兵庫県の中小企業向け融資の滞納額が増えているという。
担保の評価額が民間とかけはなれているとの指摘もあるが、貸し付け基準を民間と同じくするなら、県の融資事業にはならない。
とはいえ、事態は、たちあがる諸事業に向かう消費をどう高めるかという根本問題の解決を求めている。
その努力の当否を抜きにして、融資制度のあり方だけを議論すれば、結局、さらに中小企業支援を削ることになる。
滞納48億円、14億回収不能に 中小企業向け融資(神戸新聞、6月16日)
兵庫県の中小企業向け融資制度「中小企業高度化資金」の滞納額が約四十八億円に上っていることが十五日までに、県監査委員の行政監査で分かった。融資先の事業が破たんするなどして、回収が不可能になった欠損額は累計で十四億円を超えていた。監査委員は、県の担保評価の甘さが債権回収率の低下につながっていると指摘し、改善を求めた。
報告によると、資金の債権残高は二〇〇五年度末で約五百四十四億円。期限を過ぎても返済がない「収入未済」は約四十八億円で、回収不能となった「不納欠損」は〇五年度だけで約七千四百六十九万円だった。不納欠損の累計額は十四億円を超えるという。
近年、滞納にあたる収入未済額は増加しているが、その九割以上は前年以前からの繰り越しで、繰り越し分の回収率は約4%にとどまっている。滞納分は契約上の時効の五年を過ぎると回収不能になるが、県は返済を猶予するなどして時効を先送りしている。担当の産業振興局は「大口の融資先が破たんすれば、数十億円が回収不能になる可能性もある」と話す。
また、県は担保を評価する際、債務者が事業で取得した建物・土地には取得額の90%で抵当権を設定し、既存の土地も、固定資産税評価額ではなく、一般的にそれより高くなる基準地価から算定している。
監査委員は「これらの評価は金融機関の担保評価とかけ離れており、担保を処分しても債権を回収できない恐れがある」として、評価のあり方の再検討を求めた。
同局は「産業振興が目的なので、貸し付け条件を厳しくすればいいというものでもない。債権回収に最大限努力しながら、融資先の経営状況をチェックし、指導を重ねたい」と話している。(森本尚樹)
中小企業高度化資金 中小企業経営者が共同で新事業に取り組み、土地・建物・設備などを取得する際、資金の最大80%を低利で融資する。約3分の2は独立行政法人中小企業基盤機構、約3分の1は県が拠出。工業団地やショッピングセンターの建設などを想定し、20年間で返済する。災害復旧や中心市街地活性化法などの指定を受けた事業は無利子となる。
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