「集団自決」への軍関与を著書で指摘した大江氏と、出版元が「名誉棄損」で訴えられている。
だが、その裁判の証人調べによって、逆に「集団自決」(自殺強制)はなかったとする証言の曖昧化がすすんでいる。
沖縄には、当時の現実を肌で知る人たちがたくさんいる。
証言に物的裏付けが可能な限り追求されねばならないのは当然だが、そのことによって事実解明の入り口となる証言の価値がなくなるわけではない。
よくよく体験者の証言を調べてほしいと思う。
全員自決の訓示否定せず 沖縄戦「集団自決」裁判 元軍人ら証言 大阪地裁(しんぶん赤旗、7月28日)
沖縄戦で、多数の住民が犠牲になった「集団自決」で、旧日本軍の命令・強制を否定する旧軍人らが、軍関与を指摘した『沖縄ノート』の著者、大江健三郎氏と出版元の岩波書店を「名誉棄損」したとして損害賠償を求めている裁判の証人調べが二十七日、大阪地裁で行われました。
証人として出廷したのは、原告側から「集団自決」が起きた沖縄県渡嘉敷村に駐屯していた陸軍海上挺進(ていしん)第三戦隊(赤松嘉次隊長)の部下、皆本義博元中隊長と知念朝睦元渡嘉敷島守備隊副官、岩波書店側から座間味村での「集団自決」語り部の母をもつ沖縄女性史研究家の宮城晴美さん(『母の遺したもの』著者)の三人。
皆本氏は原告代理人の主尋問にたいし、赤松戦隊長とは親しく、戦隊と島の住民とも良好な関係にあり、「集団自決」についても、切迫した戦況のもとで「軍命令など出す余裕はなかった」と全面否定しました。
しかし被告代理人の反対尋問では「『集団自決』の隊長命令は聞いてない」としながら、「米軍との戦闘が中心で赤松戦隊長とは別行動だった」と戦隊長の動向を知る立場になかったことを証言。太平洋戦争開戦を記念する「大詔奉載日」の儀式で「米軍が上陸したときには、全員が自決する」との訓示があったのではないかとの質問に「赤松戦隊長あるいは代理が参加し、(訓示は)あったと思う」と否定しませんでした。
宮城氏は著書で、隊長命令がなかったとの記述について、「不十分だった。その後の住民の証言などから軍の関与についてより検証した内容に改定版にむけて作業している」と語りました。
口頭弁論に先立ち、沖縄から平和教育をすすめる会など三団体は、九月十日に予定されている沖縄での出張法廷の公開と安仁屋政昭氏を証人採用するよう要請しました。
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