安倍流靖国派内閣から福田内閣への転換は、しっかりとした対米従属を再確認し、それに抵触しかねない行き過ぎた靖国色の抑制がふくむものであった。
「教育再生会議」の「終了」は、そうした流れにかなうものである。
そのうえで、次の注目点は「新しい会議」の「新しさ」の中身。
はたして「最終報告」にもとづき文科省をチェックするような、立場の強い会議となるのかどうか。
教育行政の内容が、どこまで「教育再生」路線にそったものになっていくのか。
そこは福田内閣の靖国色をはかる、大事な指標の1つとなる。
提言実行へ新組織 教育再生会議が最終報告(しんぶん赤旗、2月1日)
政府の教育再生会議(野依良治座長)は三十一日、首相官邸で総会を開き、「社会総がかりで教育再生を」と題する最終報告を福田康夫首相に提出しました。
報告は、第一次報告(二〇〇七年一月)から第三次報告(同十二月)までの三つの提言について「すべて具体的に実行されてこそ初めて意味を持」つと強調。「提言の実効性の担保」のためとして、内閣に、後継組織にあたる新たな会議を設置し、実施状況を監視する仕組みを導入するよう要求しました。文部科学省などにも、実施計画を作成し、提言の内容を着実に実行するよう求めています。
首相は「新しい会議を内閣に設置したい」と表明しました。政府は二月中にも新組織を発足させます。
最終報告では、「取り組みのフォローアップ」が必要な主な項目として、▽徳育を「教科」として充実させ、必要な規範意識をしっかり身に付けさせる▽「ゆとり教育」を見直し、授業時数を増加する―などを挙げました。
そして、今後「六十年ぶりに改正された教育基本法を踏まえ、教育三法の施行や教育振興基本計画の策定など、いよいよ教育再生の本格的な実施段階」に入ると述べ、これが「教育再生の鍵を握る」としています。
最終報告には、提言の実施状況を点検する際の「チェックリスト」がつけられました。リストの「直ちに実施に取りかかるべき事項」には、「徳育の教科化」や「反社会的行動を繰り返す子どもへの毅然(きぜん)とした指導」など二十七項目が列挙されています。また、六・三・三・四制の弾力化、めりはりある教員給与体系の実現など九項目を、「検討を開始すべき事項」に挙げています。
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解説 「安倍路線」継承に執念
教育再生会議(二〇〇六年十月発足)の最終報告は、三次にわたって発表してきた提言を着実に実行するための後継組織づくりを求めたことが最大の特徴です。実行する中身は、徳育の教科化、全国学力テスト、教員免許更新制などです。戦前回帰を狙うとともに、教育への国家統制を強め、競争原理をいっそう導入していこうという方向性を鮮明にしました。
最終報告は「提言は、すべて具体的に実行されてこそ初めて意義を持」つと強調しています。「教育再生会議の役割はこの最終報告で終了」するといいながら、官邸や文部科学省を動かし、今後具体的に、再生会議の主張を教育現場に押し込もうというのです。福田康夫首相も施政方針演説で「教育の再生に取り組む」と述べており、再生会議の「生みの親」である安倍晋三前首相以来の「教育改革」路線を引き継ぐ姿勢を見せています。後継組織も含め、今後の動向は決して軽視できません。
ただ、これは、国民や教育現場との矛盾を広げるだけの未来のない路線です。例えば、教員免許更新制や成果主義賃金の導入で、本当に「教員の質」が上がるのか。むしろ教師からやる気や団結を奪い、子どもより管理職の目を気にする教師を増やすだけではないか。精神的、財政的なゆとりを増やすことこそ大切ではないか―。教育現場や教育の専門家からは、こうした批判が起きています。
「一人ひとりの子どもに、目の行き届いた教育を」という、国民が願う教育改革の方向に、再生会議の提言はことごとく逆行しています。これを教育現場に押し付ければ、教育はよくなるどころか混乱するばかりです。「役割を終えた」再生会議の後継組織の設置は、きっぱりやめるべきです。(坂井希)
道徳の教科化直ちに 教育再生会議が最終報告(読売新聞、2月1日)
政府の教育再生会議(野依良治座長)は31日夕、首相官邸で最後の総会を開き、教育再生に向けた最終報告を福田首相に提出した。報告は、「道徳」の教科化や学力向上に向けた対策など、これまでの1~3次報告の提言内容のうち、実行されていない重要課題を改めて明記した。
また、提言を具体化するため、学校現場での実施状況の評価など、新たな役割を担う組織を政府内に設けるよう求めた。2006年10月、安倍首相(当時)の肝いりで発足した同会議は、これで役割を終え、解散する。
最終報告は、〈1〉教育内容〈2〉教育現場〈3〉教育支援システム〈4〉大学・大学院改革〈5〉社会総がかり――の5本柱で構成。同会議がこれまでに提言した内容を「直ちに実施に取りかかるべき事項」と「検討を開始すべき事項」に分け、具体的に列挙した。「直ちに実施に取りかかるべき事項」としては、▽道徳の教科化▽小学校への理科や算数、体育などの専科教員の配置▽大学の全授業の30%の英語による実施――などをあげた。「検討を開始すべき事項」では、▽スポーツ庁の設置▽6・3・3・4制の弾力化▽携帯電話のフィルタリング(選別)機能の義務づけ――などを列挙した。
最終報告は、これらの内容について、文部科学省など関係省庁や地方自治体、教育委員会に対し、実施計画を作って着実に実行するよう求めた。
提言を受け、政府は2月中にも、フォローアップ(事後点検)型の新組織を内閣に設置する予定だ。
提言具体化へ 新組織不透明 政府の教育再生会議は31日の総会で、福田首相に最終報告を提出した。今後の焦点は、提言内容を具体化するための新たな組織の形態をどうするかに移る。ただ、再生会議を主導した安倍前首相に比べ、福田首相の「教育再生」にかける思いは判然とせず、どのような組織となるかは不透明だ。 31日の総会で福田首相は、「これまでの成果を十分生かすように、提言の実現、フォローアップ(事後点検)に取り組み、この後の新しい会議を内閣に設置したい」と述べた。しかし、新組織について、具体的な言及はなかった。 教育再生会議は最終報告で、「最も重要なことは提言の実現とフォローアップ」だと指摘し、「国、地方公共団体、学校などの実施状況を評価、実効性を担保するための新たな会議を内閣に設けることが極めて重要だ」と明記した。そのために、内閣直属の新組織の設置を政府に求めた。 再生会議の要請を受け、政府は2月中にも新組織を内閣に設置する考えだ。メンバーは民間の有識者を中心に5~6人になる見込みで、規模は教育再生会議の3分の1程度となる。 渡辺美樹委員は総会後、記者団に「新組織について、首相や官房長官と話をしたが全く具体的でない。提言がどれだけ実行されるのか心配だ」と懸念を示した。 教育再生会議 教育再生の具体策を検討するため、安倍前首相が2006年10月に設置した首相の諮問機関。ノーベル化学賞受賞者の野依良治氏(座長)ら有識者が委員を務めた。3次にわたって報告を提出し、安倍前政権は報告に基づいて教員免許の更新制度導入の法改正などを行った。
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