茂木健一郎『「読む、書く、話す」脳活用術』(PHP、2010年)を読み終える。
この人の本には、熱がある。
熱がほしい時には、本当にいい。
「速読によって情報は得られるかもしれませんが、読書によって立ち上がるかもしれなかった脳の中の別のプロセスは立ち上がらない」。
その限界をふまえて速読を活用せよと理解したい。
「多様な本に出合うためには、書店で無駄な時間を過ごすことを恐れてはいけません。・・・自分がその時真に求めているものを、実は身体がわかっているからです」。
あれとこれとをつなげるためにも、この手の方法による視野の拡大は大切。
「『魅力ある文章』とは・・・一気呵成に書き上げられた文章のエネルギーに、読者は惹きつけられていくのです」。
熱だね、熱。
「よい論文の共通点は、『問いかけ』がある論文です。・・・どのような『問い』を抱いて研究生活を送っているかによって、その学者の質は決まってくるのです」。
もちろんこれについては、先の一気呵成とは区別されている。
漫然と時をすごすなという、この人が発するメッセージは強烈だ。
松竹伸幸『マルクスはどんな憲法をめざしたのか』(大月書店、2010年)を読み終える。
こうした角度からのマルクス論をまとめて読むのは初めてのこと。
提示されたマルクスの模索と成長は新鮮で、新しいマルクス像がむすばれる。
「ブルジョアジーと反革命」の末尾の一文を、マルクスによる立憲君主制の原理的な「拒否」と読むことが適当かどうか。
第3章の「社会主義の憲法」は、社会主義をめざす国家を社会主義の確立に至る過渡期の存在ととらえる議論とどういう関係になるか。
以上は、新たに与えられた問題意識の主なもの。
「人間的解放」をめざしながら、あわせて「政治的解放」を追求したマルクス等のたたかいは、当時の各国憲法にも前向きの影響をあたえていった。
そうして生みだされる資本主義の政治の段階的な発展は、産業革命をへたばかり、あるいはその真っ最中にあった経済の発展段階とどのようなかかわりをもったのか。
それは史的唯物論でいうところの「土台・上部構造」論の形成・発展に、どういう影響をもったのか。
そんなところも、うすボンヤリと考えさせられる。総体としての資本主義社会の発展という問題である。
おお、大学に行かねば。
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