「毎日新聞」から、掲載紙が届いた。
「記者が行く:07夏・平和を考える 神戸女学院大生、同じ女性として /兵庫 ◇同じ女性として国の過去直視 神戸女学院大生、韓国の元従軍慰安婦から体験談」(毎日新聞、8月11日)
神戸女学院大(西宮市)の学生らが、韓国の元従軍慰安婦に直接話を聞いた経験をつづった「『慰安婦』と心はひとつ 女子大生はたたかう」(かもがわ出版)を出版した。ほとんどの学生がゼミで学ぶまで慰安婦の存在を知らなかったが、被害を受けたハルモニ(おばあさん)の肉声に触れ、手を握り合うことで、自らの国の過去に初めて目を向けた。「同じ女性として許せない行為。元慰安婦の方がどういう思いで生きてきたかを知ってほしい」。4年の学生らは、就職活動の合間に高校などで講演を続けているという。【井上大作】
◇本を出版、高校で講演
同大文学部の石川康宏教授(50)のゼミ生9人。昨年4月から慰安婦を取り上げた文献を読み、映像資料をいくつも見た。ある学生の親は「政治的なテーマを学ぶと就職活動の妨げになる」と心配したという。しかし学生らは、熱心に受講、靖国神社の戦史博物館「遊就館」も訪れた。
昨年9月、韓国・ソウルを訪れた。元慰安婦が共同生活する「ナヌム(分かち合い)の家」に宿泊し、慰安婦が体を洗うための容器や配給された避妊具の展示を見た。慰安所を再現した部屋に入ると、気分が悪くなって倒れた学生も出た。高齢の被害者から証言を聞くと、ある学生は「自分の祖母の姿に重なった」と涙を流したという。
帰国のため空港に向かうバスの中で、旅行の感想を語り合った。「証言の張りつめた雰囲気にはとまどった。でも(ハルモニは)手を握ってくれて、抱いてくれた。胸が締め付けられる思いがした」「こんな小さな人につらい思いをさせたのかと本当にショックだった。日本で何が自分にできるかをしっかり考えたい」
「心はひとつ」は、帰国後の座談会の様子を中心にまとめられた。小谷直子さん(21)は、「やむ得ない戦争」だったと言う父と何度も話し合ったといい、「突き詰めて学ぶことで『日本が起こした戦争は誤りで、アジアの人たちは謝罪されるべき人たちなんだ』と自信がついた。小学生の時に映画『火垂るの墓』を見て、日本はこんなひどいことをされたとショックを受けた。でも加害の実態を知るきっかけは少なすぎる」と記した。
石川教授は04年から慰安婦をテーマにゼミを続け、これまでにも2冊をゼミとして出版してきた。元慰安婦が描いた絵の入った「『慰安婦』と出会った女子大生たち」(新日本出版社)はナヌムの家でも販売されている。
慰安婦問題に否定的な文献も取り上げるという石川教授は「軽率に良い悪いを判断するのではなく、学生が自分で調べ、考え、何があったのか事実を確認することが必要」と力を込める。
ゼミの活動が広く知られるにつれ、学生らによる講演は20回ほどを数えるようになった。渡辺綾子さん(22)は、歴史認識を巡って参加者と論争することもあるが、「実体験が自分の中に信じられるものを生んだ。インターネットの情報などしか知らない人にはそれだけをうのみにしてほしくない」と話す。「小さな市民の願いでも、それが伝われば国が変わるんじゃないかと思うようになった」と希望を語っていた。
〔阪神版〕毎日新聞 2007年8月11日
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