労資関係では一般に労働者の方が力が弱い。
そこで労働者は組合をつくって力を集める必要があるし,法は労働者の権利を擁護する必要がある。
ところがそれがリストラ自由化の立場から崩されつつある。
①解雇のルールに整理4要件に準じたものを入れるが,それは「厳格な運用」をする必要がない。
②裁判で解雇無効となっても「金銭解雇」ができる。
③就業規則の劣悪化にも労働者が労働者が抵抗できなくする。
要するに,これは解雇と労働条件悪化を合法化するということではないか。
「リストラ解雇、条件明示・厚労省方針、労働契約法に4項目」(日経新聞,11月21日)
「厚生労働省は労働紛争の防止を目指して新たに制定する「労働契約法」の中に、リストラなどでの整理解雇ができる条件として企業の回避努力義務など4つを明文化する方針を固めた。条件を明示することで解雇ルールの透明性を高める。ただし、4条件すべてを満たさないと解雇は無効といった厳格な運用ではなく、総合判断するための要素と位置付ける考えだ。
条件は(1)人員削減の必要性(2)解雇の回避努力(3)解雇対象者の公正な選定(4)解雇理由の説明――の4つ。企業による整理解雇が妥当かどうか判断する材料として、この4条件を新法に盛り込む。 (07:01)
「就業規則の変更をルール化 厚労省の労働契約法素案」(朝日新聞,11月21日)
「企業と従業員の雇用ルールを新たに定める「労働契約法」の厚生労働省の素案が20日、明らかになった。現在はあいまいな就業規則の変更に関してルールを定め、一定の条件を満たせば、就業規則で労働条件を変えられるようにすることを明記する。労働側からは、賃下げなど労働者に不利な変更が安易に認められるようになりかねないとの懸念も出ている。
21日の厚労省の審議会に素案を提出し、労使で協議した上で、来年の通常国会に提出する。
現行の労働法制では、就業規則は労働者の同意を得なくても、意見聴取をすれば会社が作成・変更することができると労働基準法で定められている。労働者にとって不利益な変更がされた場合、それが有効かどうかの判断は個別に裁判で争われ、もっぱら判例に頼ってきた。
厚労省は、労働条件の変更に効力があるかどうか法的根拠を明確にし、労使紛争を防ぎたいとしている。
素案では、就業規則の変更の有効性については、「合理的なもの」かどうかを判断基準とするとし、具体的には(1)労働組合など労働者との合意や調整の状況(2)経営悪化など変更の必要性(3)労働者の不利益の程度や代替措置などの変更内容――の三つを挙げている。
ただ、労使の合意と従業員個人の意見が異なった場合には有効性を争うことができなくなる恐れがあるなど、労働側には、法案への明記が「就業規則万能主義」をもたらし、合理性の名のもとに労働条件の切り下げが合法化されないか、との声が強い。
このほか素案では、経営不振による人員整理の条件として、解雇を回避するために会社が努力したかどうかなど、判例上、認められている四つの要件を盛り込んだ。
裁判で解雇が無効とされても、金銭を支払えば解雇できるとする「金銭解雇」については、「労使が納得できる仕組みを設ける」とするにとどめ、具体的な補償額や手続きの方法は明記しなかった。
労働法制見直しは、労働契約法のほか、パート労働者の処遇改善に向けたパート法改正、一定の年収以上の会社員を労働時間規制から外す「ホワイトカラー・エグゼンプション」の導入などに関する論議が続いており、年末の取りまとめに向けて大詰めの議論を迎えている。 」
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