非正規雇用のなかで,財界がコスト削減でもっとも重視している雇用形態は「パート」である。
それは圧倒的に女性に多い。
パートの差別禁止は結構なことだが,どうやらそれはホワイトカラー・エグゼンプションとワンセットという条件だったらしい(日本経団連)。
じつに怪しい。
ちょうど均等法の「禁止規定」導入と,労基法の女性保護撤廃がワンセットだったように。
そして,それが結局は,総合職における女性比率をむしろ下げたように。
できあがる法案の独自の評価は必要だが,最初から「取引」の材料という位置づけではなあ。
パートの差別的待遇禁止…厚労省、法改正案要綱を諮問(読売新聞,1月16日)
「厚生労働省は16日、就業実態が正社員と変わらないパートタイマーについて差別的な待遇を禁止することなどを柱とするパートタイム労働法の改正案要綱を、同省の労働政策審議会雇用均等分科会に諮問した。
今月末から始まる通常国会に改正法案を提出する方針。
要綱では、賃金などの差別的待遇を禁止する対象について、労働時間や職務内容などが正社員とほぼ変わらない労働者で、「期間の定めのない労働契約を締結している者」などと定めている。
また、昇給やボーナス、退職金の有無を明記した文書の交付を事業主に義務づけ、違反した場合には10万円以下の過料を科す。
改正法案が成立すれば、来年4月に施行される。」
とはいえ,次の文章を含む記事もある。
「働く人、敵に回せぬ」世論読み誤った残業代ゼロ断念(朝日新聞,1月16日)
「日本経団連幹部は「WEの見送りは、総理の決断だから仕方がない。だが、(パート労働法改正など)全部セットの話なんだから、全部なし、ということだ」と話す。 」
「働く人、敵に回せぬ」世論読み誤った残業代ゼロ断念(朝日新聞,1月16日)
「一定条件の会社員の残業代をなくす「ホワイトカラー・エグゼンプション」(WE)の法案提出を見送ることになった背景には、夏の参院選を前に「サラリーマンを敵に回したくない」との与党の判断に加え、世論の反発を読み誤って、導入を急いだ政府の拙速な姿勢がある。だが、WEは、パート労働法改正や最低賃金の引き上げなど、一連の労働法制見直しとセットで調整してきた経緯があり、経済界の反発は必至。他の法案審議にも影響を与えそうだ。
自民党の中川秀直幹事長は16日の記者会見で、「新聞に『残業代ゼロ制度』などと書かれているようでは、制度の本来の内容、目的がまったく十分に説明、理解されているとは思えない」と指摘した。自民党国対幹部も15日、「試合終了だろう。(与党側と)相談もせずに法案を提出するしないを判断できるのか」と語り、公明党幹部も「我が党の雰囲気は極めて厳しい」。外堀は、ほぼ埋まった。
しかし、官邸が当初から、WEへの反発の大きさをしっかり認識できていたわけではなかった。
首相は5日、与党の慎重論について問う記者団に、「日本人は少し働き過ぎじゃないかという感じを持っている方も多いのではないか」と、制度が労働時間短縮につながると説明。WEは「少子化(対策)にとっても必要」と、法案提出を目指す考えを示していた。
柳沢厚労相は「(与党の反発には)誤解がある」と与党幹部らの説得に回ったが、格差問題などへの対応が迫られるなかで、「経済界寄り」の法案は野党に格好の攻撃材料を与えかねず、参院選に影響するとの懸念がさらに強まった。政府関係者は16日、与党側の「最後通告」に近い反発を前に、「根回しも足りないまま打ち上げ、説明が後手に回った。こういう状況になった以上、今国会は出せないということだ」と悔やんだ。
一方、厚労省の準備不足も際立った。昨年末にまとめた審議会の報告書では、対象者の年収条件を明記せず、労使の対立した主張を併記。与党の反発を受けて「年収900万円以上」などの条件を示したが、対象者が「20万人」という試算はどんぶり勘定。かえって労働側から「導入後に範囲を拡大する意図が見える」などと批判を招く結果になった。
ただ、今国会で改正を予定している労働関係などの法案は、労使の利害調整を経て「寄せ木細工」(厚労省幹部)のようになっている。産業界が求めるWEを実現するのとセットで、労働側が求める残業代の割増率アップや、最低賃金法の強化などを産業界に受け入れさせた経緯があり、この日もパート労働法の改正案要綱が出たばかり。パートへの厚生年金の適用拡大の議論もこれからのタイミングだ。WEを認めないとなれば、全体が崩れるおそれがある。
日本経団連幹部は「WEの見送りは、総理の決断だから仕方がない。だが、(パート労働法改正など)全部セットの話なんだから、全部なし、ということだ」と話す。
一方、連合も「見送りは選挙目当て。参院選後は提出に向け再び動き出す」とみる。他の法案への影響を懸念し、「手放しで喜べない」のが本音だ。 」
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