レーニンのアメリカ帝国主義研究だが、目についたのは、次のような諸論点。
「社会主義的プロレタリアートの闘争」の激化など、レーニンはアメリカ国内の階級闘争の具体的な姿に注目している。時期的には、アメリカ社会党などの取り組みのことであろうか。
米西戦争(1898年)は、「時代としての帝国主義」の開始をつげる大きな道標とされる。
〔カウツキーへの批判として〕 アメリカやイギリスに保護貿易主義の後退があっても、それが地球の分割終了後の再分割のための「武力闘争」を回避させる理由にはならないと主張。
独占形成の一環として、原料・市場・労働力・技術者などとならび、交通路と交通機関の独占があげられ、典型例としてアメリカの鉄道と汽船会社の発展があげられている。
鉄道の発展については、資本主義成長の速度に関する的確な資料のひとつだという理解もある。
インド、インドシナ、中国への支配に際しては、イギリス、フランス、日本、アメリカによる「超帝国主義」同盟が成立したが、レーニンは、問題はそれが各国の不均等発展によって長期に渡って安定したものにはならないことだと主張する。
アメリカは世界でもっとも富裕な4つの資本主義国に属し、しかも、ドイツとならんで最も高い発展の速度をもつ国とされる。
アメリカは「金融的・政治的に自立した国」として、イギリス、ドイツ、フランスとならび世界の帝国主義の中心中の中心とされる。
植民地領土の大きさでは6大強国があげられるが、アメリカの領土は小さい方。ただし、資本主義発展の速度は、ドイツ、日本とならんで早い。
もっとも発達した資本主義地域は、中央ヨーロッパ、イギリス、アメリカで、中でもイギリスとアメリカは政治的集中が高い。しかも、両者の植民地領有には大きな不均衡がある。
南アメリカ獲得の闘争はますます激化していると、レーニンの視野は広い。
中国の分割ははじまったばかりだが、日本とアメリカ等の闘争が激化している。
最近数十年のアメリカの急速な発展は、アメリカ資本主義の寄生的特徴をも明確とした。
レーニンは、世界を少数の抑圧民族による被抑圧民族の支配の体系ととらえ、その大きな柱を、①ロシア、オーストリア、トルコなどによる従属民族支配と、②西欧・アメリカ・日本の14ケ国による植民地支配に整理する試みを行っている。
14ケ国の内部にあって、本国内で被抑圧民族と位置づけられたのはアメリカの黒人やインディアンのみとされる。
他方、こういう時代だからこそ、民族自決の問題は、アメリカをふくむ抑圧民族の社会主義者の行動にかかるのであり、社会主義を語りながら、被抑圧民族の自決を主張できないものは排外主義者だと厳しく批判。
アメリカをふくむ支配民族のプロレタリアートの任務は、19世紀アイルランドに対するイギリス・プロレタリアートの任務と同じ。
遡って、アメリカの独立戦争の内実は、イギリスに対する民族解放戦争が主であり、イギリスに敵対したフランスなどの「反イギリス同盟」による帝国主義戦争の側面は「付随的」であったとする。
世界の構造を、①西欧・アメリカ、②東欧、③半植民地・植民地とした場合、アメリカをふくむ①の内部では帝国主義戦争が必然で、そこでは民族自決は問題にならないとする。
これらの構造の中で、社会主義への変革の「時機が熟している」のは西欧と北アメリカの「先進諸国だけ」であり、対照的に、②③には民族的・民主主義的任務が残されている。
アメリカの社会主義労働党の変節には「帝国主義的経済主義」があらわれている。
アメリカ、イギリス、フランス、ドイツのように、政治形態をだいたい同質とする国にあっても、変革の過程は同一ではない。
〔国家的独占とのかかわりで〕 ドイツの金融界はアメリカの「石油トラスト」との闘争で、国家の支援を必要とした。
『帝国主義論』では、新しい資本主義が古い資本主義にとってかわったことが、主に、ドイツ、アメリカ、イギリスなどの資料で明らかにされる。
銀行の成長も、有価証券総額の拡大も、大量の金利生活者、世界の債権者としての役割も。
なお、直接、アメリカにかかわってのことではないが、『帝国主義論』は、植民地政策推進の動機を経済的利害だけに解消せず、「経済外的な上部構造」「自由でなく支配を欲する」政策・イデオロギーにも注目を寄せている。
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