平和主義を放棄する憲法「改正」に直結した動きである。
審議時間14時間の理由を,自民・公明・民主はどう説明するのか。
ここで民主が,またしても大枠での自民との共通性を示しているところが重要である。
自民党政治への対抗軸としての,
あまりの脆弱さの自己証明なのだから。
社説 [防衛「省」法案] なぜ「庁」ではだめなのか(沖縄タイムス,12月1日)
「防衛庁を「省」に格上げする法案が衆院で自民、公明、民主などの賛成多数で可決され参院に送付された。
政府、与党は今国会で成立させる方針だが、それにしてもなぜ「庁」から「省」への転換を急ぐのか。
安保委での審議時間はわずか十四時間余でしかない。これだけの時間で戦後の日本が軍隊を持たず、海外派兵もしない、という平和主義の理念を踏まえた論議があったとは到底思えない。
同法の関連法案では、自衛隊法で「付随的任務」とされた(1)国際緊急援助活動(2)国連平和維持活動(PKO)(3)周辺事態法に基づく後方地域支援―などを「本来任務」に位置付けている。
テロ対策特別措置法やイラク復興支援特別措置法に基づく活動を、本来の専守防衛任務と同じ「本来任務」にし、海外派兵を可能にする狙いがある。
日米同盟強化の中で米軍の軍事活動を後方で支援し、米軍と一体化した軍事行動にも道を開く動きと言っていいはずだ。であれば、憲法で認められていない集団的自衛権の問題とも無縁とは言えまい。
「防衛政策は変えない」と強調しても、状況によっては憲法の平和主義に抵触する恐れは否定できないからだ。
自民党の場合、「省」への改編昇格は憲法改正とともに党是に近い。これはまた、安倍晋三首相の「戦後レジームからの脱却」にも連動する。
野党の民主党も「シビリアンコントロール(文民統制)の徹底」以外は自民党に重なる部分が多い。
だが「平和の党」を標榜してきた公明党はどうか。与党だから賛成に回ったというのでは説明になりえまい。
銃火器装備の「軍隊」を海外派兵できる法案と党の理念と、どう整合性をつけていくか。きちんと説明する責任があろう。
共産、社民両党は明確に反対している。が、それにしても国家体制に影響するこの問題が、なぜこうも簡単に衆院を通過したのだろうか。
政府は、国際テロリズムの激化や大規模災害などに対応する自衛隊の国際平和協力業務に「国民の理解が深まってきている」としている。
だがこの場合の理解は、災害時に発揮される自衛隊の活躍であり、銃火器を手に海外に出向く姿ではあるまい。
そう考えれば会期の少ない今国会でなぜ成立を目指すのか疑問が残る。
教育基本法改正の先には憲法改正への意図がある。加えて今回の防衛省法案だ。なぜ「庁」ではだめなのか。詰めの論議が必要なのは当然だが、納得のいく論議がない「省」格上げにはあらためて疑問を呈しておきたい。」
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