原油高騰をもっぱら「需要拡大」から説明し、「日本経済の停滞」をいいながら、今年の重点課題を国内消費力を削減する消費税率のアップだとする。
先が見えているようには思えない。
【新春インタビュー】御手洗冨士夫・日本経団連会長に聞く(読売新聞、1月4日)
御手洗冨士夫・経団連会長 混迷する政局をはじめ、資源価格高騰や米サブプライムローン問題など、不透明感の漂う日本経済。日本の経済・産業界を代表するトップリーダーたちは、今年をどう展望しているのか。第1回目は日本経団連の御手洗冨士夫会長。国内外の政治・経済状況と成長への処方箋(せん)を聞いた。
--昨年の世界経済を振り返ると
「ひと言でいえば、激動の年だった。米国の低所得者向け住宅ローン(サブプライムローン)の焦げ付き問題があり、米国発の金融不安が世界の株式市場に影響した。一方で、地球規模で見れば、中国など新興国における年10%前後の経済成長が全体の景気を牽引(けんいん)し、世界では年平均5%強の高度成長が続いた。ただ、需要拡大で原油価格が高騰し、経済にもじわじわ影響を与えつつある。また、日本経済には危機感を感じている」
--危機感とは
「日本経済の停滞感だ。当初平成19年度は実質2・0%、名目2・2%の見通しだった経済成長率が、実質1・3%、名目0・8%に下方修正された。経団連会長に就任以来、18カ国をまわり、各国の首相や経済閣僚、経済人と意見を交換したが、みな自国の競争力強化に狂奔している。世界の成長が加速する一方、日本の20年度の成長率は実質2・0%に留まり、このままでは国際競争から取り残されるという危機感が強い」
--国内では政治の混乱が心配される
「社会保険庁の年金記録問題が国民に不安を与え、参院の第一党が衆院と異なる『ねじれ現象』が起き、政治が停滞した。テロ特措法にからむ給油問題や、防衛省汚職など重い問題が多く、今年ほど国民主体、国益本意の政治が真剣に求められる年はない。EPA(経済連携協定)の進展や、研究開発税制拡充など成果もあったが、さらに進める必要がある」
--経団連が今年、重点的に取り組む課題は
「第1に先延ばしになった税財制の抜本改革、特に消費税の税率引き上げは待ったなしだ。21年度には基礎年金の国庫負担割合が3分の1から2分の1になり、税財政の一体改革が避けて通れない。社会保障問題も未納率が40%を超え、人口減少下でシステム自体が立ち行かなくなった。財源と持続性が保障され、国民にわかりやすい新制度が必要だ。経団連は全額税方式も踏まえ、広い選択肢から議論すべきだと提言している」
--初夏のG8洞爺湖サミットを控え、環境への対応も大きな課題だ
「経団連でも4月16、17の両日、東京で『G8ビジネスサミット』を行う。環境問題とイノベーション(技術革新)、アジア経済圏の問題と3テーマで議論する。環境問題は、中長期的な枠組みづくりの提言をまとめ、洞爺湖サミットの議論の一助にしてもらいたい」
--温暖化防止に日本が世界に訴えるべき点は
「全員参加の仕組みが最優先だ。その上でCO2削減と環境問題はイノベーション、技術でしか解決できない問題だと強調したい。欧州などが進める排出権取引は、直接的、抜本的な削減策にならない。日本は環境の最先進国として、世界が協力して革新的なイノベーションを生み出す主導権を取る必要がある」(内田博文)
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