内容は、イラク型の戦争を念頭した、きわめて実践的なものとなっている。
いったい誰のための「演習」か。
06年度 日米共同演習は353日 イラク実戦部隊と訓練も(しんぶん赤旗、9月8日)
二〇〇六年度に実施された米軍と自衛隊による共同演習が、のべ三百五十三日間、五十四回に達することが、七日までに分かりました(別表)。激増していた〇五年度(四百十六日、百六回)に比べ、減少したものの、その内容は、イラク型戦争をたたかえる能力の強化を図るものになっています。(田中一郎)
陸上自衛隊の第一空挺(くうてい)団(千葉県)が昨年十月に、関山演習場(新潟県)などで実施した訓練で、米側から参加したのは、イラク戦争を経験した部隊(オレゴン陸軍州兵第四一歩兵旅団第一六二歩兵連隊第二大隊)です。
市民も「敵」
同部隊は、民間人を含めた無差別虐殺で国際的な非難を浴びたイラク中部ファルージャでの掃討作戦にも参加しています。
オレゴン州軍の機関紙「オレゴン・センチネル」(〇六年冬号)によると、陸自部隊とは、交通統制や近距離戦闘、偵察、狙撃などの訓練を実施。このなかで「訓練に戦闘の現実味を加えた」として紹介しているのは、ある部隊に、戦場での市民だけでなく、「反政府分子」の役割も演じさせたことです。
同紙は、その意味について、「イラクに展開したときにオレゴンの部隊が直面したように、敵はいつも軍服を着ているとは限らず、ある日は握手をした同じ人間が、翌日には簡易手製爆弾(IED)を主要補給道路にしかけることがありうる」からだと解説しています。
横暴な軍事支配によって、イラク民衆そのものが「敵」となり、泥沼に陥っているイラク作戦―。それを軍事的に打開しようとする戦術を、陸自が実地で学んでいる姿がうかがえます。
また陸自の第一混成団(沖縄県)は今年一―二月に大矢野原演習場(熊本県)などで、沖縄に駐留している米海兵隊の第三海兵師団の部隊と都市型戦闘訓練をおこなっています。都市型戦闘訓練は、イラク戦争を遂行するなかで米軍が重視しているものです。
同訓練の様子を報じた米海兵隊ホームページのニュース(二月九日付)で、陸自幹部は「われわれの戦術は、本が基礎になっている。海兵隊は、われわれが学びたい、非常に進んだ現実世界での戦闘経験を持っている」と語っています。
グアムで爆撃
海外での戦闘能力の強化につながる訓練は、航空自衛隊も実施しています。
空自は〇五年から、グアム周辺で戦闘機による実弾爆撃訓練を実施しています。
〇五年は空自単独で実施しましたが、〇六年には、米軍のF15戦闘機が「敵」役となり、空中戦を展開。「空自F4EJ改戦闘機がその間隙(かんげき)を縫って射爆撃を行う訓練」(自衛隊の準機関紙「朝雲」同年六月十五日号)が実施されました。
〇七年には、対艦・対地攻撃能力が強化された空自最新鋭のF2戦闘機が爆撃訓練に初参加しました(六月)。
空自が導入を進めている空中給油機は、F15やF2戦闘機へ給油可能で、航続距離を飛躍的に伸ばすことができます。すでに空自F15戦闘機については、米空軍の空中給油機から空中給油を受け、アラスカまで遠征する共同訓練を〇六年度も実施しています(開始は〇三年)。空自の海外攻撃能力を、さらに強化するものです。
このほか空自は、在日米軍再編の合意に基づき、米軍嘉手納基地(沖縄県)配備のF15戦闘機部隊との共同訓練を、空自築城基地(福岡県)で初めて実施しました(三月)。「沖縄の負担軽減」を口実に、日米の軍事一体化をはかる一環です。
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