読売新聞の世論調査で、改憲「反対」43.1%が、改憲「賛成」42.5%を上回った。
同調査によると、これは1993年以降、なんと初めてのことだという。
読売の社説は、こうした変化の原因を「憲法論議の沈滞」にあるとしている。
しかし、「沈滞」しているのは「憲法論議」ではなく「改憲論議」だろう。
そして「改憲論議」の「沈滞」を招いたのは「護憲論議」の拡大である。
それは「新憲法制定議員同盟」が、2年つづけて総会で「9条の会」を名指しし、敵視していることにもあらわれている。
私たちは、草の根の護憲運動の力を過小評価すべきでない。
この逆転を安定したものに育て上げ、さらに「憲法どおりの日本をつくる」取り組みへと、取り組みの中身を大きく飛躍させたいものだ。
憲法改正「反対」43%、「賛成」を上回る…読売世論調査(読売新聞、4月8日)
読売新聞社が実施した憲法に関する全国世論調査(面接方式)によると、今の憲法を改正する方がよいと思う人は42・5%、改正しない方がよいと思う人は43・1%で、わずかながら非改正派が改正派を上回った。
ただ、各政党が憲法議論をさらに活発化させるべきだと思う人は71%に上り、改めたり加えたりした方が良いと思う条文を挙げた人も7割を超えた。施行61年を迎える憲法に、時代にそぐわない部分が増えているとの認識は根強いようだ。
調査は3月15、16日に年間連続調査「日本人」の一環として行った。
1981年から実施している「憲法」世論調査では93年以降、一貫して改正派が非改正派を上回っていた。しかし、今回は改正派が昨年より3・7ポイント減る一方、非改正派が4・0ポイント増え、これが逆転した。憲法改正に強い意欲を示した安倍前首相の突然の退陣や、ねじれ国会での政治の停滞へのいらだちなどが影響したと見られる。
改正派にその理由を複数回答で聞いたところ、「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」の45%が最も多かった。非改正派では「世界に誇る平和憲法だから」が53%で最多だった。
憲法で関心のある点(複数回答)では「戦争放棄、自衛隊の問題」が47%で7年連続で最多となった。昨年との比較では「裁判の問題」が20%(昨年15%)に増え、裁判員制度への関心の高まりをうかがわせた。
改めたり加えたりした方がよいと思う憲法の条文(複数回答)としては、〈1〉自衛のための軍隊保持27%〈2〉良好な環境で生活する権利25%〈3〉国と地方の役割22%――を挙げた人が多く、「特にない」は24%だった。
自衛隊の海外派遣全般に関する原則を定める恒久法を必要と思う人は46%で、「そうは思わない」42%を上回った。9条を今後どうするかについては「これまで通り、解釈や運用で対応する」36%、「解釈や運用で対応するのは限界なので、改正する」31%、「厳密に守り、解釈や運用では対応しない」24%となった。
社説 憲法世論調査 改正論を冷やす政治の混迷(読売新聞、4月8日)
日本政治の混迷が、憲法改正の世論を冷やしているのだろう。
読売新聞の世論調査で、憲法を「改正する方がよい」と思う改正派が42・5%へ減少した。「改正しない方がよい」という非改正派は、43・1%になった。
1993年調査以来、改正派が非改正派を常に上回ってきた。わずかな差だが、今回逆転した。改正派は、4年連続の減少だ。
最大の要因は、国会や各政党の憲法論議の沈滞にあるだろう。
昨年5月、憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立した。だが、それに基づき設置された憲法審査会が、いまだ始動していない。
憲法改正に積極姿勢をみせていた安倍前首相が、昨夏の参院選での自民党惨敗のあと、突然辞任した。後継の福田首相は、打って変わって、憲法改正問題には、ほとんど触れなくなった。
今回、自民党支持層のうち改正派は47%と、98年以降では初めて、5割を切った。衆参ねじれ国会の下、憲法改正論議の進展は困難、という判断と、憲法改正への首相のメッセージの乏しさが、影響しているのではないか。
民主党は、参院選を前に、与党との対決色を出す思惑から、国民投票法に反対した。党内にある憲法改正慎重論や、「護憲」を掲げる社民党との選挙協力などへの配慮もあった。
民主党支持層の改正派は、2005年には67%に達し、自民党支持層の64%を上回っていた。それが今回は41%に減った。
憲法改正問題に正面から取り組もうとしない民主党の姿勢が、支持層の改正派減少をもたらす一因になっていないか。
先の臨時国会では、インド洋での海上自衛隊の給油活動再開や、自衛隊の国際貢献のあり方が焦点になった。だが、前防衛次官の汚職事件や、海自の燃料の対イラク作戦転用問題などが重なり、憲法論議は深まらなかった。
今回、こうした自衛隊の海外派遣についてのルールを定める「恒久法」についての質問では、「必要だと思う」が46%で、「思わない」42%を上回っている。
「国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから」――。改正派があげた改正理由のトップは、これまでと変わっていない。これから憲法論議を「活発化させるべきだ」と思う人も、7割にのぼる。
安全保障や環境問題など、さまざまな観点から憲法を議論しあうことが求められている。
「年間連続調査・日本人(4)憲法」2008年3月調査(面接方式)(読売新聞、4月8日)
▽調査日:2008年3月15-16日
対象者:全国有権者3,000人(250地点、層化二段無作為抽出法)
方法:個別訪問面接聴取法、回収:1,786人(59.5%)*
Q18(36;37 )日本の憲法についてお聞きします。
あなたは、今の日本の憲法のどんな点に関心を持っていますか。回答リスト10番の問題は、すべて憲法に関係するものですが、あなたがとくに関心を持っているものを、いくつでもあげて下さい。
答え 10.天皇や皇室の問題 20.1
20.戦争放棄、自衛隊の問題 46.9
30.平等と差別の問題 17.6
40.言論、出版、映像などの表現の自由の問題 10.6
50.情報公開の問題 11.8
60.プライバシー保護の問題 15.3
70.生存権、社会福祉の問題 18.8
80.環境問題 31.0
90.集会やデモ、ストライキ権の問題 2.1
01.選挙制度の問題 10.7
02.裁判の問題 20.4
03.靖国神社への公式参拝の問題 15.0
04.憲法改正の問題 13.0
05.三権分立の問題 4.6
06.地方自治の問題 13.0
07.国会の二院制の問題 6.8
08.憲法制定の過程や背景 4.3
09.その他、とくにない、DK.NA 15.5
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q19(38)あなたは、今の憲法を、改正する方がよいと思いますか、改正しない方がよいと思いますか。
答え 1.改正する方がよい 42.5 2.改正しない方がよい 43.1 3.DK.NA 14.4
(2008.03.15-16)(2008.04.08)
SQ1(39)【質問対象=Q19の答えが(1)の人だけ】
あなたが改正する方がよいと思う理由は何ですか。回答リスト11番の中から、いくつでもあげて下さい。
答え 1.アメリカに押しつけられた憲法だから 31.2
2.国の自衛権を明記し、自衛隊の存在を明文化するため 24.5
3.権利の主張が多すぎ、義務がおろそかにされているから 24.6
4.憲法の解釈や運用だけで対応すると混乱するから 30.8
5.国際貢献など今の憲法では対応できない新たな問題が生じているから 45.2
6.その他 3.0
7.DK.NA 2.0
0.非該当(Q19の答えが(2,3)の人)
(2008.03.15-16)(2008.04.08)
SQ2(40)【質問対象=Q19の答えが(2)の人だけ】
あなたが改正しない方がよいと思う理由は何ですか。回答リスト12番の中から、いくつでもあげて下さい。
答え 1.すでに国民の中に定着しているから 42.7
2.世界に誇る平和憲法だから 52.5
3.基本的人権、民主主義が保障されているから 26.6
4.時代の変化に応じて、解釈、運用に幅を持たせればよいから 17.8
5.改正すると軍事大国への道を開くおそれがあるから 27.3
6.その他 0.9
7.DK.NA 1.0
0.非該当(Q19の答えが(1,3)の人)
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q20(41)戦争を放棄し、戦力を持たないとした憲法第9条をめぐる問題について、政府はこれまで、その解釈や運用によって対応してきました。あなたは、憲法第9条について、今後、どうすればよいと思いますか。回答リスト13番の中から、1つだけあげて下さい。
答え 1.これまで通り、解釈や運用で対応する 36.2
2.解釈や運用で対応するのは限界なので、憲法第9条を改正する 30.7
3.憲法第9条を厳密に守り、解釈や運用では対応しない 23.9
4.その他 0.3
5.DK.NA 8.9
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q21 憲法第9条の条文には第1項と第2項があります。それぞれについて、あなたが改正する必要があると思うかどうかを、順にお答え下さい。
S1(42)「戦争を放棄すること」を定めた第1項については、改正する必要があると
思いますか、ないと思いますか。
答え 1.ある 12.5 2.ない 81.6 3.DK.NA 5.9
(2008.03.15-16)(2008.04.08)
S2(43)「戦力を持たないこと」などを定めた第2項についてはどうですか。
答え 1.ある 36.8 2.ない 54.5 3.DK.NA 8.6
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q22(44)日本と密接な関係にある国が武力攻撃を受けたとき、この攻撃を、日本の安全を脅かすものと見なして、攻撃した相手に反撃する権利を「集団的自衛権」と言います。政府の見解では、日本もこの権利を持っているが、憲法の解釈上、使うことはできないとしています。この集団的自衛権について、回答リスト14番の中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。
答え 1.憲法を改正して、集団的自衛権を使えるようにする 18.7
2.憲法の解釈を変更して、集団的自衛権を使えるようにする 22.1
3.これまで通り、使えなくてよい 51.6
4.その他 0.3
5.DK.NA 7.3
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q23(45)政府は、国連のPKO、平和維持活動以外で、自衛隊を海外に長期間派遣するときには、その都度、特別な法律を作って対応してきました。あなたは、これを改めるために、自衛隊の海外派遣のルールを総合的に定めた新しい法律、いわゆる「恒久法」が必要だと思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 46.0 2.そうは思わない 42.1 3.DK.NA 11.9
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q24(46)憲法は、国会の構成を衆議院と参議院の二院制としています。国会の二院制のあり方については、様々な議論がありますが、回答リスト15番の中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。
答え 1.一院制にする 18.8
2.二院制を維持し、衆議院の役割や権限を強化する 12.5
3.二院制を維持し、参議院の役割や権限を強化する 17.5
4.今のままでよい 44.2
5.その他 0.3
6.DK.NA 6.6
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q25(47)憲法では、衆議院が可決した法案を、参議院が否決しても、再び衆議院が3分の2以上の多数で可決すれば、その法案は成立すると定めています。衆議院での再可決について、回答リスト16番の中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。
答え 1.再可決は当然だ 9.7
2.再可決はやむを得ない 35.6
3.再可決はできるだけ避ける方がよい 33.8
4.再可決は避けるべきだ 14.1
5.DK.NA 6.8
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q26(48)憲法改正の手続きを定めた国民投票法は2年後に施行されます。昨年8月、憲法についての具体的な議論を行うための憲法審査会が国会に設置されました。あなたは、今後、各政党は、憲法に関する議論をさらに活発化させるべきだと思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 70.8 2.そうは思わない 19.3 3.DK.NA 9.9
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q27(49)民法に定められている成人年齢を「20歳以上」から「18歳以上」に見直すことを条件に、国民投票法では、18歳以上に憲法改正の投票を認めるとしています。あなたは、憲法改正の投票ができる年齢は、18歳以上がよいと思いますか、そうは思いませんか。
答え 1.そう思う 36.2 2.そうは思わない 59.7 3.DK.NA 4.1
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
Q28(50;51 )日本の憲法について、あなたが、今の条文を改めたり、新たな条文を加えたりする方がよいと思うものがあれば、回答リスト17番の中から、いくつでもあげて下さい。
答え 10.天皇の地位やあり方 14.1 01.国と地方の役割 22.1
20.自衛のための軍隊保持 26.5 02.憲法裁判所の設置 5.1
30.積極的な国際協力 19.5 03.その他 0.2
40.行政機関の情報を知る権利 19.1
50.個人情報やプライバシーの保護 17.7
60.家族の尊重 12.7
70.良好な環境で生活する権利 25.3
80.緊急事態などへの首相の権限強化 13.0 04.とくにない 24.4
90.衆議院と参議院の役割 14.7 05.DK.NA 4.5
(2008.03.15-16)(2008.04.08)*
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