すでに民間ヘッジ・ファンドを上回る資金運用を行っているとされる政府系ファンドだが、これの「投機・買収の自由」に対する規制案が、EUから出てきた。
「自由な市場」の破壊的性格の面に対する規制である。
IMFも、この秋までに世界的な基準をまとめるという。
政府系ファンド、EUが行動規範――透明性確保狙う(日経新聞、2月28日)
【ブリュッセル=下田敏】欧州連合(EU)は中国やロシア、産油国などの政府系ファンドに対し、資産内容の開示や投資目的の説明責任を課す。EUで投資活動を行う条件となる「行動規範」を定め、違反すれば、ファンドが投資先企業の経営権を握れないように介入する方針だ。EUは国際通貨基金(IMF)にも国際的な投資基準の策定を要請。日米などとも連携し、ファンドに透明性の確保を求める構えだ。
行動規範はEUの執行機関である欧州委員会が27日に加盟国に提案する。政府系ファンドの透明性の向上、国家戦略を背景とした買収に対する域内企業の保護が柱となる。EU市場で活動する政府系ファンドに資産の情報開示や投資に関する説明を求めるとともに、EUの利益を損なわない企業経営などで指針を示す内容。
政府系ファンドに初の規範 日米欧の取り組み加速へ(中国新聞、2月28日)
【ブリュッセル27日共同】欧州連合(EU)欧州委員会は二十七日、新興国の政府系ファンドに対し、透明性や政治的中立性に関する自主的な「行動規範」を求める政策案を発表した。政府系ファンドの運用についての具体的なルール作りの提唱は初めて。
政府系ファンドは経営が悪化した欧米金融機関を「救済」し存在感を高める半面、国家戦略を背景とする投資姿勢に懸念が広がっている。国際通貨基金(IMF)が秋までに世界的な基準をまとめる予定で、七月の主要国(G8)首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を前に日米欧の協調した取り組みも加速しそうだ。
バローゾ欧州委委員長は「政府系ファンドは脅威でない。金融市場の安定に貢献し、企業に長期的で信頼できる投資をしてくれる」と述べ、行動規範について国際的な合意形成を呼び掛けた。
欧州委の政策案は政府系ファンドに対し(1)資金の透明性の確保(2)ファンドの経営方針の明確化(3)投融資の相互性の確保―などを要求。ファンドを保有する国家の政治目的の投資に歯止めをかけようとする一方で、「EU市場は保護主義を排し、開放性を維持する」とも明記。EUは三月の経済・財務相理事会、首脳会議で規範の具体化へ向けた協議を急ぐ。
中東産油国や中国、ロシアなどの政府系ファンドは資産総額が計三兆ドル(約三百二十兆円)に上るとされる。昨年以降、サブプライム住宅ローン問題で巨額の損失を抱えた米シティグループやスイスのUBSなどの資本増強に相次いで応じた。アラブ首長国連邦(UAE)のドバイのファンドが欧州航空防衛宇宙会社(EADS)の株式を取得する動きもあり、政治的な意図や資金の流れの不透明さに懸念が強い。
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