中国政府が、外貨準備の運用機関を通じて、アメリカ大手投資会社のブラックストーン・グループに30億ドルを投資するとのこと。
外貨保有1兆2000億ドルのうち、0.0025%の規模にとどまるものではあるが、自国の金融市場開放がどのような問題をはらむかについて、市場経済への学習を深める授業料ということだろうか。
世界市場に新たな混乱のタネを巻くという規模に膨れ上がることは、勘弁願いたいところだが。
中国政府、米大手ファンドに初の出資・30億ドル(日経新聞、5月21日)
【ニューヨーク=松浦肇】企業買収を専門とする米大手投資会社のブラックストーン・グループ(ニューヨーク市)は20日、中国政府から30億ドル(約3600億円)の出資を受け入れると発表した。中国政府による投資会社への投資は初めて。年内に予定しているブラックストーンの株式上場に合わせ、中国政府が近く設立する外貨準備の運用機関を通じ出資する。中国が高利回りを求めて世界一の外貨準備の積極運用に動き始めた。
ブラックストーンは運用残高が約800億ドル(約9兆6000億円)と世界最大規模で、主力の企業買収ファンドは、投資を始めた87年からの利回りが年30%ほどと業界最高水準にある。年内にニューヨーク証券取引所への上場を目指しており、上場後の時価総額は推計で400億ドル(約4兆8000億円)。中国政府は今後、ブラックストーン株を4年超保有するが、株式保有比率は全体の10%未満にとどめるという。
中国が米ファンドに30億ドル投資 貿易赤字や人民元の批判回避か(産経新聞、5月21日)
【ワシントン=渡辺浩生】米投資会社最大手のブラックストーン・グループは20日、中国政府が30億ドル(約3630億円)の同社株式を取得することで合意したと発表した。中国側の出資比率は10%未満となる見通し。中国は約1兆2000億ドルに上る外貨準備を安全な米国債を中心に運用しているが、リスク性試算への積極投資に道を開くことになる。
米中は22、23両日に、両国の経済問題を包括的に話し合う戦略経済対話を控えており、対中貿易赤字の拡大や人民元改革に対する批判を、対米大型投資でかわす狙いもあるとみられる。
中国が取得するのは議決権のない株式で、中国政府が近く設立する投資会社を通じて出資する。4年間は売却しない契約で、その後は1年で10億ドルずつ売却できる。
ブラッグストーンはニューヨーク株式市場で40億ドル規模の株式公開を予定しており、中国の投資会社は公開後、売り出し価格の95.5%に当たる金額で取得する見通し。
合意について、ブラッグストーンのシュワルツマン最高経営責任者(CEO)は「米中の資本移動拡大に向けた重要な第一歩になる」と述べた。米財務省報道官もロイター通信に対し、「戦略対話を通じて米金融サービスに今回のような新たな投資機会を創出するよう中国政府と協働する」と歓迎の意向を示した。
ブラッグストーンは自動車大手ダイムラークライスラーの北米部門クライスラー・グループの買収に名乗りを上げたほか、アジアでのM&A(企業合併・買収を展開)にも力を入れている。中国は人民元相場の為替管理のためドル買い介入によって外貨準備が世界最大規模に膨らみ、運用多様化が課題となっており、こうした両者の思惑が一致した。
米政府は米金融機関の進出拡大のため中国資本市場の開放と強く要求しており、今回の対米大型投資は、自由化の進展を印象付ける狙いもある。
日米経済摩擦のときもそうでしたが、ウォールストリートは、摩擦の利用してビジネスチャンスを拡大してきたのですよね。 本当に露骨。
投稿情報: 経済ニュースゼミ | 2007/05/21 16:20
経済ニュースゼミさん、コメントをありがとうございました。
大きな変動こそが、ビジネスチャンスだというのが、ウォールストリートの考え方でしたよね。
今回のG8財務相会合でドイツが提案したヘッジファンド規制に反対するのもそういうことなのだろうなと思っています。
投稿情報: walumono | 2007/05/21 22:50