4月17日の外国人記者クラブでの,吉見・林・西野3氏の記者会見についての報道。
公開された資料が各国政府によって作成された公文書であり,しかも,東京裁判の証拠資料として採択されたものである以上,裁判結果を受け入れた日本政府としては,否定することのできないものだと述べられている。
裁判の受諾という法的論理と,何が歴史の真実かの探究は単純にイコールとはならないわけだが,とはいえ資料自体の信憑性は高く,それが明らかにしていることの内容も重い。
反面,そのような証拠資料が裁判内部でどのように活用されたかについては,東京裁判はジェンダーブラインドだったという批判を具体的に掘り下げる,あらたな研究のきっかけとなるべきものなのかも知れない。
旧日本軍の「慰安婦」強制動員 証明文書を確認(朝鮮新報,4月23日)
日本の教授らが記者会見 公表、極東国際軍事裁判 各国検察団が提出した訊問調書
旧日本軍が「従軍慰安婦」を強制動員していた事実を示す資料の存在が確認された。関東学院大学の林博史教授が、東京大学社会科学研究所図書館所蔵の資料から発掘した。今回確認された資料は極東国際軍事裁判(東京裁判)にオランダ、中国、フランスの検察団が提出、受理された公文書で、日本海軍情報機関の軍属に対する訊問調書(46年3月13日付)、日本陸軍中尉の陳述書(46年1月13日付)など7点。これらの資料からはインドネシアのジャワ、ボルネオ島(カリマンタン)、モア島、東ティモール、中国、ベトナムで旧日本軍が「従軍慰安婦」を強制、動員した事実がありありとうかがえる。
17日、林教授をはじめ同教授が事務局長を務める「日本の戦争責任資料センター」(以下センター)の吉見義明共同代表(中央大学教授)、西野瑠美子幹事(「女たちの戦争と平和資料館」館長)らが日本外国特派員協会で記者会見を行い、資料の内容を公表した。
これまでも、日本の国内外で「従軍慰安婦」強制動員関連資料が数多く確認されてきたが、今回の資料が注目されているのはその作成過程だ。
資料で明らかにされている「従軍慰安婦」強制動員に関する証言は、民間レベルで収集されたものではなく、日本の戦争犯罪を裁いた極東国際軍事裁判に、検察団を派遣した各国の政府機関が作成した公文書であり、裁判では提出されたこれらの資料が証拠書類として採択された。
今回確認された資料は、サンフランシスコ平和条約11条で極東軍事裁判戦犯裁判を受諾した日本政府としては否定できない性格のものだ。
そのうち、日本海軍情報機関軍属に対する訊問調書(オランダ提出)には、日本軍に拘束、抑留された現地(ボルネオ島)女性に、警備隊長(大尉)の命令で暴力をふるい、衣服を脱がせ裸にさせたことが記述されている。女性を拘束した理由について尋問された軍属は、「淫売屋(「慰安所」)に入れるための口実を設けるために警備隊長の命令でなされた」と証言している。
周知のように、安倍首相は「慰安婦」に対する日本軍の関与を否定する発言を繰り返しており、閣議では軍や官憲による「従軍慰安婦」強制動員の事実を否定する答弁書が決定、採択された(3月16日)。
日本の戦争犯罪の解明と過去清算のための活動を展開してきた林教授らセンターの関係者は、今回の資料公表について「『慰安婦』動員に対する軍関与を否定する動きが強まっている。これまでの研究を通じて得た成果が否定されてはならない」(林教授)と述べた。
吉見共同代表は、安倍首相の一連の発言は被害者の名誉と尊厳を再び傷つけるものだと非難し、日本政府が「河野談話」から後退することは許されないと強調した。
西野幹事は、被害者らが求めている「尊厳の回復」に日本政府が真剣に取り組むことを求めた。(呉陽希記者)
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