アメリカ下院外交委員会での「慰安婦」決議に対する各種の反応。
大手新聞の社説は真っ二つに割れ、「議員の会」は下院に本会議での採択回避を求める方針。
他方、オランダ政府からは衆議院議長に、全面広告「事実」の釈明を求める書簡が届いている。
世界の動きを鏡に、自分の姿を落ち着いてながめることができるかどうか。
ことは国の進路にかかわる大問題。
朝日・毎日VS読売・産経 米の慰安婦決議で新聞社説真っ二つ(J-CASTニュース、6月28日)
米下院外交委員会で、旧日本軍によるいわゆる従軍慰安婦に関して日本政府に謝罪を求める「慰安婦決議」案が可決された。これを受けて2007年6月28日の全国紙の朝刊は、ほとんどが社説でこの問題を取り上げた。ただ、朝日・毎日が日本政府を批判、読売・産経は逆に米議会を批判するなど、評価は「真っ二つ」に分かれている。
決議案は、「日本政府は、帝国軍隊が若い女性に性的奴隷を強制したことに対して明確に公式な謝罪をすべきだ」「慰安婦制度は20世紀最大の人身売買事案の一つ」などとしている。07年7月中にも本会議で初めて可決される可能性が高まっている、とされる。
「米議会人の見識疑わせる」と読売
米議会の「慰安婦決議」を巡り、社説の意見が分かれた新聞各紙 各紙の見出しもスタンスの違いが現れた。慰安婦問題そのものを問題視したのは、「米議会の『誤解』の根元を絶て」とうたった読売新聞と、「事実を示し誤解を解こう」とした産経新聞だ。決議案そのものに対する評価についても、読売新聞は「全くの事実誤認に基づく決議である」「事実をきちんと確かめることもせず、低水準のレトリックに終始した決議案だ。米議会人の見識を疑わせる」と反発している。
産経新聞も「『日本政府による軍用の強制的な売春』と決めつけるなど、多くの誤りを含んでいる」「日本の官憲が奴隷狩りのように強制連行したという説が一部で流布されたこともあるが、日本政府が(略)集めた(略)資料の中には、そのような事実を示す証拠は1点もなかった」と決議案が前提とした認識を批判している。
日本政府の姿勢に注文をつけたのは、朝日新聞の「首相は深刻さを認識せよ」と毎日新聞の「安倍外交にも問題がある」、東京新聞「慰安婦決議案 日米間のトゲにするな」。
「糾弾の意味は重い」と朝日
朝日新聞は「日本が過去の過ちを反省していないと、米議会が国際社会の面前で糾弾している。その意味は重い」と受け止めた。「決議案に疑問がないわけではない」として、「軍の関与を認めて」政府として慰安婦問題を謝罪した河野談話の位置付けが不十分な点などを挙げている。しかし、「慰安婦の残酷さを非難する決議案のメッセージは、真摯に受け止める必要がある」と重視する姿勢をみせ、「日本がそんな国と見られているのかと思うと残念であり、恥ずかしい」とも述べている。東京新聞も「歴史的な暗部を直視し(略)」「多数の女性の名誉と尊厳を損なった責任を受け入れ(略)」と、やはり決議案が前提とした認識を受け入れている。
毎日新聞は、過去の経過の記述が多い。「米国民を代表する議員の意思表示は重く受け止めねばならない」と主張はしているが、直後に日米関係への影響を懸念する記述が続き、外交面の配慮の観点からの主張であることがうかがえる。決議の前提を「誤解」と批判するのか、基本的に受け入れるのかは触れていない。
ちなみに日経新聞の28日朝刊の社説は、香港経済の問題とスーダンの紛争問題に関するものだった。
米下院に採択見送り要請へ=慰安婦決議案で自民有志(時事通信、6月29日)
自民党有志でつくる「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」(会長・中山成彬元文部科学相)は29日午前、党本部で総会を開き、米下院外交委員会が可決した従軍慰安婦問題に関する対日謝罪要求決議案は事実誤認に基づいており、日米関係に悪影響を与えるとして、米下院議長と外交委員長あてに本会議採択を見送るよう求める声明を送付することを決めた。声明には、呼び掛けに賛同する自民、民主両党議員の署名を添付するという。
慰安婦で釈明求める書簡 オランダでも批判噴出か(中日新聞、6月28日)
【ブリュッセル29日共同】第2次大戦中の従軍慰安婦問題で、オランダ下院のフェルベート議長は28日、日本の国会議員らが、女性を慰安婦として強制的に動員した事実はなかったと反論する意見広告を米紙に掲載したことなどに関し、釈明を求める書簡を河野洋平衆院議長に送付した。下院報道官が共同通信に同日、明らかにした。
日本側の対応次第では、米下院外交委員会が公式謝罪を求める決議を可決したのに続き、欧州有数の「親日国」であるオランダでも批判が噴出する可能性がある。
日本占領下のインドネシアで慰安婦にされた国民がいるオランダでは、安倍晋三首相の3月の「(動員に)強制性を裏付けるものはなかった」との発言や意見広告を受け、バルケネンデ首相が「あまりにも不適切だ」と不快感を表明している。
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