なるほど「新憲法制定促進委員会準備会」というのは、日本会議議連のもとに設置された会議だったのか。
2004年に自民党がつくった「憲法改正草案大綱(たたき台)」にも、深く重なる内容である。
04年の靖国派前面型の「たたき台」、05年の日本経団連による海外派兵に限定した「基本問題」、05年の日本経団連案に譲歩(?)した「新憲法草案」、そして07年の再び靖国色全面型の「大綱案」。
改憲勢力内部にも、靖国史観の扱いについては統一できない動きがあるようである。
当然これには、アメリカと日本財界から、不安と警戒の声が出ることになる。
靖国派の突出が、改憲勢力の内部にいくつもの亀裂を入れずにおれないということである。
「靖国」派がめざす国家像とは? 日本会議議連 「新憲法大綱案」にみる(しんぶん赤旗、5月20日)
九条改定による「海外で戦争をする国」づくりだけでなく、国民の心や市民生活まで「靖国」派の価値観で支配しようとするもの―日本共産党の第四回中央委員会総会で志位和夫委員長が指摘したように、「靖国」派の野望を端的に示しているのが、「日本会議国会議員懇談会」(日本会議議連)が中心になってつくった「新憲法大綱案」です。そのめざす国家像は――。
自民・民主議員が合作
「大綱案」は、日本会議議連のもとに設置された「新憲法制定促進委員会準備会」が作成したもの。安倍晋三首相の盟友・古屋圭司衆院議員を座長に、自民、民主の「靖国」派議員で構成されています(名簿別項)。
同準備会が「新憲法の制定に向けて具体的な行動を開始することを決意し、その第一歩」としてまとめたものが「大綱案」で、「行動の指針および今後の議論の叩(たた)き台」と位置づけています。
天皇が中心の「国柄」
「大綱案」は、「前文」で「日本国の歴史や、日本国民が大切に守り伝えてきた伝統的な価値観など、日本国の特性すなわち国柄を明らかにする」ことを重視。「国柄」の中身として、天皇中心の国家像を押し出しています。
具体的には「日本国民が…時代を超えて国民統合の象徴であり続けてきた天皇を中心として、幾多の試練を乗り越え、国を発展させてきた」と歴史を描き、天皇絶対の国家体制を規定した「大日本帝国憲法」(明治憲法)の「歴史的意義」を明記するよう求めています。
「国柄」とは、戦前、「国体」と呼ばれた天皇中心の国家体制を言い換えた言葉。終戦時には、国民の生命・財産は顧みられず、「国体護持」が支配層の唯一の目標とされました。これでは、主権在民の原則は空洞化してしまいます。
天皇に具体的権能を
天皇の地位も、「象徴にふさわしい地位および権能を、憲法上、明らかにしなければならない」としています。「わが国の『元首』である」と明記し、外交文書や大使・公使の信任状を「発する」ことや、恩赦などを具体的な「権能」として付与することを求めています。
日本国憲法は、天皇に統治権を一手に集中させていた戦前の反省から、「国政に関する権能を有しない」と規定。国政から天皇を切り離しました。これを否定する考えです。
しかも、「大綱案」は、「日本国という歴史的共同体の始まりから連綿として続く世界に比類なき皇統を誇り」などとの表現で、戦前の「万世一系」の神話を引き継ぐ姿勢までみせています。また、昨年小泉内閣で話題になった女性天皇議論をけん制し、「皇位が皇統に属する男系の男子によって継承されるべきことを、憲法上、明記する」ことも盛り込んでいます。
9条2項を全面削除
九条改定についても、「大綱案」は、全面改定を主張。九条一項の「戦争放棄」については、海外での武力行使を可能にする「集団的自衛権の行使」が「明確になるような表現に改める」として骨抜きを図ろうとします。
また、「戦力の不保持」や「交戦権の否認」を定めた九条二項は、「全面的に削除する」とし、「防衛軍の保持」を明記。また、「防衛軍」が「国際社会の平和と安定」を口実に海外派兵ができる仕組みにしています。そのほか、「防衛軍」は「テロや大規模災害」「立憲的秩序維持」に対応するとし、治安行動を合憲とし、首相の「非常措置権」まで規定しています。
海外派兵や海外での武力行使の歯止めになってきた九条二項を削除し、一項まで骨抜きにすることで、「海外で戦争をする国」づくりをめざすものです。
国民に「国防の責務」
一方、国民には「国家非常事態に際して…『国防の責務』を規定する」と明記。将来の徴兵制や強制的な徴用に道を開いています。
また、「軍事裁判所の設置」を規定。国防機密をたてに国民を抑圧するシステムが狙われています。
人権抑圧・家制度復活
「大綱案」のもう一つの特徴は、人権を抑圧し、戦前の「家制度」を復活させようとしていることです。
具体的には「わが国の歴史、伝統、文化に基づく固有の権利・義務観念をふまえた人権条項を再構築」するとして、「人権制約原理の明確化」を掲げています。そこでは、「公共の福祉」に代えて、「国または公共の安全」、「公の秩序」、「他者の権利および自由の保護」などを列挙、国家の都合で国民の人権を制約しやすい仕組みにしています。
一方で、「祖先を敬い、夫婦・親子・兄弟が助け合って幸福な家庭をつくり、これを子孫に継承していくという、わが国古来の美風としての家族の価値」を「国家による保護・支援の対象とすべきこと」としています。戦前、家長の許可がなければ婚姻もできなかったことに示されるように、個人の人権・人格を抑圧する仕組みだった家制度の復活を狙っているのです。
公教育に国家が介入
さらに「大綱案」は、「次代を担う人材の育成が日本の将来を左右する重大問題であることにかんがみ、公教育の目標設定をはじめ、公教育に対する国家の責務を明記する」として、国家による教育への介入を合憲化。
また、「政教分離原則の緩和」を規定。「国家的・社会的儀礼や習俗的・文化的行事等の範囲内で国や地方公共団体が宗教的行事に参画することを可能にする」として、首相らの靖国参拝の合憲化を策しています。
「靖国」派は、日本の侵略戦争を「正しい戦争だった」と正当化するだけでなく、戦争当時の国のありようを「美しいもの」と思い込み、あこがれています。こうした特異な価値観を日本社会に持ち込み、おしつけようとしているのは重大です。そのために、一つは「教育再生」の名で子どもへの教育を通じて持ち込もうとし、最終的には憲法を改悪し、そこに盛り込むことで法的に確定させようとしているのです。
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「準備会」議員
「新憲法制定促進委員会準備会」の自民、民主議員は次のとおりです。
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座長 古屋圭司(自民党・衆院議員)、事務局長 萩生田光一(自民党・衆院議員)
衆議院 【自民党】赤池誠章、稲田朋美、今津寛、奥野信亮、加藤勝信、木原稔、高鳥修一、戸井田徹、西川京子、古川禎久、松本洋平、【民主党】松原仁、笠浩史、鷲尾英一郎、【無所属】平沼赳夫
参議院 【自民党】秋元司、有村治子、鴻池祥肇、中川義雄、福島啓史郎、【民主党】大江康弘、芝博一、【国民新党】亀井郁夫
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