久間氏の原爆投下「しょうがない」発言についてである。
そこには、靖国派内閣の一員でありながら、原爆投下を大量の非戦闘員をふくむ無差別殺戮の「戦争犯罪」だと指弾できない、従米靖国の限界があらわれてもいる。
発言の背景に戦後体制脱却 安倍政権の雰囲気反映か(中国新聞、7月3日)
原爆投下を「しょうがない」と発言し、三日辞任に追い込まれた久間章生防衛相。発言の背景には「戦後レジーム(体制)からの脱却」を唱え、核武装論ですらタブーではなくなった安倍政権の雰囲気が色濃く漂う。安倍晋三首相の発言が問題視された従軍慰安婦問題、沖縄戦の集団自決の強制記述に修正を求めた教科書検定。「根底には共通の空気が流れている」と専門家は指摘する。
政権発足直後の昨年十月、北朝鮮の核実験をきっかけに、自民党の中川昭一政調会長はテレビ番組で「核があることで、攻められる可能性が低くなる」などと述べ、日本の核保有をめぐる議論の必要性を訴えた。麻生太郎外相も「議論まで封殺するのはいかがか」と発言。党内からは非核三原則見直し論も飛び出した。
「久間発言は核武装論や従軍慰安婦、集団自決などの問題と同様に『戦後レジームからの脱却』を象徴する発言だ」。大東文化大の井口秀作教授(憲法)は、こう分析する。
従軍慰安婦問題について安倍首相は「狭義の強制性」はなかったと発言し、米下院では日本政府に謝罪を求める決議が可決された。
教科書検定では、沖縄戦で日本軍が住民に集団自決を強制したとの記述が修正を求められ、沖縄県ではすべての市町村議会と県議会で、検定意見の撤回を求める意見書が可決された。
井口教授は「自民党議員はこれまで、国民やアジアの国々の反発を意識して発言を抑制してきた。口に出せるようになったことが、まさに『戦後レジームからの脱却』だ」と指摘する。
「久間発言は、国民の核への感情が薄れてきた表れではないのか」と危惧(きぐ)するのは広島市立大広島平和研究所の浅井基文所長。
「国民は、非核三原則と核の傘の両方をいつの間にか受け入れている。国民保護計画も核攻撃を前提にしており、このままでは戦争をする国に進んでしまう」
浅井所長は「単なる大臣の失言問題として矮小(わいしょう)化する話ではない」と指摘している。
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