ASEANが、日本との経済連携協定で大枠合意し、EUともFTA交渉開始の合意をつくったという。
いずれもASEANからすれば「工業先進国」との関係自由化の推進となるが、それは雇用と技術を獲得し、輸出市場を確保していくことにもなる。
これが何らかの力による強制ではなく、双方の合意のもとに進んでいるところに、かつてのODAや制裁をテコとした関係とは異なる「交流」の姿がある。
経済連携協定、日本とASEANが大枠合意・経済相会合(日経新聞、5月5日)
【バンダルスリブガワン(ブルネイ)=野間潔】日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は4日、ブルネイで経済相会合を開き、経済連携協定(EPA)締結に向けて大枠で合意した。貿易自由化について、日本が貿易品目及び輸入額の92%、ASEAN主要国が同90%でそれぞれ10年以内に関税を撤廃することを確認。8月までに具体的な自由化品目のリストを作る。投資・サービスの自由化も含め11月の首脳会合でEPA署名を目指す。
ASEANは撤廃する品目・額の上積みに向けた交渉枠を求めており、最終的に日本が92%を超えて撤廃する可能性もある。大枠合意では自由化する具体的な品目は定めず、8月までに決めることにした。日本はコメなど農産物の一部を除外品目とする見通しだ。
ASEANは加盟国で経済水準が異なるため、タイなど先行加盟6カ国は貿易品目・輸入額の90%について、10年以内に関税を撤廃。ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの後発加盟4カ国も90%の撤廃を目指すが、時期などは今後調整する。
日本とASEAN 10年以内に関税撤廃 鉱工業品など9割で合意(北海道新聞、5月5日)
【バンダルスリブガワン4日共同】日本と東南アジア諸国連合(ASEAN)は四日、ブルネイで経済閣僚会議を開き、経済連携協定(EPA)の柱となる貿易自由化交渉で大筋合意した。鉱工業品など輸入額全体の約90%で、双方が関税を十年以内に撤廃する。EPAは投資やサービス分野を含み、交渉全体を八月に終えて十一月に署名、二○○八年中に発効する見通し。
地域連合とのEPAは日本にとって初めてで、人口五億人強のASEANとの経済統合が前進する。日本が提唱する東アジア・大洋州地域を網羅する広域EPA構想にも弾みがつきそうだ。
日本から出席した甘利明経済産業相は会議終了後に記者会見し、「今回の合意でASEANとのEPA交渉は山は越えた」と強調した。
ASEANとのEPA交渉は○五年四月に開始。会議では貿易自由化交渉の対象約五千二百品目のうち、日本は92%、ASEANは90%の関税を十年以内に撤廃、残り約10%については関税の削減または撤廃の例外品目とすることで合意した。日本は残りの8%のうち、7%については関税削減、1%は例外品目とする。
個別品目の取り扱いを八月までに決めることも一致。ASEANは自動車や鉄鋼の関税を段階的に撤廃、日本はコメや砂糖、乳製品など農産品を例外品目とする方向だ。
日本企業がASEANで製品をつくり、域内の他国に輸出する場合、無税になるケースが大幅に増える。例えば現在、日本企業がデジタル家電製品の部品をタイに送り完成品にしてマレーシアへ輸出する場合にかかる高率関税がゼロになる。
ただ、経済力が弱いラオス、ミャンマー、カンボジア、ベトナムの四カ国については関税撤廃の猶予策を検討する。
日本はASEAN十カ国のうちシンガポールなど有力六カ国と個別にEPAを締結、または大筋合意している。個別のEPAは今後も併存する。
FTA交渉開始で合意=ASEANとEU(時事通信、5月5日)
【シンガポール4日】東南アジア諸国連合(ASEAN)と欧州連合(EU)は4日、ブルネイの首都バンダルスリブガワンで経済担当相会議を開き、自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉を開始することで合意した。オン・ケンヨンASEAN事務局長は合意を確認するとともに、詳細を詰めるため共同作業委員会を設置することを明らかにした。
ASEANとEUのFTAが実現すれば、両者合わせて約10億人の市場が誕生することになり、世界最大規模の市場になる可能性を秘めている。両者の2005年の貿易総額は1370億ドル(約16兆4600億円)に達している。
会議にはEU側からは欧州委員会のマンデルソン委員(通商担当)が出席した。同委員のチームの一員として会議に参加したニコライ氏は「交渉開始の合意はASEAN・EU関係における重要な一歩だ」と強調した。
欧州諸国は、ASEAN加盟国ミャンマーの政治的弾圧、人権侵害をめぐって強い懸念を表明しており、ASEANとEUの関係はミャンマーをめぐってぎくしゃくした状態が続いている。EUは先月、ミャンマー軍事政権に対する制裁措置をさらに1年延長した。マンデルソン委員はブルネイで、「ミャンマーに対するわれわれの立場は変わっていない」と述べた。ただ、オン事務局長は「われわれは加盟10カ国のグループとしてEUと話し合っている。加盟国が交渉過程から除外されることはない」としており、ミャンマーをめぐる意見の対立を一時棚上げし、FTA交渉を優先させる運びとなった。 〔AFP=時事〕
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