自民党額賀氏と、民主党前原氏が「日米安全保障戦略会議」で、われこそが忠実なアメリカのしもべとばかりに、忠実なる軍事的下請けの売り込み合戦をしている。
こういう民主党に幻想をいだいてはいけない。
他方、政府間協議である「日米安全保障協議委員会(2+2)」では、「同盟変革」の名で、日米の従属的軍事一体化の道がさらに確認されている。
米軍基地再編の推進や、軍事機密の共有と保護強化のシステム建設などが確認されている。
日米安保戦略会議/「集団自衛権行使」競う/自民・額賀氏 “改憲前に憲法解釈で”/民主・前原氏 “武器輸出原則見直せ”(しんぶん赤旗、5月3日)
自民・公明の与党や民主党の国防族議員でつくる団体や米国のシンクタンクなどが主催する「日米安全保障戦略会議」が一日、ワシントンで開かれました。日本からは自民党の額賀福志郎前防衛庁長官と民主党の前原誠司前代表らが出席。海外での武力行使をも可能にする集団的自衛権の行使を要求するなど、タカ派発言を競い合いました。
ミサイル迎撃で
額賀氏は、米国向けに発射された弾道ミサイルに対し、日本は迎撃できないとしている政府の今の憲法解釈について「放置していいのか」と強調。「憲法を改正し、集団的自衛権を行使できると明らかにすべきだが、改正までの間は、憲法解釈を見直すことにより、行使を認めるべきだ」と主張しました。
前原氏は、額賀氏が挙げた「ミサイル防衛」の例のほか、朝鮮半島有事の際に、米軍の武力行使と一体化する形での後方支援ができないとされている現行の憲法解釈も「非現実的だ」と非難しました。
また、海外で自衛隊が活動している際、「他国の艦船や他国の要員を守れないという今の憲法解釈もおかしい」と述べ、「望むべきは憲法改正をして、国民にわかりやすい説明が必要だが、いますぐ解釈見直しを行い、行使できる環境を整えるべきだ」と求めました。
額賀氏と前原氏は、これまで政府でさえ建前としてきた武器禁輸原則の緩和でも、声をそろえました。
例外とするケースを拡大しながらも、基本的には、あらゆる国への武器輸出を禁じている今の政府の原則について、額賀氏は「すべてのケースに適用するしゃくし定規的な運用を改める」ことを要求。輸出先の国が、武力紛争の当事者ではなく、大量破壊兵器の拡散を行っていないケースであれば、禁輸原則を緩和するよう求めました。
前原氏も、「日本の(自衛隊の)装備をより現代化していくための足かせになっている武器輸出原則の見直しは、政治の責任として行うべきだ」と述べました。
トマホークでも
このほか額賀氏は、他国の弾道ミサイル基地を攻撃することについて「自衛権の範囲内だ」と強調。そのために、「巡航ミサイル・トマホークのような精密誘導兵器が必要かどうか議論し、合理的結論を出さなければならない」と求めました。
一方、前原氏は冒頭、「今は野党だが、安全保障政策は現実路線」「外交安全保障の基軸は日米同盟関係だ」と強調。「とにかく日米同盟関係の質を高める。野党の立場から、日米同盟強化に向けて努力していきたい」と表明しました。
「同盟変革」強化を確認/日米安保協後に共同会見(しんぶん赤旗、5月3日)
【ワシントン=山崎伸治】日米の外務、軍事担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2プラス2)が一日昼(日本時間二日未明)、ワシントンの国務省で開かれました。終了後の記者会見で久間章生防衛相は、日米の「同盟変革」に向けた取り組みが重要だと指摘。「米軍再編等への取り組みをいっそう強化していく」と表明しました。
麻生太郎外相は、北朝鮮による核実験や中国による衛星破壊実験など「地域の情勢は不安定、不確実な状況だ」と指摘。そのもとで「米国の日本防衛と抑止に対するコミットメントを再確認できた」と評価しました。
米軍再編をめぐっては麻生氏が、二〇〇八年夏に予定されている米海軍原子力空母の横須賀配備について、「円滑に実現すべく、地元の安全・安心対策をはじめ、引き続き日米で協力する」と表明。久間氏は米海兵隊普天間基地の移設・返還など「一年前に合意された米軍再編を着実に実施する決意が四閣僚の間で再確認された」ことが「本日の何よりの成果だ」と強調しました。
ゲーツ国防長官は防衛省「昇格」に祝意を表明。「同盟変革で前進の道筋にあると確信している」として、弾道ミサイル防衛での日米協力の進展を評価しました。記者からの質問で、安倍政権が集団的自衛権行使に向けた憲法解釈の見直しに着手したことを「国内問題」だと断りつつ、「この問題を取り上げた(安倍首相の)勇気をたたえたい」と述べました。
ライス国務長官は、日米同盟が「北東アジアの安全と繁栄だけでなく、地球的規模の安全保障にも不可欠の役割を果たしている」と指摘。北朝鮮の核問題については、「忍耐は無限ではない。北朝鮮が引き続き、二月十三日の(六カ国協議の)合意に従うことを公に確認しており、その意思が実行されると期待する」と表明しました。
2プラス2共同文書/「米国と一緒に戦争できる国」へ/「情報共有」で加速(しんぶん赤旗、5月2日)
解説
一年ぶりに開催された日米安保協議委員会(2プラス2)の共同文書は、〇五年二月から昨年五月にかけて行われた在日米軍再編合意の進展状況と、「ミサイル防衛」(MD)網配備の到達点を確認した上で、今後の課題を挙げるという構成になっています。
重大なのは、日米の軍事的融合・一体化を新段階に引き上げるため、軍事情報の共有や保護のための措置を挙げていることです。
共同文書は冒頭、北朝鮮の核実験を非難し、米国の核能力のいっそうの展開を意味する「拡大抑止」の重要性に言及。米国の核・非核の打撃力が「日本の防衛に対する米国のコミットメントを裏付ける」ことを再確認した上で、「秘密を保護するためのメカニズムの強化」に言及しています。
具体的な措置としてあげているのは「軍事情報包括保護協定」(GSOMIA)と言われる協定です。共同文書は同協定について、装備や軍事作戦の情報を共有するため、「情報保全のための共通の基礎を確立する」ものだと述べています。締結されれば、米国が提供した軍事秘密情報の流出防止のため、米国と同程度(死刑を含む)の、刑事罰を含む厳しい措置が想定されます。政府関係者だけでなく戦争政策を追及する国会議員や国民が罰則の対象になりかねません。
日米のMD網配備を円滑に進めるための「包括的な情報共有ロードマップ」策定の合意も、新たな動きです。
在日米軍再編では、米空軍横田基地(東京都)への空自航空総隊司令部の移転や日米共同統合運用調整所の確立で合意。在日米空軍司令部を通じ、ハワイの米太平洋空軍司令部などと、弾道ミサイル情報を共有する枠組みの整備が進んでおり、これを加速させようというものです。
米国との間で高度な軍事情報の共有によって、集団的自衛権の行使や海外での共同作戦が実質的に可能になります。アーミテージ元米国務副長官は「米英同盟を日米同盟のモデルにすべきだ」と提起しましたが、情報共有の面でも日米同盟を米英同盟なみに引き上げようというもの。
しかも、イージス艦の情報漏えい事件をはじめ、自衛隊からの軍事情報漏えいが相次いでいることから、防衛省などには危機感があります。
今回の2プラス2で、「軍事情報保護」の重要性を確認することで、「米国と戦争できる国」づくりを加速させようという狙いです。(竹下 岳)
コメント