也】米情報機関は、安全保障上の重大な懸念となってきたイランの核兵器開発が「2003年に中断された」との判断を示し、核兵器開発が継続中としてきた情報判断を修正した。4日記者会見したブッシュ米大統領は、核拡散の危険などを挙げて「イランは過去、現在、未来ともに危険だ」とイラン当局への圧力維持を訴えたが、「第3次世界大戦」の懸念まで挙げて論じてきた対イラン武力行使の選択肢は、この情報修正で根拠を失ったかたちだ。
米情報機関は、イラクの大量破壊兵器に関する情報評価を誤り、ブッシュ政権を開戦決断に導いた苦い経験がある。4日付の米主要紙は、同じく誤った情報判断をもとにイランへの武力行使が決断される可能性があったことを論じたが、ブッシュ大統領は「(情報機関への)改革が機能した証拠だ」として、批判をかわした。
3日摘要が公表された「国家情報評価」(NIE)は、イランの軍部が同政府の指示で03年秋まで核兵器開発を進めたことを「確信」する一方、国際圧力の下で、開発継続が政治、経済、軍事的に高くつくとのイラン当局の決断で、計画が同年のうちに、中断されたとの判断を打ち出した。
これは、核兵器開発に対するイラン指導部の「決断」を指摘した05年の情報分析を転換する内容だ。今回のNIEは、今年半ばまでの情勢で「開発再開の動きがみられない」とした。
ただ、イランがウラン濃縮活動の継続によって、10~15年に兵器開発に必要な高濃縮ウランを獲得する可能性には、改めて警鐘を鳴らした。
ホワイトハウスで記者会見したブッシュ大統領は、「この報告はイランが(核兵器開発の)計画をもち、それを中断していることへの警戒信号だ」と述べ、政権の持論となってきた対イラン高圧姿勢は修正しない考えを表明した。
とりわけ、イランが核兵器開発の技術を獲得している現実を挙げ、これが核拡散につながる事態に強い警戒感を示した。
ブッシュ大統領は、イランの核武装が「第3次世界大戦」を招くといった刺激的な表現で、この10月にも強硬論を繰り返していた。軍事オプションを示唆する姿勢は弱まったかたちだが、国連決議に反するウラン濃縮などの核開発継続への追加制裁をめぐる議論を米側はなお維持する構えだ。
AP通信によると、NIEの原本は100ページに上る詳細なもので、ブッシュ大統領は11月28日に説明を受けていた。情報機関高官は、同通信に対して、2年前の分析公表段階では、03年の開発中断を察知できなかったと説明していた。
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