インドネシアでの安倍首相演説は、日本とアセアンの価値観の共有をいい、人権尊重を語るものであったらしい。
この国際状況の中で、「人権尊重」を平然と口にする神経はすばらしい。
他方、戦後の日本とインドネシアの関係を、岸信介が築いたと、無反省に語るところもものすごい。
インドネシアは「賠償から商売へ」のひとつの拠点とされ、またその軍事独裁政権を支えることに日本政府は多額の「援助」を行ったはずだが。
ASEANとの協力を強調 首相、ジャカルタで演説(朝日新聞、8月20日)
安倍首相は20日、ジャカルタ市内のホテルで演説し、今後の東南アジア外交の基本方針を示した。民主主義や人権尊重など、日本と共通の価値観を持つ東南アジア諸国連合(ASEAN)の発展が「東アジアの協力の推進力」となり、「アジア、日本の利益である」と表明。ASEAN加盟国間の格差是正に向けた支援や、経済協力を拡大する方針も表明した。
演説は「日本とASEAN――思いやり、分かち合う未来を共に」との題名で、インドネシアの民間シンクタンク主催の会議で行われた。
首相は「日本はASEAN諸国、諸国民と『ケア・アンド・シェア(思いやりと分かち合い)』の精神で共に歩みたい」としたうえで「問題を共有し、解決を共に模索する関係を結ぶ段階に私たちは突入した」との認識を示した。
また、ASEANがより強い共同体を目指し新たな憲章づくりを進めていることを「民主的諸価値の強化、法の支配の維持といった基本的価値に対する真摯(しんし)な取り組み」として高く評価した。
今後の具体的な取り組みとして、首相は、経済連携協定(EPA)の締結を基盤にした経済関係の拡大▽ASEAN域内の格差是正のため、カンボジア、ラオス、ミャンマー(ビルマ)、ベトナムへの支援強化▽経済発展を支える平和構築のための専門家育成の三つを挙げた。
安倍首相演説、「ASEAN共同体」の実現を支持(読売新聞、8月20日)
【ジャカルタ=中沢謙介】安倍首相は20日午後(日本時間同日夕)、ジャカルタ市内で、東南アジア諸国連合(ASEAN)に対する日本の基本政策について演説し、2015年までの設立を目指す「ASEAN共同体」の実現を支持し、協力する考えを表明した。
首相は、ASEANが掲げる「Care and Share」(互助と共有)の精神が、日本人の伝統的考え方とも合致するとの見方を強調し、民主主義や法の支配といった共通の価値観のもと相互協力関係を深めるべきだと訴えた。
その上で、ASEAN共同体の設立について、「日本国民が大切に思う基本的価値を旗印に、新しい門出を遂げようとしていることに静かな興奮を覚える」と述べ、支持を表明。また、同共同体の最高規範となる「ASEAN憲章」起草に向けた議論を、「民主的諸価値の強化や法の支配の維持、人権の尊重といった基本的価値に対する真摯な取り組みを語っている」と評価した。
一方、ASEAN域内の格差問題については、<1>日本とASEAN諸国の経済連携協定(EPA)のネットワークの活用<2>発展の遅れているメコン川流域国への支援――などを通じ、解決に向けた協力を行うことを表明した。
今回の演説は、今年がASEAN設立40周年、日本の対ASEAN政策を示した福田赳夫・元首相の「福田ドクトリン」表明から30年の節目にあたることを意識したものだ。首相は「50年前、祖父・岸信介が日本の首相としてジャカルタを訪れ、両国関係の最初の礎を定めた」とも述べ、自身の思い入れも吐露した。
これに先立ち、首相はユドヨノ大統領と大統領府で会談し、京都議定書以降の新たな地球温暖化対策での協力や、マラッカ、シンガポール両海峡での海上交通路(シーレーン)の安全確保での協力などを盛りこんだ共同声明を発表した。また、両首脳はエネルギー資源の安定供給に関する枠組み作りを明記した日インドネシアEPAに署名した。
両首脳は会談後、記者会見し、首相は「地域協力や国際社会への取り組みを強化する」と述べた。大統領は北朝鮮に関し、「核問題の平和的解決と拉致問題の解決を願う」と語った。
【首相演説要旨】「思いやり、分かち合う未来を共に」(産経新聞、8月20日)
安倍晋三首相の政策演説「思いやり、分かち合う未来を共に」の要旨は次の通り。
日本はASEAN諸国、諸国民と「ケア・アンド・シェア」(思いやりと分かち合い)の精神で共に歩む。アジアと世界が直面する挑戦に対し、インドネシア、ASEANの皆様には、ぜひわれわれ日本人と一緒に立ち向かっていただきたい。
ASEANの各国指導者は、「民主的諸価値の強化」「法の支配の維持」「人権の尊重」といった基本的価値に対する真摯(しんし)な取り組みを語る。日本国民が大切に思う基本的価値を旗印に掲げ、「One ASEAN」として新しい門出を遂げようとしていることに、静かな興奮を覚える。
ASEANには、東アジアサミットなど地域協力枠組みの「運転席」に座り続け、東アジア協力の推進力になってもらわなくてはならない。ASEANの発展はアジア、日本の利益だ。
経済連携協定(EPA)のネットワークを活用し、ASEAN諸国と深く幅広い経済関係をつくりたい。日本政府はメコン流域諸国の安定的成長のため助力を惜しまない。平和がなければ経済の発展はない。
私は「クールアース50」(美しい星50)という新しい地球環境防衛策を世界に提案した。ASEANの皆様も、2050年までに地球温暖化を止める計画の力強い一翼を担っていただきたい。
日本とASEANには、名実ともに相互補完的な関係が成立している。私たちを見舞う問題を一緒に解くために互いを必要とする「問題を共有し、解決を共に模索する」関係を結ぶ段階にすでに突入した。(ジャカルタ 杉本康士)
コメント