大企業支援の財源づくりを目的とした、国民への「自己責任」の強制が、貧困とワーキングプアを拡大している。
その攻撃による生活破壊が、いかにも過酷な形であらわれている世帯のひとつが「母子家庭」。
母子家庭の母から職を奪い、さらに社会保障給付さえもを減らしていく。
参議院選挙は、この人災に加担するのではなく、この人災を減少させる道を開くものとならねばならない。
07年度版「母子家庭白書」を読む(上) 80%が生活「苦しい」 貧困広がる母子世帯(しんぶん赤旗、7月19日)
就業の半数は臨時やパート
「いまでも今日どうやって生活しようかと考える毎日です」「子どもにこれ以上我慢させられない」――。母子家庭から切実な声が上がっています。2007年度版「母子家庭白書」(厚生労働省)は、こうした母子家庭の実態、今後の施策をどう示しているでしょうか。
不安定雇用拡大策の影響もろに
白書の正式名称は「母子家庭の母の就業の支援に関する年次報告」です。低所得の母子家庭に支給される児童扶養手当の大幅削減とセットで、2003年度からスタートした「自立」促進のための就業支援の施策と実施状況を報告しています。
白書からは、就業支援は不十分で、生活が逼迫(ひっぱく)している姿が浮かび上がっています。
特徴的なのは、子育てしながら家計を担う母子世帯の母の多くが、非正規雇用に追いやられ、貧困が広がっていることです。
母子世帯は122万5400世帯(03年)。母の83%が就業しています。そのうち臨時・パートが49%、常用雇用は39%です。1998年にはそれぞれ38%、51%でした。政府・財界がすすめる不安定雇用拡大策の影響をまともに受けていることがわかります。
社会保障給付金が「命綱」
児童扶養手当の受給者は、98年から増え続け、この2月は98万7450人になり、過去最多です。所得制限(年収365万円未満)があるにもかかわらず、この1年で約5万人増えています。平均所得(05年)は233万4000円、全世帯平均の4割です(グラフ1)。平均所得には、児童扶養手当や生活保護なども含まれており、所得の14・6%を占めています。これらの社会保障給付金が「命綱」であることが示されています。
暮らし向きは「大変苦しい」(53%)、「やや苦しい」(27%)の計80%が「苦しい」と感じています(グラフ2)。03年調査と比べると、「大変苦しい」が12ポイント、「苦しい」の合計が7ポイントそれぞれ増えており、貧困が広がっています。
就業支援というけれど…
自、公、民が児童扶養手当を削減
02年の国会で、自民、公明、民主の各党は「自立のための就労支援」をするといって、児童扶養手当の大幅削減を行いました。支給から5年たったら最大で半分まで減らすなどの改悪で、減額は来年度から始まります。当時の坂口力厚生労働大臣は、急増する母子家庭の「自立の促進」が重要な課題だと強調。「福祉から就労へ」の考え方を踏まえ、「きめ細かな福祉サービスの展開と自立、就労の支援に主眼を置いた総合的な母子家庭対策を推進」するとのべました。この約束は果たされているでしょうか。
白書は、就業支援のメニューと到達をならべ、進んでいると強調します。しかし、相談や講習会、情報提供を行う母子家庭等就業・自立支援センターには、制度開始の03年4月から06年12月までにのべ14万件余の相談が寄せられましたが、就業はのべ1万3000人弱。講習会参加者のべ12万人のうち、就業はのべ4000人余だけです。
個々の事情に応じて母子自立支援プログラムを作り実施する自治体は24%にすぎません。
事業主が母を有期雇用から常用雇用に移行し6カ月以上雇用した場合に出される常用雇用転換奨励金(1人あたり30万円)は、制度開始以来の3年8カ月間に、たった92件支給されただけです。
母子世帯の完全失業率は7%
子育て中の女性の再就職支援の目玉として、子ども連れで来所でき、担当者制で就職支援をするとうたって設置されたマザーズハローワークも、全国でわずか12カ所設置されているだけです。
06年の母子世帯の完全失業率は7%です。一般世帯の4%より著しく高く、深刻です。就業支援は不十分で、当初の国会答弁からほど遠いことは明らかです。
にもかかわらず政府は、「母子家庭の母の就業の支援に関する特別措置法」(03年制定、07年度までの時限立法)にもとづく、母子福祉団体への受注増などの配慮を、来年3月までで終えようとしています。(日本共産党女性委員会事務局 中村 万里)(つづく)
07年度版「母子家庭白書」を読む(下) いくら働いても低賃金 児童扶養手当充実こそ(しんぶん赤旗、7月20日)
◆福祉が自立阻害!?
「母子家庭白書」は今年度の施策に、初めて「基本的考え方」の項を設け、「成長力底上げ戦略」にそって母子家庭への就業支援をすすめると強調しています。同戦略は、公的扶助(福祉)が経済的自立を阻害するという考え方に立っています。
しかし、日本の母子家庭は福祉に依存しているために「自立」できないわけではないことは、母の83%が働いていることからも明らかです。就業率は、イギリスやドイツの4割、スウェーデンの7割と比べても高率です。問題は、いくら働いても低賃金で、十分な収入が得られないことです。
厚労省が所管する国立社会保障・人口問題研究所の研究報告書も、「日本では福祉と就労が二者択一の代替関係にあるのではなく、児童扶養手当と就労は補完関係にある」と指摘。全体的な雇用情勢が改善しない状況での給付削減は「『自立』促進につながらないばかりか、母子世帯の子どもの経済状況を悪化させる恐れがある」と警告しています。
◆責任問われる自公民
日本共産党の志位委員長は衆院予算委員会(2月13日)で、この研究報告書を紹介しながら「重く受け止めるべき結果ではないか」と質問。「『ワーキングプア』の母と子の暮らしを引き上げることこそ本当の公平性だ」と迫りました。
白書は、母子家庭の就業と生活は改善していないことを示しており、志位委員長の指摘の正しさを裏付けています。今後、「成長力底上げ戦略」による福祉切り捨ての立場からの施策を続けるのでは、母子家庭は困窮するばかりでしょう。
労働法制の相次ぐ改悪で非正規雇用を大幅に増やしながら、わずかばかりの「就業支援」と引き換えに、児童扶養手当の大幅削減を決めた自民・公明・民主の各党の責任が、改めて問われます。(日本共産党女性委員会 事務局 中村 万里)
--------------------------------------------------------------------------------
日本共産党の各分野の政策
「母子家庭の生活と就労支援を強めます」から
児童扶養手当制度の改悪を中止し、額の引き上げと対象の拡大をはかります。生活保護の母子加算の削減を中止し、支給年齢を18歳までに戻します。正規雇用の拡大や、資格取得・技能訓練のための経済的保障など国の援助額を引き上げます。
最近のコメント