世帯別所得の中間値は上昇しており、貧困世帯の割合も減少している。
しかし、それは世帯内労働者の数が増えたことによるもので、上位1/5世帯と下位1/5世帯の所得格差は史上最大だという。
この意味での社会的格差の拡大をこそ、かつてマルクスは「貧困」と呼んだ。
医療保険に加わることのできない「無保険者」も、全人口の15.8%となっている。
20世紀の資本主義は、所得再分配をつうじ、少なくとも最貧困層の底上げをめざしたわけだが、「新自由主義」のアメリカは、これに完全に逆行している。
「アメリカでは」と、何でもこれに追随する「構造改革」路線の愚かさは、これによっても明らかである。
米の所得格差拡大 富の半分が最上位2割に集中 最下位層への分配 最低の3.4%(しんぶん赤旗、8月31日)
【ワシントン=山崎伸治】米商務省国勢調査局は二十八日、米国民の二〇〇六年の所得と貧困、医療保険に関する統計を公表しました。このうち所得については、中間値がわずかながら上昇し、貧困層が減少したものの、この数年の所得の増減をみると、格差がいっそう広がっていることがわかりました。
所得の中間値は〇五年の四万七千八百四十五ドル(約五百五十万円)から四万八千二百一ドル(約五百五十四万円)に0・7%上昇。貧困世帯の割合も12・6%から12・3%へとわずかながら減少し、実数で三千六百九十五万人となりました。
ところが米国の民間研究機関「経済政策研究所」の分析によると、二〇〇〇年から二〇〇六年までの所得の推移では、最上位五分の一に属する世帯が所得を1・0%増加させたのに対し、中位五分の一の世帯は2・5%減少、最下位五分の一は4・5%も減らしており、格差がますます広がっていることがわかります。
所得の分配でも〇六年は、最上位五分の一世帯が全体の所得の50・5%を占め、一九六七年以来最大。その一方で最下位五分の一の世帯の所得の占める割合は全体の3・4%にとどまり、史上最低を記録しています。
二十九日付の米紙ニューヨーク・タイムズはこのことについて、社説で「貧弱な所得増」と論じています。世帯当たりの所得が上昇したのは、働き手が増えたためで、一人当たりの所得では「だれも給与は増えていない」と指摘。「過去五年間の米国の経済成長はほとんど富裕層および超富裕層にだけ流れ、そのほかの人にはほとんど何も残っていない」と格差の広がりに警鐘を鳴らしています。
無保険者4700万人 過去最多 中産階級にも広がる 米国(しんぶん赤旗、8月31日)
【ワシントン=山崎伸治】米商務省国勢調査局が二十八日公表した米国民の二〇〇六年の所得と貧困、医療保険に関する統計によると、医療保険に加入していない「無保険者」が実数、率とも過去最高となったことがわかりました。
それによると〇六年の無保険者は四千六百九十九万五千人で、〇五年の四千四百八十一万五千人から二百万人以上増加。全人口に対する割合も15・3%から15・8%に増えました。
十八歳未満の子どもでは、無保険者は八百五万人から八百六十六万一千人に増加。割合も10・9%から11・7%に増えています。
また雇用先が提供する医療保険に加入している人が減っていることもわかりました。〇五年には全体の60・2%だったのが、〇六年には59・7%に減少しています。近年、労働協約の改定交渉で医療保険を保障するかどうかが大きな問題となっていますが、経営側がコスト削減を狙って医療保険を後退させていることの反映です。
さらに所得層でみると、無保険者の割合が一番増えているのは、年収五万ドル以上七万五千ドル未満で、〇五年から〇六年に1・2%増となっています。これについて、二十九日付の米紙ワシントン・ポスト(電子版)は「無保険者の問題が中産階級や勤労者に広がっている」との専門家の分析を紹介しています。
ブッシュ大統領は二十八日、統計の公表にあたっての声明で「無保険者の数を減らすことが引き続き課題となっている」と認めました。ただその解決には、民間の医療保険の購入を促すため、税制面での優遇措置などの施策の充実を図るべきだと強調。国民皆保険制度の導入には背を向けたままです。
一方、〇六年の貧困層人口は前年に比べわずかに減少。実数で四十九万人、率にして0・3%減の三千六百九十五万人となっています。
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