日米軍事同盟にもとづき駐留する米兵が起こした犯罪だから、日本政府が自主的判断として「見舞金」を出すことはありうる道。
だが、それが米軍の「肩代わり」となれば話は別。
米軍と米政府に、問題の誠意ある解決を求めることこそ日本政府のするべきこと。
一体どこまで属国なのか。
防衛省が米軍見舞金肩代わり 暴行被害女性に300万円(朝日新聞、5月19日)
防衛省は19日、02年に神奈川県横須賀市で米海軍兵から性的暴行を受けたオーストラリア人女性に対し、見舞金300万円を支払った。民事訴訟で賠償金を支払うよう命じられた米兵はすでに帰国。米側も支払いを拒んだため、日本政府が肩代わりをする異例の決着となった。
同省によると、女性は02年4月に米兵から暴行されたとして、同年8月に東京地裁に民事訴訟を起こした。同地裁は04年11月、300万円の賠償を命じたが、被告米兵は裁判途中に除隊・帰国してしまった。
日米地位協定では、米兵が公務外に起こした事件事故で賠償金が支払えない場合は米側が補償する仕組みだが、今回のケースは発生から2年以内とする米国法の請求期限を過ぎているとして、米側が支払いを拒否。このため防衛省は、日米地位協定で救済されない米軍被害の救済を定めた64年の閣議決定を適用し、見舞金の支給を決めたという。
横須賀米兵暴行事件 被害女性に見舞金(琉球新報、5月20日)
【東京】2002年に神奈川県横須賀基地所属の米兵から性暴力を受け、その後裁判で米兵への損害賠償金300万円を勝ち取ったが、米兵が本国に逃亡し支払いを受けられずにいたオーストラリア出身のジェーンさん(仮名)に対し、防衛省は19日、救済措置として見舞金300万円を支払うことを決めた。日本政府が米兵による性暴力被害者に見舞金を支払うのは初めて。
加害者とされた米兵は帰国し除隊しており「米政府に救済されない被害は日本政府が救済できる」との1964年の閣議決定に基づく異例の対応という。
ジェーンさんは、3月23日に北谷町で開かれた「米兵によるあらゆる事件・事故に抗議する県民大会」に参加し、米兵から暴行を受けた苦しみなどを壇上で語った。
ジェーンさんは02年4月に米空母キティーホークの乗組員に暴行された。同年7月に横浜地検は理由を明らかにしないまま不起訴を決定し、10月に米軍の予備審問も「軍法会議は不要」と判断した。その後、ジェーンさんは民事裁判を起こし、04年11月、東京地裁は米兵に慰謝料など300万円の賠償を命じた。
だが審理中に米兵は除隊して米本国に逃げ帰り、現在まで賠償金を支払わずにいる。
こうした問題に対応するため、日米地位協定18条6項では、公務外で事件事故を起こした米兵に支払い能力がない場合「本人に代わって米政府が補償金を支払う」と定めている。
ところが今回、米政府は「米国内法(外国人請求法)では、損害賠償を支払うことができるのは損害発生から2年以内となっている」と時効を持ち出して支払いを拒否。ジェーンさんの賠償金は宙に浮いた状態になっていた。
見舞金支払いの決定理由について防衛省は「社会通念に照らし法律の規定に救われない人には救済が必要だと判断した」と話している。2年の時効を過ぎた事案への見舞金も初という。
ジェーンさんは「6年間の闘いを振り返れば喜ばしいが、本来支払うべき加害者が何の罰も受けずに自由に暮らしているのはおかしい。米政府もこの間、一切何もしなかった。本当に性犯罪を止めたいと思うなら、米国はすべての被害者に謝罪すべきだ。加害者が見つかるまであきらめない」と話している。
コメント