トヨタの売上高、営業利益がともに過去最高を更新し、クルマの販売台数も含めてGMを抜いて世界一となることが確実になった。
08年3月期についても、さらに最高を更新する見通し。
最大の利益源は北米市場で、販売台数についても、北米、日本、EU、アジアの順となる。
トヨタ、世界三冠大手 営業益2兆円突破 07年3月期(FujiSankei Business i. 5月10日)
トヨタ自動車が9日発表した2007年3月期決算は、売上高が前期比13・8%増の23兆9480億円、営業利益が19・2%増の2兆2386億円といずれも過去最高を更新した。08年3月期は売上高が4・4%増の25兆円、営業利益は0・5%増の2兆2500億円と伸び率は鈍化するものの、増収増益を見込み、販売台数、売上高、利益のすべての面で米ゼネラル・モーターズ(GM)を抜き世界一になることが確実となった。
07年3月期の世界販売台数は北米や欧州などで伸ばし、連結子会社のダイハツ工業、日野自動車を合わせ6・9%増の852万4000台。これに連結対象外の中国合弁会社などを含めると9・1%増の900万6000台だった。
原材料価格の高騰などもあったが、円安による為替差益の追い風も受け、最終利益も19・8%増の1兆6440億円と過去最高だった。
トヨタの07年(1~12月)の販売計画は934万台で、GMの920万台を上回る。07年第1四半期(1~3月)はトヨタの世界販売台数が235万台と、GMの226万台を上回っており、世界一となっている。
9日、東京都中央区のロイヤルパークホテルで記者会見したトヨタの渡辺捷昭(かつあき)社長は、4半期ベースで世界一になったことについて、「あと9カ月残っており、年間ではまだわからない。他社を意識するより、世界中のお客さまに満足してもらえる車を売ることに全力を傾ける。開発から販売までまだ課題が多い」と述べ、効率化や品質向上をさらに推進する考えを強調した。
また、今後の最大の死角については「従業員の慢心」と指摘。自らを戒める意味での発言だが、それだけ世界に強敵がいなくなったことも印象付けた。
08年3月期は、販売台数を前期比4・3%増の889万台(連結ベース)に設定。利益面では為替が円高に振れ収益を押し下げると見通し、設備投資に前期並みの1兆5000億円、環境技術などの研究開発には前期を493億円上回る9400億円を投じる計画。このため営業利益が前期比0・5%増となるほか、最終利益も0・4%増の1兆6500億円とわずかな伸びにとどまると予測した。
快走を続けるトヨタだが、稼ぎ頭の北米市場では、急速な販売増にともない現地生産が追いつかずに日本からの輸出が増加。円安効果で収益を大幅に増やしていることに対し、米メーカーの一部から反発の声もあがっている。また、昨年から生産している新型ピックアップトラック「タンドラ」の販売が伸び悩むなどで今期の販売台数は1・6%増にとどまる見通しだ。
日本の自動車メーカーにとって最大の課題は、低迷する国内市場の販売対策。渡辺社長は「何より良い商品を出すこと。今年も後半に昨年以上のモデルチェンジと新商品の投入を考えており、市場を活性化させたい」とし、新型車攻勢をかける方針を示した。
近年のリコール件数増加にともなう品質確保への取り組み強化も急がれる。「この半年で問題点のチェックが進んだ。新しく立ち上げる車は確実に(品質問題が)減ると確信している」と渡辺社長は自信をのぞかせた。
トヨタの08年3月期、円高と先行投資が利益を圧迫(朝日新聞、5月10日)
[東京 9日 ロイター] トヨタ自動車<7203.T>は9日、2008年3月期の連結営業利益(米国会計基準)について、8期連続の増益となる前年比0.5%増の2兆2500億円とする見通しを発表した。全ての項目で過去最高を更新する見通しだが、07年3月期の前期比19.2%増に比べ利益成長は鈍化する。原価低減や販売拡大を進めるが、高水準にある研究開発(R&D)費や設備投資が継続するほか、ドル/円想定レートを前期比で円高に見ているため07年3月期の利益押し上げ効果が失われる。営業利益率は、前期の9.3%から9.0%に低下する。この予想額はロイターエスティメーツがまとめた主要アナリスト22人による事前予測値2兆4911億円を下回った。
売上高は同4.4%増の25兆円、税金等調整前当期純利益は同0.7%増の2兆4000億円、当期純利益は同0.4%増の1兆6500億円の見通しとした。利益成長は鈍化するが、会見した渡辺捷昭社長は「(営業利益率は)依然高水準にあると思う」と述べた。ホンダ<7267.T>の営業利益率は08年3月期に6.5%(07年3月期は7.6%)、日産自動車<7201.T>は7.7%(同7.4%)を見込む。
渡辺社長は「高水準のR&Dや設備投資が利益を圧迫するが、将来の果実につながる必要な投資はする。増益トレンドは変っていない」との認識を述べた。渡辺社長は、来期以降も今期のR&D費9400億円(前期は8907億円)、設備投資1兆5000億円(同1兆4826億円)程度の高水準が継続するとの見通しも示したが、その期間については明言を避けた。08年3月期の年間配当は明らかにしていない。
通期の想定レートはドル/円が115円(07年3月期実績は117円、06年3月期実績は113円)、ユーロ/円レートは150円(同150円、同138円)と、ドル/円で円高、ユーロ/円で横ばいを想定している。円安が07年3月期に連結営業利益を2900億円、単独営業利益を2600億円押し上げたが、円高を見込む08年3月期には単独営業利益を900億円押し下げる(連結営業利益に対する効果の見通しは示していない)と見込む。
世界販売台数(ダイハツ工業<7262.T>・日野自動車<7205.T>を含む)の見通しは889万台(前期は852万4000台)とした。国内販売は232万台(同227万3000台)。軽自動車を除くトヨタの国内市場シェアは過去最高の46%程度(前期は45.8%)を予想しており、渡辺社長は「今期の後半は前期に比べ多くの新車を投入する。市場を活性化したい」と述べた。北米は299万台(同294万2000台)、欧州は127万台(同122万4000台)、アジアは89万台(同78万9000台)を予想している。
大和証券SMBCエクイティ・マーケティング部の高橋和宏部長は、トヨタの08年3月期通期見通しについて「慎重な印象を受ける。株式市場は少なくともポジティブには受け取らないだろう。北米自動車市場が鈍化しているのは事実であり、アナリストも強気になりにくいのではないか」と見ている。ただ業績が悪化するわけではないとして「若干ネガティブではあるが、トヨタ株が極端に売られることもなさそうだ。市場全体に与える影響も限定的」との見方を示している。
クレディスイス証券の遠藤功治アナリストは「非常にコンサバティブな見通しだ。販売台数見通しや車種構成、合理化効果や資材費の高騰分など、あらゆる想定が慎重すぎる。為替が大幅な円高にならなければ、1年後に1500―2000億円ぐらい上ぶれてもおかしくない」と見ている。
<07年3月期は円安、拡販が利益を押し上げ>
同日発表した07年3月期連結業績は、営業利益が同19.2%増の2兆2386億円だった。R&Dコストなど諸経費の増加3597億円があったが、円安による2900億円、販売拡大による3300億円、原価低減努力1000億円などが利益を押し上げた。会見した鈴木武専務は「大幅な増益を達成した」と述べたが、ロイターエスティメーツによる主要アナリスト22人による事前予測値2兆2977億円を下回った。
地域別では、日本事業は国内販売が低迷したが、輸出台数が増えて営業増益。北米事業は、小型車「ヤリス(日本名ヴィッツ)」や小型SUV(スポーツ多目的車)「RAV4」など昨年投入した新型車が販売に寄与したが、工場立ち上げにともなう一時的な費用が発生したため減益となった。欧州は、ヤリスやRAV4などの販売が好調で増益。アジアでは新興国向けモデルである「IMVシリーズ」の域外への輸出が増えたが、市場が低迷している台湾やインドネシアで販売が落ち込み減益となった。
売上高は前年同期比13.8%増の23兆9480億円、税金等調整前当期純利益は同14.1%増の2兆3825億円、当期利益は同19.8%増の1兆6440億円となった。全ての項目で過去最高を更新。07年3月期の年間配当は、30円増配の120円とした。
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