2007年版通商白書についての記事である。
FTA・EPA締結での日本の立ち遅れ、東アジア市場の重要性と環境整備の必要(包括的EPA)、規制緩和の一層の拡大による対内投資の拡大などが注目されている。
米欧とのEPA交渉準備を 19年版通商白書(産経新聞、7月10日)
経済産業省は10日、平成19年版通商白書を閣議に提出し、了承された。自由貿易協定(FTA)を柱とした経済連携協定(EPA)について、米国や欧州連合(EU)といった巨大市場国・地域と交渉開始に向けた準備を進めていく方針を盛り込んだのが特徴だ。
FTA締結競争が加速する世界的潮流に乗るのが狙い。既に経産省は米、EUとそれぞれ、EPA交渉の前段となる民間レベルの共同研究を9月をめどに始める方向で検討している。白書はこうした取り組みを後押しすることになる。
白書は「世界では各国間でFTA交渉が活発化しつつある」と指摘。その上で「米、EUを含め大市場国・地域と(のEPA締結を)将来課題として検討していく。可能な国・地域から(民間研究をはじめとした)準備を進めていく」と明記した。
また、白書は対外直接投資が世界的に増える中で「ドイツや英国、中国などは(それぞれ)投資協定を100前後締結しているのに対し日本は11しか結んでおらず、大きく立ち遅れている」と懸念を表明。「EPAやFTA交渉をしない場合でも投資協定締結を積極的に進めることが重要」と提言した。
東アジア諸国と早期EPA締結を・通商白書(日経新聞、7月10日)
甘利明経済産業相は10日の閣議に2007年版の通商白書を提出した。中国や東南アジア諸国連合(ASEAN)など東アジア諸国は高い経済成長を続けており、世界経済への影響力も強まっていると指摘。日本は早期に東アジア諸国・地域との経済連携協定(EPA)を締結し、東アジアが一体となった経済圏を構築すべきだと強調した。
白書は日中韓、豪州、インド、ニュージーランドにASEANを加えた東アジアの国内総生産(GDP)の合計が、05年に世界全体のGDPの約28%(1980年は22%)に高まったと分析。日本企業の東アジアでの現地販売額は04年までの9年間で2.4倍に拡大し、消費市場としての魅力も増しているとした。
ただ、中国やインドネシアなどで事業をする日本企業からは「投資にかかわる法制度が未整備」「知的財産権の保護が不十分」などの苦情が多いとも指摘。東アジア全体をカバーするEPAを結び、投資環境を整える必要があると強調した。
「貿易投資立国」を提言、07年版通商白書が閣議決定(読売新聞、7月10日)
甘利経産相は10日、「2007年版通商白書」を閣議に報告し、了承された。
白書の副題は「生産性向上と成長に向けた通商戦略」。貿易を拡大させるとともに、海外への工場進出などの対外直接投資、海外企業を呼び込む対内直接投資も同時に増やし、「貿易投資立国」を目指すべきだと提言した。
東アジアで市場統合の動きが強まっていることを受けて、各国が域内で生産を分業したり、製品を相互供給したりすることも強化すべきとした。企業は知的財産権を保護する措置などを取りながら、国内と東アジアの拠点で研究開発の分業も進めるべきだと強調している。
さらに、東アジア各国に加え、中東諸国を始めとする資源保有国、米国・欧州連合(EU)など大規模な国・地域との経済連携協定(EPA)を実現させる必要があると指摘した。
一方、欧米では金融や運輸などのサービス産業が国境を超えて事業を広げているのに対し、日本は大きく立ち遅れていると分析。日本のサービス産業が海外市場へ進出するために、IT(情報技術)を活用して生産性を高めていくことを重要課題に挙げた。
さらに、国内市場に海外からの投資を呼び込むには、大幅な規制緩和を実施すべきと提案した。
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