兵庫県の「新行革プラン(第一次)」が確定した。
07年9月の当初案から、すでに2度の収支見込み変更が行われている。
批判の強かった福祉医療の補助削減は一定の見直し。
ただし取り止めではない。
県職員給与削減は当初案の線を維持。
それでいて、公共事業予算は復活である。
この「プラン」を実行するのは県の職員だが、本当にこれでいいのだろうか。
強くその姿勢を問いたい。
いったいなんのための税であり、なんのための「公務」なのか。
財政再建さらに厳しく 県の新行革プラン(神戸新聞、2月14日)
県が十三日に公表した二〇〇八年度から十一年間の新行革プラン(第一次)。県税収入の見込み減などで、昨年十一月の当初案と比べて累積収支不足は八百三十億円拡大し、一層の歳出削減を強いられるなど財政健全化に向けた道のりはさらに厳しさを増した。一方、県会審議や市町などからの意見を踏まえ、当初案で示した一部の事業見直しに「一年間凍結」などの激変緩和措置を講じる修正も加えた。当初案からの修正点などをまとめた。
助成4事業縮小内容見直し
■福祉・医療
福祉分野では、福祉医療と呼ばれる「老人」「重度障害」「乳幼児」「母子家庭」の医療費助成四事業を中心に、共同で事業を進める市町や県会からの反発を受け、削減内容が見直された。
四事業は低所得者への絞り込みや一部負担金の増額などを二〇〇八年度から実施予定だったが、一年間の「周知期間」を設け実施を〇九年七月からに延期。県の〇八年度予算案では計画素案より削減額が二十三億円少なくなり、十一年間トータルでは六十億円の減。
また、母子家庭を除く三事業で二年間(〇九年七月-一一年七月)の激変緩和策を導入。対象となる低所得者を段階的に絞ったり、一部負担金を増額したりする。
老人医療費助成では、これまで六十五歳以上六十九歳以下の人は自己負担が三割から二割に、低所得者は一割に低減していたが、〇九年七月以降は年収(年金と給与)が二百十一万円(扶養親族一人の場合)の住民税非課税世帯に限定。二年後には年収百四十五万円以下(年金は八十万円以下)の世帯を二割負担とし、一割負担を年金収入のみで年収八十万円以下の世帯に引き上げる。
年間で165億円削減 現行6部を「5」に再編
■人件費・組織
職員給与は、十一年間で計千六百億円を削減する-とした当初の枠組みを維持。初めて本給(給料月額)カットに踏み込み、手当などを含めた年収削減額の本給換算は全職員平均で8%に相当する。年間の削減額は約百六十五億円。県は五年間、継続する方針。
知事ら特別職を含む役職別の削減額(年収ベース)などは表の通り。また、県会も月額九十三万円の議員報酬を新年度から当面、10%カットする。
本庁組織は原則、現行の六部体制を維持する方針だったが、企画県民部▽健康福祉部▽産業労働部▽農政環境部▽県土整備部-の五部に統合再編。「局」は約二十(現行二十八)、「課」は約百(同百二十六)にする。
単独事業1040億円
■投資事業
阪神・淡路大震災後に高止まりし、全国水準を大きく上回る建設事業費は二〇〇八年度、事業費総額で補助事業千三百四十億円(〇七年度比88・2%)、県単独事業千四十億円(同81・5%)に削減することが決定。当初は補助事業千三百二十億円(同86・8%)、県単独事業は八百八十億円(同68・9%)に削減する方針だったが、県会などから「地域経済への影響が大きすぎる」と反発を受け修正した。
ただ、最終的に現在の全国平均レベル(補助事業千二百億円、県単独事業七百億円)まで下げる目標は維持。〇九年度以降の削減スピードを速め、十一年間の削減額は当初計画通り、一般財源ベースで計二千億円を確保する。「地域経済への配慮」として、県内事業者の受注機会が確保できるよう、建設工事の発注基準見直しや小規模事業の確保などを盛り込んだ。
障害児支援市町に移行
■その他施策
発達障害など障害のある児童の学校生活を支援する「スクールアシスタント配置事業」は、二〇〇八年度から市町事業に移行。三年間、従来の県補助制度と交付税の差額の半分を助成する「激変緩和措置」を講じる。
県内を巡るバスツアーを助成する「県民交流バス事業」は、県会などからの指摘を受け、バス一台当たりの助成単価を半額にし、台数は現行並みの水準を維持する。
下方修正半年で2度 拡大止まらぬ収支不足
県が十三日発表した新行革プランは、二〇〇八年度から十一年間の収支不足額が一兆二千四十億円と、当初案より拡大。策定作業が本格化してから半年足らずで二度も収支不足が拡大したが、県財政課は「予想の範囲内」を強調。井戸敏三知事は「達成可能な枠組み」と胸を張るが、「毎年の検証を踏まえた修正が必要」と将来を見通す難しさもにじませる。
県は昨年九月、初めて算出した一八年までの収支見通しで、収支不足額を一兆五百四十億円としていた。しかし、議会から税収見通しの甘さを指摘され、再計算。十一月の当初案では、経済成長率を国よりも低く見て、収支不足は一兆千二百十億円になった。
その後も〇七年度税収の予算割れや、〇八年度の厳しい税収見通しが判明。一月には内閣府が経済成長率を下方修正したため、さらに収支不足が八百三十億円拡大。最初の試算からは収支不足が千五百億円増えた形だ。
八百三十億円の収支不足対策で一般事業の予算を五年間3%ずつカットし、六百億円をひねり出す。残り二百三十億円の穴埋めには、新たに起債(借金)を七百億円増額。差額の四百七十億円のうち、一八年度までに二百五十億円を返済する。
残り二百二十億円は、将来の借金返済に備える「県債管理基金」に積み立てておく。新しい財政指標の実質公債費比率の導入で、基金の積み立て不足に陥った県だが、新たな借金で借金返済のための基金を積み増す手法を取った。この結果、一八年度単年度の実質公債費比率の見通しは、17・9%と目標とする18%未満には収まったが、借金によるツケの先送りとの批判もある。
二度の下方修正に、県議は「行革は削りすぎても緩めすぎても良くない。ある程度の見通しは必要。毎年の軌道修正がますます重要になる」としている。(畑野士朗)
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